バンダイナムコ 海外のアニメ配信から撤退
バンダイナムコホールディングスは海外のアニメ配信事業から撤退する。子会社が運営するアニメ配信サイトを10月に閉鎖する。過去には海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構、東京・港)も10億円を出資した「オールジャパン」の事業だった。日本製アニメの海外での人気は続いているが、動画配信市場で米国勢との激しい競争に生き残れなかった。
100%子会社のアニメコンソーシアムジャパン(ACJ)が運営するアニメ配信サイト「ダイスキ」と、スマートフォン(スマホ)向けアプリのサービスを終了する。既にサイト上でユーザーへの告知を始めている。
ダイスキでは、人気アニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」や「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」などの英語版を191の国と地域に配信している。
ACJは2014年にバンナムとアサツーディ・ケイ、アニプレックスが共同で設立。その後、クールジャパン機構や講談社など15社が出資した。ただ「計画通りに有料会員を獲得できなかった」(バンダイナムコの広報担当者)ため、苦戦が続いていた。今年3月にはバンナムがほかの出資者の株式を約20億円で買い取り、完全子会社化していた。
ACJはなぜうまくいかなかったのか。業界関係者は口をそろえて「参加企業が有力コンテンツを出し渋った」と話す。
優良コンテンツを持つ企業が数多く参加し海外ファンを集めるはずが、各社はHulu(フールー)やネットフリックスなど会員数が格段に多い米国を基盤とする配信事業者にコンテンツを提供するのを優先した。ACJは会員が少ないからコンテンツが集まらない、いいコンテンツがないから会員が増えない――という負のスパイラルに陥ったようだ。
音楽や映画・アニメなどのコンテンツはCD・DVDの販売からネット配信に移っている。ネットフリックスやHulu、アマゾン・ドット・コムなどの米国の配信サービス大手と勝負できるコンテンツと利便性を日本勢は用意できなかった。
人気アニメ「ワンピース」などを制作する東映アニメーションによると、海外でのアニメ配信は中国でも成長しているという。米国でも人気は確立され、ネットフリックスなどの配信事業の"巨人"の手を経て、ファンまで届いている。
日本は配信基盤(プラットフォーム)を巡る競争では米大手に敗れたが、コンテンツそのものの魅力が失われたわけではない。今後もうまく配信事業者との関係を維持できれば、海外での販売が大きく伸びる可能性を秘めている。