大学で「職業人」育成を 教育再生実行会議が提言
政府の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早稲田大総長)は4日、職業に結びつく知識や技能を高める実践的なプログラムを大学に設けるとの提言を安倍晋三首相に提出した。アカデミックな教育課程に偏りがちな大学を変革し、産業界が求める「即戦力」となる人材を育てるのが狙い。社会人の学び直しを後押しするとの期待もある。
同会議の提言は6回目で、今回は生涯学習の推進を主なテーマとした。安倍首相は「誰でも学び続けることのできる社会をつくる。女性の活躍や地方創生にも極めて重要だ」と述べた。
提言は大学のあり方に関し「人生を豊かにする学びに加え、実学を重視した教育を提供することも必要」と指摘した。そのうえで資格の取得などを目指す教育プログラムを各大学が設け、国がこうしたプログラムの内容を認定する仕組みを創設するよう提案した。
プログラムの開設にあたっては、民間企業や地元自治体と連携し、産業界や地域のニーズを採り入れることを要請した。
同会議は昨年9月に分科会を設け、大学を若者だけでなく全世代の学びの場と変える方策などを議論した。委員からは「地域が求める人材と大学の教育内容にミスマッチがある」「全ての大学が『ミニ東大』のような総合大学である必要はない」などと、大学の機能分化を推進すべきだとの指摘が相次いだ。
産業界や地域の間には職業教育の強化を大学に求める声は多い。一部の大学は動き出しており、ワインの産地として知られる甲府市にある山梨大は来年度、高品質なワインの製造技術を学ぶ新たなプログラムを開設する。醸造家らを講師に招き、日本ワインの輸出増加に貢献する人材を育てる狙いという。
文部科学省は提言を受け、大学の実践的なプログラムを文科相が認定する制度の検討を始めた。専門学校には既に同様の仕組みがあり、民間企業と連携した様々なプログラムが開設されている。
提言はそのほか、子育て中の女性らが無理なく学べるよう大学の在学や休学期間の上限を弾力化することや、地域住民が学校運営に参加する「コミュニティースクール」(地域運営学校)を全校に広げることなどを盛り込んだ。