地域間で税収を再配分 総務省検討会、税源移譲方針を転換
総務省が国から地方への税源移譲を進める従来の方針を転換した。同省の有識者検討会は6日、都市に集まる法人住民税(都道府県・市町村税)を財政の苦しい地方自治体に再配分すべきだとする報告書を正式にまとめた。貧しい自治体を東京都などが支援する案で、それぞれの自治体の支出を自前の税収で賄おうという地方分権に反する。
報告書は法人住民税の一部を地方交付税の原資にし、財源の足りない自治体に配るべきだと提言した。報告書を受け取った新藤義孝総務相は「尊重したい」と述べ、月内に与党の税制調査会に新税制の案を提出する。
2008年度から法人事業税(都道府県税)の再配分を行っており、法人住民税の再配分も加えて格差縮小を進める。法人事業税の再配分は段階的に減らし、法人住民税の再配分に一本化する。
自治体どうしで財源を融通することに従来は総務省も自治体側も反対だった。国から地方への税源移譲によって全国の自治体の財政をまんべんなく潤すことを理想としてきた。具体的には、法人関係税を国税にする代わりに地域差の小さい国税の消費税を地方税にする方法を主張してきた。ただ、今回は多くの自治体が報告書を容認し、税源移譲を封印した。
消費税は全額を社会保障に使うとして14年4月の増税が決まったばかり。増税分を国と地方でどう分けるかも社会保障の業務分担に基づいており、いまさら地方への配分を増やすのは困難だったからだ。国が単純に交付税を増額することも望み薄で、都市部の豊かな財源が狙い撃ちされた。
東京都や愛知県豊田市などの豊かな自治体には標準的な行政サービスの必要経費を大きく上回る財源がある。ただこれらは企業誘致などの成果でもあり、都市部の自治体は強く反発している。