安保法制

鳩山元首相の提言「国民の多くが『戦争が出来る国』になることを心配」

 また、首相はホルムズ海峡が封鎖されたら、日本に原油が来なくなる。だからホルムズ海峡に敷設された機雷の除去の手伝いをする必要性があると、しばしば例として挙げますが、これこそ時代認識の大きな誤りでしょう。首相は特定の国を想定していないと逃げていますが、イランを念頭においておられることは明らかです。かつて私がイランを訪問した際、国内から大きな非難を浴びましたが、そのときに私がアフマディネジャド大統領に申し上げたのは、原子力の平和利用に徹するとしても理解されるには時間がかかるので、日本を見習って辛抱強く対話路線で交渉してほしいということでした。その後、イランは辛抱強く対話を続けてくれたと思います。そして漸(ようや)く6カ国との協議が最終合意にまで達しました。イランとアメリカやイスラエルとの間の不信感が完全に拭えたとは思いませんが、少なくともホルムズ海峡に機雷が敷設されるような環境ではまったくないことだけは明白です。首相は適切な具体的な例が見つからないので、このような例を挙げられたのだと推察いたしますが、具体的な例がないということは、法案に今日的な必要性がない証左でしょう。

 首相、そもそも集団的自衛権を限定的であれ行使できるようにするには、憲法改正が必要です。どうしても行使するというのなら、憲法改正を堂々と行ってからです。国の安全保障の根本に関わる議論を変更するのですから、表玄関から正直に入らなければ、生涯禍根を残すでしょう。

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