「この商売は合法じゃないからな。写真は撮らないでくれよ」。50代前後という男たちは屈託なく笑った。テーブルの上に無造作に並べて売られていたのは、日本のスーパーで買ってきたお菓子や薬、酒、たばこ、コーヒーなどだ。
9月初旬、極東出張の際、ウラジオストク市内の青空中古車市場を取材した。小高い丘の上のいびつな広場には、大量の日本製中古車が並んでいた。
ロシアの通貨急落で輸入価格が上がり、中古車販売は激減しているという。そのような中、業者らはサイドビジネスとして日本の雑貨を売っていた。
車販売の利益には到底追いつかないだろうが、彼らはめげてはいなかった。「この湿布の成分は何か」「コーヒーをまとめ買いするにはどこに電話をすればいいのか」などと盛んに逆取材をかけてくる。「俺と組んで商売をしないか」との趣旨の話も飛び出した。