drawing with wacom 002 うっけ
COSMiCAジャケットイラスト

――うっけさんがお仕事として絵を描かれるようになった経緯は?

専門学校の先生から、学校OBが代表のゲーム会社を紹介していただいて、アルバイトで英語の問題集のカットを描いたのがきっかけになって、卒業後は社員として2Dデザインで企画開発に関わるようになりました。

――同人活動や、ネットで絵を描いたりはしていなかったんですか?

もともとアニメは大好きで、真似をして紙にボールペンで描いたりはしていたんですけど、学校ではみんなパステルとか、アクリルとかでリアルな絵やキャラクターを描いていて。だから会社に入って初めてネットや同人という世界があるんだというのを知って、興味を持ったんです。パソコンとかペンタブレットみたいなものも全部、会社で教えていただきました。

――ゲーム会社ではどういったものを描かれていたんですか?

ぷちぷちウィルス

主に2Dのキャラ絵で、版権物とか、ゲーム以外でもパチンコのキャラなんかを動かしやすいような絵で描いていました。自由な会社で、サークル活動のようにみんなで同人誌を作ったりして、そこでマンガを描いたりしました。

――会社を出てからはフリーとして活動するように?

半年ほどフリーで、もとの会社の手伝いをしてから、派遣でゲームの仕事をするんですけど、変わったものばかり作る会社で(笑)。ひたすら音楽ゲームの企画やFlashでモーションを作っていました、そこではキャラクターを描く機会が少なかったので、その反動で仕事以外の時間に自分の絵を描くようになったんです。イラストレーターとしての活動が中心になるのは、そこを辞めてからですね。

――フィギュアの監修などもされていましたね。

バンプレストさんのプライズ商品用フィギュアのポーズを頼まれて。『コードギアス』とか『ひぐらしのなく頃に』とか。自分は三面図を描いただけで、気がついたらゲームセンターにあって「あ、出た」と(笑)。そんな感じで細々とやっている頃に、ゆうきまさみさんとkzさんのコラボCDアルバム『Crosslight』のイメージイラストのお話をいただいたんです。

Panorama Futureイメージイラスト

――『Crosslight』のお仕事はいかがでしたか。

自分の絵柄と、ゆうきさんとkzさんの世界観との間のバランスの中で、どこまでやっていいのかという葛藤が難しかったですね。ハメを外さないようにと思っていたんですけど、結局、描いている途中から我を忘れて楽しみすぎちゃっています(笑)。

――コラボレーションの中で描いていくのに、手探りの部分もあったかと思います。

「Panorama Future」のイメージイラストは、最初もっとかわいらしい絵本みたいな絵で、そこにkzさんの希望もあってリアルさとか、音楽的なモチーフを入れたりしました。「都会の土産話を聞いて過剰な妄想を広げる」シーンですけど、光の演出、エレクトロな感じはゲームでもやっていたので、kzさんの楽曲の「キラキラ感」を大事に表現しました。

――うっけさんのイラストは、ただフラットなアニメ塗りではなくてふんわりと柔らかい印象があるのですが。

最近はベタで塗ったものを30%くらいぼかして、うっすらと空気感を出す感じが好きですね。色は、気分で好きなところに好きな色をぬってから、全体のバランスを見ているんですが、「ビニールっぽい」「風船っぽい」と言われたことがあります(笑)。金属的なものよりは動物とか花とか、柔らかいモチーフが好きですね。あと、かわいい女の子。もう直視できないくらい好きで「うわぁ、かわいすぎる!」って。見るのは無理だ、だから描くか!みたいな(笑)。

Overtureイメージイラスト

――「Overture」のイラストはまさにその「かわいい」イメージですね。

『Crosslight』では、ゆうきさんのキャラを意識する部分もあったんですけど、これはラフの段階で「かわいいからこのままで!」と言われましたね(笑)。想い出の風景のシーンなので、懐かしい感じにちょっと黄色くしたり、ノイズを入れてみたりしました。女の子の持っているぬいぐるみとかは、ちょっと変なキャラにして遊んでいます。動物とか、こういう絵は好きなので比較的描きやすいです。

「COSMiCA」のイメージイラストでは未来都市の背景があるんですけど、これは写真資料をいただいたりとか、いろいろ調べて描きました。メカ的なものはパースがバレバレになるので苦手だったんです。というのも、自分の絵は「和」調なのかなと。平面的なベタっとした構成にどうしても意識がいってしまうんです。でも今回パースもしっかり意識して描いてみたら、けっこう楽しかったので「描かず嫌いだな」と反省しました。

COSMiCAイメージイラスト

――デジタルで描き始めた頃は、どのようなツールを使われていたのですか。

最初の会社では、Illustratorで描いていました。ペンタブレットがなかったのでPhotoshopだとマウスでキャラを描くのが大変で、紙に描いたものをとりこんでパスで線を引いて塗っていくやり方でしたね。それからIntuos2を使うようになって、作業しやすくなりました。

――現在はフリーとして活動されていますが、作画環境はどうなっていますか?

COSMiCAイメージラフ

ペンタブレットはIntuos3で、ツールはSAI、PhotoshopとIllustratorも使っています。主に線画をSAIで、塗りはPhosothopです。SAIを使い始めたのはフリーになってからなので、慣れている機能はPhotoshopで作業します。塗るときにフィルタを使って色々遊ぶのが好きなんです。Illustratorも好きなんですけど、やはりフリーハンドの柔らかいタッチが消えて線がかたくなってしまうので、ちびキャラを描くときなどに使っています。

――ワークフロー的には、まず紙でラフを描かれるのですか?

