<大相撲名古屋場所>◇7日目◇19日◇愛知県体育館

 東前頭8枚目高見盛(32=東関)が、「悪(ワル)コップ」になって4勝目を飾った。栃煌山(21)との一番には、6日目から休場した横綱朝青龍(27)への指定懸賞だった新曲「わがろうたし悪の華」が回されたが、逆転の寄り切りでそれを懐に収めた。猛暑が続くが、夜のサイクリングで気分転換。朝青龍不在の場所を角界一の人気者が盛り上げている。

 高見盛が若手ホープに作戦勝ちした。「相手も自分も右四つ。それなら、相手の右を封じて、自分は左四つで攻めてみよう…」。狙いは的中した。立ち合いで圧力負けしたが、左脇はしっかり締め、右脇はあけて、栃煌山を左四つにさせた。瞬間、自らも左を差して、大きくかいなを返した。相手の体勢を崩した上、右上手も取っての寄り切り。5秒2での快勝で、満員御礼の観衆を沸き返らせた。

 高見盛

 追い詰められて余裕はなかった。昔から左四つでも相撲は取れると思っていた。紙一重で疲れたけど、まあ、良かった…。

 連敗スタートだったが、ようやく白星が先行した。今場所の懸賞獲得数も3位の豊ノ島に2本差の4位につけている。そして、この日は「悪の華」と記された懸賞旗が土俵を回った。これは朝青龍の指定懸賞だったが、突然の休場でスポンサー側から「7日目、14日目は高見盛関の取組に」と回されたものだった。正義の味方「ロボコップ」とは正反対のイメージだが、高見盛はこれにも「確かにオレは悪(ワル)じゃないが、ありがたいこと。新曲ということなので、1度聴いてみたい。パワーの出る曲なら最高」と前向きにとらえた。

 連日の猛暑で疲れは体に蓄積している。この日の名古屋は最高気温35度。若手力士も「正直、しんどい」と口にするが、この男は「毎日がクライマックス。疲れていても力を出し切るのがプロ」と自分に厳しい。その一方で夜は新たな気分転換法を見つけた。「毎日、部屋(愛知・稲沢市)からTSUTAYAまで6キロほど自転車で走っている。本を買うのが楽しみだから」。熱帯夜に汗をかいて自転車をこぐワルコップ、いやロボコップは、32歳の体にムチを打ち、残り8日を駆け抜ける。【柳田通斉】