――「クロ現」のキャスターを務めるうえで、国谷さんが大事にされているのは、どんなことでしょうか?
最も大切にしているのは視聴者の立場から物事を見ていく姿勢を保つことです。その上で複雑で難しい事象に対して、より深い視点を持てるようにすることでしょうか。キャスターという立場は、問題を俯瞰して見ることができなくてはならない。同じテーマでも置かれた立場によって課題が異なり、いろいろな視点を踏まえなくては深い議論ができないと思います。ですから最初に自分が疑問に思ったことを大切に持ち続けながら、知り得た情報や知識を生かして、そのテーマを掘り起こす材料にしていく。「取材者と視聴者をつなぐ橋渡し役」が、キャスターだといえるでしょうね。
――なるほど、ほかにも国谷さんが経験から感じていらっしゃる“キャスターの役割”とは何でしょう? 例えば番組の前説(番組最初の語り)では、かなりの思いを込めて語っていると思うのですが…
なによりも自分の言葉で語ることが大切です。もちろん個人的な意見は入れないことは大前提にしつつ、前説では自分の言葉で語ることが、大事だと思っています。やはり人間って、どんなにたどたどしくても熱を持ってしゃべっているかどうかで、その話を聞いてみようという気が起こってくるものではないでしょうか。もう一つは、26分という限られた放送時間の中では、すべてを語れるわけではないので、前説には、今日のテーマはこの角度から取り上げます、という番組のフレームをきっちりと伝える狙いもあります。そこで自分の言葉で語るか語らないかでは、視聴者に伝わる熱にも、大きな差が出てくるのではないのでしょうか。