馳浩文部科学相は7日、パリで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)総会での政策演説やボコバ事務局長との会談などを終え、帰国した。焦点となっていた記憶遺産の登録手続きについては、ボコバ氏から制度改善に向けた言質をとり一定の成果を得た格好。ただ、専門家からは中国と韓国が2年後の登録を目指す慰安婦関連資料の阻止に向け、国内の体制整備を求める声が上がっている。
馳氏が6日、中国の「南京大虐殺文書」登録を念頭に「登録過程の透明性や公正性を高める必要がある」と見直しを申し入れたのに対し、ボコバ氏は同じ問題意識を示した。登録審査が非公開だったことに、日本国内で批判が出ていた。
馳氏のユネスコ外交について、立命館大の北村稔教授は「制度改善も一つの手だ」と一定の評価をした上で、「登録後でも『南京大虐殺文書』に反駁(はんばく)すれば記憶遺産の権威をそげる。専門知識がなければ読解が困難な文書もあり、審査への疑問が拭えない。英語で反論し発信力を強化すべきだ」と提言する。