秋晴れの昼下がり。東京・九段下にある千代田区立千代田図書館で2歳の女児を連れた母親が、同館のタブレット端末を借り、動く絵本「アニメーションブック」を読み聞かせていた。
絵本からは自動的に音声が流れ、場面に合わせて登場人物が動く。スタッフの坂巻睦さんが「自宅のパソコンでも会員番号とパスワードを入力して貸し出しボタンを押すと読めますよ」と声をかけると、母親の芹沢麻子さん(39)は「家事の最中はテレビを見せることが多いけど、これなら子供一人でも絵本を楽しめる」と笑顔で話す。
平成19年に全国に先駆けて電子書籍貸し出しサービスを始めた同図書館では、音声付き英語学習教材や3D図鑑、江戸時代の風俗本など貴重な資料も含め約7500タイトルを貸し出す。「(電子書籍は)パソコン上で文字を拡大したり白黒の反転ができるので、普通の本を読みにくい老眼や弱視の人にも向いている」と坂巻さん。
新法が追い風
手持ちのパソコンやタブレット端末、スマートフォンにダウンロードすれば、いつでもどこでも手軽に本を借りられる電子書籍貸し出しサービス。高齢者や障害者など図書館へのアクセスが難しい人たちへの利便性を飛躍的に向上させると期待されている。
「電子出版制作・流通協議会」によると、全国に約3200館ある公共図書館のうち、同サービス(電子図書館)を実施するのは昨年3月で約40館。しかし来年4月、障害を理由にした差別を禁じる障害者差別解消法が施行されることもあって、同サービスを導入する動きが広がっている。
茨城県龍ケ崎市立中央図書館は今年7月、国内で初めて「OverDrive(オーバードライブ)」社の電子図書館システムを導入した。米国の公共図書館の9割以上が採用する同システムは、約250万タイトルの書籍を約50カ国で配信。国内タイトルはまだ少ないが、耳で聞く「オーディオブック」も手軽に利用できるのが特徴だ。