「スキャン代行業者提訴」って誰得?

スキャン代行業者提訴とかあったそうな。

スキャン代行業者提訴で作家7名はかく語りき

文系書籍の人達はいいなぁと思いつつ、いろいろ批判はあるだろうけど、それはしないでおく。

でも、この手の話が出て来る度に「誰得?」という疑問が起きる。

私は紙の本はとっておく方で、またかつては大量に本を買っていた。東京に来てからは抑え気味にしているのだけど、引越しとかする時に一番重い荷物は本だ。ちょっと前までは、その置き場のために倉庫借りてた。

キュラーズの遅延管理料は合法か?

まだ私は「物は大事にしなさい」と言われて育った世代だから、「自炊」して本を捨てるとか、自炊のために背表紙を切るとか出来ないので、当分紙の本とは付き合うことになるだろう。これから電子で出るものは電子にするんだろうけど、古い本までそうしようとは思わない。

そんなことがあるので、別に「スキャン代行業者」を頼みたいとは思わないのだけど、古い本についてスキャンしたいなとゆー欲求がないわけじゃない。さらに言えば、

スキャンして共有

とゆー、著作権法違反になることさえしたいと思っているものがある。

それは何かと言えば、

古い専門書

だ。昭和の時代のもうとっくに絶版になっている、古い専門書が山盛りあるのだが、その中には現代の人が読む価値があるものも少なくない。理論書や数学書は今だって価値があるだろう。でも、絶版となって入手出来ないのはもったいない。名著でさえ、売れなきゃ絶版だ。

また、電子系の古い雑誌、古い時代の「無線と實驗」とか「CQ ham radio」とか、広告も含めて面白いものだと思う。「真空管時代の先端技術」も「ラヂオ街だった時代の秋葉原」も出ている。1970年くらいまでを目安にして、結構コレクションしてるのだ。古い「無線と實驗」には、「森本おじさん」の学生時代のインタビュー記事とかあるよ。

ところが、極端に古いものを除けば、こういったものも「スキャンして共有」は著作権法違反であることは間違いない。でも共有はしないまでもスキャンはしておきたい。ページめくるのだって怖い本があるんだから。

こういった「古本」はオークションとかAmazonマーケットプレイスとかでは、結構いい値段で取引されている(「無線と實驗」が2000円とか)。そんなに古いものでもない、私の昔書いた程度の本でも、時々「その値段なら俺の持ってる分売るよ」と言いたいような値段になっていることがある。

それはそれで結構なことだと思うのだが、古本が高値で取引されたところで、著者も出版社も1円にもならない。でも、良心的な読者は著作権を遵守して、コピーを配ったりしないし、ましてや自炊したものを共有したりもしない。お陰で「貴重な古本」は値崩れしないで、古本屋は商売が成り立つ。「内容が読めれば満足」な人であっても、「骨董的価値」に金を払うハメになる。

「スキャン代行」とかも実は同じようなもので、既に持っている本を自炊したい人が使うものだから、してもしなくても著者も出版社も1円も損も得もしない。古本はいろんな人に消費されて販売機会を失なうものだったり、妙に高い値段になってて悔しい思いをしたりするけど、「スキャン代行」にはそれもない。まぁ、裁断後の本を売るとか、スキャンしたデータを販売するとかされたら、そりゃー困ることではあるけど、それはそれで取締ればいいだけのこと。単にスキャンを他人にやってもらうことに損も得もない。もちろん業者が儲かるんだから、古本屋が儲かるのと同じくらい悔しいことだろうけど。

それとも、スキャンされると電子書籍が売れる機会を失なうと言いたいのだろうか? 個人的にはハードカバーで買った本が文庫が出ようが電子が出ようが、あらためて買うなんてことは絶対にない。そんな金があったら、別の新しい本を買う。と言えば、いつぞやの「百度」が自炊を共有しちゃってるのがきっかけで、「聖☆おにいさん」は紙で買ったよ。スキャンなんてその程度の価値だ。オリジナルに近いものを持つことに価値があるのだ。

また、自炊したものが仮に手元にあって、それの電子版が出れば、必要を感じれば買うだろう。画像で取り込まれたものより、テキストの方が扱いやすい。

つまり、どこまで行っても

「自炊」は代用品

でしかないし、その代行業者に制限をかけたところで、本が売れるようになるわけじゃない。制限をなくしても、電子本が売れなくなるわけでもない。「代用品」が世の中の主流になるとも思えない。

「古本」も「自炊代行」も結局同じことで、印税とか出版社の報酬とか入手とかの仕組みを変えない限り、「正直者が馬鹿を見る」どころか、「正直者のせいで商売上手が儲かる」という図は変わらない。

そういったことって、多分賢明な作家の方々もわかってると思う。それでもあれだけ頭の悪い反対論をブチ上げたりするのは、きっと誰かに

反対させられている

のではないかなぁ。それは誰かと言えば… おや? 誰か来たようなので。

PS.

なんか自炊した人の「良識」の問題だって言いたい人がいるようなんだが、そういった問題じゃないよ。音楽をMP3で流すのも同じだけど、「自炊」されたものってのはオリジナルで配布したものよりも、明らかに品質が低い。

昔々、「UNIXプログラミング環境」が絶版になってた頃、どうしても手元に置いて読みたかったのだけど、その当時は手に入らなかった。たまたま先輩が持っていたので、全ページコピーして読んだものだった。

でもまぁ、結局コピーはコピー。入手可能になったらちゃんと買った。それは私に良識があったからではなくて、「コピーの本」なんてのは読むのにも面倒臭いし、これくらい厚い本だと置き場にも困るし運ぶのも面倒臭いからだ。

じゃあそのコピーしたのはどうしたかって? 裏紙で使うだけだよ。誰かにあげたらそいつは喜んだかも知れないけれど、私は根がケチだから

なんで俺が手間かけてコピーしたものを、
タダで他人にやらんといかんの?

って思ってたし。クレクレ厨視点だと、むしろ「良識」ないかもねw

そんな奴がなんでFLOSSをやるかって? それはまた別の理由があるからさ。