デジタルで描き始めることもあるんですが、ちゃんとした構図を決めて描くときは、まず紙の上で考えて細かいところを直しながら進めていきますね。背景とかキャラとかのパーツごとに分けて紙に描いて、それをとりこんでPhotoshopでレイアウトして。SAIで主線を入れたら、またPhotoshopに戻って色を塗る感じで、けっこう行ったり来たりしますね。オブジェクトとかパターン的なものはIllustrarorを同時に開いて、星とか四角とかパーツを作ってPhotoshopに持ってきます。

Intuos4を使ううっけさん

――ペンタブレットの使用感はいかがですか。

Intuos2、Intuos3と使っていますが描き味がいいですよね。ペン芯は今は標準のものを使っています。私は左利きなので、キーボードでショートカットを使うときに腕が交差しちゃうんですよ。最近そのせいか腰が痛くて(笑)。なのでファンクションキーとか有効活用したほうがいいのかなと思っているんです。

Intuos4はタブレットの左右を入れ替えるとファンクションキーの表示も左向けに切り替わったり、ケーブルも差し替えられたりするので、左利きにやさしくてありがたいですね(笑)。PhotoshopCS4だとホイールで画面を回転できるのもいいです。新しい太軸グリップペンもすごいかわいい! 握るのに力がいらなくて楽ですね。すごく柔らかくて描きやすい。欲しくなりました。

――これから先のお仕事の予定とか、やってみたいことというのはありますか。

ぷらちなトップページ描きおろし

イラストの他にも、マンガには挑戦したいと思っています。あとは、なんでもやってみたいというのはあるんですけど、アニメーションはやってみたいです。この前ほんの少しだけ原画を描かせてもらったら、全然ダメだったんで。勉強しないといけないですね。

あとは、まだ同人誌レベルの構想なんですけど、ナチュラル系の雑誌とかが好きなので、そういうものをイラストで見せていくことができないかなと。花とか、料理とか、そういう自分の生活の一部をコンセプトとして盛り込んだものを。ただイラストを集めたものでなくて、デザインも含めた冊子としてできないかなって。どこかの本の一部分としてではなく最初から最後まで考えてやってみたいというのはあります。

――最後に、うっけさんにとって、ペンタブレットとはどんな存在ですか?

普段は、何も考えずに使っていますよね。カッコよく言うと恥ずかしいですけど、”ある”のが当たり前になっているものです。ペンタブレットが無いことを考えたことがないみたいな。そんな感じです。

――CDアルバム『Crosslight』を手にとっていただく皆さんに向けてもメッセージを。

これまでの私のイラスト活動の集大成として、頑張らせていただきました。kzさんの曲もいいものばかりですし、ゆうきまさみさんのマンガも素敵なお話ですので、ぜひ手にとって見て聴いてください。よろしくお願いします!

インタビュー/構成:平岩真輔(twitter:@hiraiwa

うっけさんサイン色紙

うっけ
イラストレーター。『学校なぞなぞ大図鑑~漢字アニメなぞなぞ115』(ぽるぷ出版)のイラストの他、(株)スカラベスタジオで2Dデザイナーとしてゲーム企画・開発に従事する。独立後、フリーのデザイナーとして、ニンテンドーDS用ソフト『ぷちぷちウィルス』(ジャレコ)、パチンコ『CRフィンガー5学園物語』(株式会社高尾)などでキャラクターデザインを手がける。イラストレーターとしてはアニメ『鉄腕バーディー DECODE』のノベライズ作品『鉄腕バーディー DECODE あの日の小夜香へ』(小学館ガガガ文庫)でモノクロ挿絵を担当した他、2009年8月にリリースされた、マンガ家のゆうきまさみと人気アーティストkzによるコラボレーションアルバム『Crosslight』(LOiDレーベル/エイベックス・マーケティング)では、全7曲のイメージイラストとキャラクターデザイン協力を手がけ、その活躍が大きく注目されている。
 ⇒個人ウェブサイト「TRIP」
 ⇒ゆうきまさみ×kz『Crosslight』公式サイト

YouTubeワコムチャンルでうっけさんが上のイラストを描く様子を動画配信中!

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Copyrights of pictures

  1. ゆうきまさみ×kz『COSMiCA』先行シングル盤(LOiD)ジャケットイラスト ©ゆうきまさみ×kz/Crosslight Project.
  2. ニンテンドーDS『ぷちぷちウィルス』(ジャレコ)イラスト ©キーズファクトリー
  3. ゆうきまさみ×kz『Crosslight』ブックレットより「Overture」イメージイラスト ©ゆうきまさみ×kz/Crosslight Project.
  4. ゆうきまさみ×kz『Crosslight』ブックレットより「Panorama Future」イメージイラスト ©ゆうきまさみ×kz/Crosslight Project.
  5. ゆうきまさみ×kz『Crosslight』ブックレットより「COSMiCA」イメージイラスト ©ゆうきまさみ×kz/Crosslight Project.
  6. ゆうきまさみ×kz「COSMiCA」イメージイラストラフ ©ゆうきまさみ×kz/Crosslight Project.
  7. 『ぷらちな』トップページ09年5月描き下ろしイラスト ©うっけ/TAMON Creative.

Drawing with Wacom © TAMON Creative / Wacom