インドネシア4年半ぶり低成長 ジョコ氏厳しい船出に
4~6月GDP伸び率5.12%、
【ジャカルタ=渡辺禎央】東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国インドネシアの経済が急減速している。4~6月の実質国内総生産(GDP)伸び率は前年同期比5.12%で、4年半ぶりの低水準となった。資源輸出が低迷、昨年の利上げの影響で企業の投資も振るわなかった。庶民目線の改革派として7月の選挙に勝利、10月に就任するジョコ・ウィドド次期大統領は厳しい環境での船出となりそうだ。
「政府想定の5.2~5.3%に届かなかった」。中央統計局のスルヤミン局長は5日、こう述べ、通年目標の5.5%も達成が困難だと認めた。ジョコ氏が目標に掲げる7%成長からはほど遠い数値だ。
インドネシアでは人口が急増する若年層の雇用を確保するため、資源依存型の経済を多角化する改革が急務だ。しかし、経済減速のなか政府による補助金の削減に反対が強まるのは必至。ジョコ氏はジレンマに直面する。
ジョコ氏は財政の大きな負担となっている燃料補助金を段階的に削減すると選挙戦で主張した。人口が増えてエネルギー消費が拡大するインドネシアはすでに石油輸入国に転じている。多額の補助金は財政収支と経常収支の「双子の赤字」の原因にもなっている。
外国企業は補助金削減を歓迎する立場だ。「(販売への)影響は短期的」(トヨタ自動車の販社幹部)で、通貨ルピア相場の安定につながると期待している。
一方で改革に伴う国民の痛みが大きすぎると、ジョコ氏が人気を維持するのが難しくなる。貧困家庭への現金支給などの政策は「7%の成長」を前提としており、こうした計画は見直しに追い込まれる可能性がある。
ジャカルタなど主要都市では今月から補助金燃料(軽油やレギュラーガソリン)の販売制限が実施され、すでに人々の不満は高まっている。ジョコ氏の人気が揺らぐと、10月発足の国会で過半の議席を得るための連立協議も困難となる恐れがある。労働市場や金融、資源などの分野で保護主義的な政策に傾斜する可能性も指摘される。
インドネシアは2011年に6.5%の成長を達成した。その後、中国景気の減速などで石炭など資源輸出が減少し、貿易・経常赤字に転落した。
13年はルピアが対米ドルで2割下落、物価が高騰した。このため中央銀行は相次ぐ利上げに動かざるを得なかった。企業の借り入れコストが上がって投資活動が減速した。
4~6月GDPの内訳では輸出がマイナス1.04%と大きく落ち込んだ。将来の補助金の原資とするため政府支出を厳しく抑制したことも成長の足かせとなった。
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