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スマホ「風雲児」の面影なく 小米の急失速

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中国・小米(シャオミ)がスマートフォン(スマホ)市場で急失速している。2010年の創業から一気に世界販売シェア3位に登り詰めたが、昨年には勢いを失い、ついに今年は世界販売トップ5から完全に姿を消した。中国国内でも昨年の首位から5位に転落し、客離れが著しい。小米の急失速は、中国メーカーの何を物語るのか。

「以前は、小米を持つことが格好良かった。でも今は全く違う」(広東省広州市の30代女性)

中国人の若者の多くが抱く率直な感想が、データにも顕著に表れている。スマホの世界販売(米調査会社IDC)で、小米は14年7~9月期から常に3~5位につけ、韓国サムスン電子や米アップルに続く上位の常連だった。その小米が年明け以降、上位5位から完全に姿を消し、すでに半年になる。1~3月期は世界8位だ。

もはや一時的な不振ではない。「すでに昨春から不振の予兆が出ており、小米からの部品受注が極端に減り始めた」。小米と取引関係にある日系部品メーカー幹部はこう明かす。それでも何とか15年は2年連続で中国市場で首位をキープした。

だが、踏ん張りは長続きはせず、予兆はいよいよ今年、現実のものとなる。小米が販売の大半を依存する中国で5月、衝撃のデータが業界を駆け巡る。中国市場のスマホ販売で16年1~3月期、小米は昨年の首位から一気に5位に転落した。市場全体が2%増を維持する中、小米だけ32%減の大幅減少となったのだ。

なぜここまで急降下したのか。香港在住で携帯電話ジャーナリストの山根康宏氏は「多くの中国メーカーと変わらなくなってしまった販売戦略にある」と、指摘する。

市場に参入した11~12年当初の小米はプレミアム感を打ち出し、ネットによる予約限定の販売手法を取った。iPhone(アイフォーン)に似たスマホは、その入手のしづらさからも話題を集めた。

だが13年以降、小米は販売量拡大を優先し、街中での代理店販売を大きく解禁した。ここが一番目の転機となった。販売量こそ増えたが「その分、プレミアム感は減り、誰でも買える普通のスマホに近づいた」(山根氏)。

そんな小米が、消費者を飽きさせまいと次に取った戦略は「紅米(ホンミ)」という格安ブランドの投入だった。紅米の価格は、小米ブランドの約半分の1000元(約1万6000円)以下。13年7月、これが小米の2番目の転機となる。

だが14年末、中国経済の低迷が顕著になり始めると、小米はいよいよ焦燥感を強める。シェアを維持しようと、15年はさらなる紅米シフトを敷いたのだ。これが3番目の転機で、現在の深刻な低迷を招く決定打となる。次々と格安の紅米の派生商品を投入し、勢いを演出したことで、「小米は安いメーカーだということをさらに印象付けてしまった」(山根氏)。

相次ぐ戦略転換で、彗星(すいせい)のごとく現れた中国の新星は16年、わずか1年半で世界の上位争いから姿を消した。世界どころか中国のトップ5からも外れる危機――それが今の小米の現実だ。

中国ではメーカーが雨後のたけのこのように現れては消え、また現れては消える。こうした企業に共通するのは目先の利益を優先し、中長期的な視野に立つ計画性の無さにある。

市場が一気に拡大したスマホ業界で、小米もやはりその一つだったのか。市場全体もブレーキがかかり始めた業界で、間もなくその答えが出る。

(広州=中村裕)

[日経産業新聞8月17日付]

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