<主張>政治改革審議入り 臨時国会で成立を確実に 企業団体献金の禁止は早計だ

社説

衆院政治改革に関する特別委員会で答弁する自民党の小泉進次郎理事(春名中撮影)
衆院政治改革に関する特別委員会で答弁する自民党の小泉進次郎理事(春名中撮影)

政治資金規正法の再改正などに向け、衆院政治改革特別委員会で実質審議が始まった。

自民党や立憲民主党など与野党各党が国会に提出した法案は9本に上り、いずれも提出会派だけでは過半数に届かない。

パーティー収入不記載事件の再発防止や政治資金の透明性向上のため、与野党は修正協議で合意を形成してほしい。

重要なのは実効性のある改革を早期に実施することである。政策の円滑な遂行には、政治への信頼回復が不可欠だ。現在開会中の臨時国会で、必ず成立させなければならない。

立民案は説得力を欠く

野党の多くが企業・団体献金の禁止を求めている。現状の規制では政治家個人への献金は禁じているが、政治家が代表を務める政党支部に対しては認めている。

自民は「企業献金が悪で個人献金が善だという立場は取らない」として、容認する方針に変わりはない。これに対し、立民案は企業献金を禁止する一方で、政治団体による献金は認めている。

このため、日本維新の会や国民民主党は「抜け穴がある」として法案の共同提出に加わらなかった。

立民は、支持団体の労働組合がつくる政治団体からの献金は受け続けたいのだろう。企業・団体献金に関し「腐敗や癒着構造の温床となり、政策決定を歪(ゆが)める」と主張する一方で、政治団体の献金を認めるのは説得力を欠く。

そもそも企業も業界団体なども社会の構成員で、政治活動の自由は認められるべきだ。

個人献金が定着していない日本で企業・団体献金を禁じれば、世襲ではない人や、業界団体、宗教団体など大きな組織を背景に持たない人にとって、選挙活動が不利になる弊害が出てくる。企業・団体の幹部が個人として献金する抜け道を閉ざすことも難しい。税金が原資の政党助成金の積み増しは、国民の理解を得られまい。

企業・団体献金を早計に禁止すれば、普通の国民が国政を目指すことが困難になり、議会制民主主義が後退しかねない。法改正にあたっては、そうした深刻な事態も考えておきたい。この点を、自民ははっきり訴えるべきである。

規正法は「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」と定めている。企業・団体献金を禁じるよりも、透明性を高め、政治資金の流れを国民の監視下に置くことが本来あるべき姿だ。

ほかにも論点はある。政党から国会議員に支出される、使途の公開が不要な政策活動費についてである。

自民案は廃止とし、同時に支出先などを例外的に非公開にできる「公開方法工夫支出」を設けるとした。外交上の秘密や企業の営業秘密に関するものを想定している。第三者機関を設置し、監査することで正当性を担保するという。

対象幅広く監査実施を

立民は自民案を「新たなブラックボックスを生む」と批判し、維新や国民民主、共産党などと政策活動費を完全に廃止する法案を共同提出した。

公開することで国益が害されることが懸念される議員外交まで否定するのか。例えば台湾の要人が来日し、日本政府の関係者が面会できない場合、政党が果たす役割は大きい。

第三者機関をめぐっては、自民案が監査対象を公開方法工夫支出に限定しているのに対し、国民民主と公明党が共同提出した案は、国会議員の政治団体に広げている。この案のように幅広く政治団体を監査対象とし、調査権限を十分に与えた組織にすることが肝要ではないか。

外国人と外国法人のパーティー券購入禁止は自民も立民も盛り込んでいる。国政が外国勢力からの影響を防ぐために禁止は欠かせない。これは日本の主権を守ることにほかならない。

パーティー券の代金はパーティーへの参加の対価という位置づけだが、実際は政治活動への事実上の経済支援となっている。外国人、外国法人の政治献金が禁じられている一方で、パーティー券購入は認められているのはおかしい。パーティー券購入に、外国人への参政権付与などの政治的動機があっても不思議ではない。

ただ、両党の案には違いがある。立民案には罰則を設けているのに対し、自民案にはそれがない。罰則を設けて実効性を持たせるべきだ。

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