福島第一原発事故により、大気中にはおよそ90京ベクレルという、大量の放射性物質が放出された。原発事故から1年あまりたった今、事故直後には汚染がみられなかった場所で次々に新たな汚染スポットが見つかり、汚染地図の更新が必要になっている。その原因と考えられているのが、水による放射性物質の移動である。河川を介して放射性物質はどのように広がっているのか。番組では川が放射性物質を拡散するメカニズムを明らかにするため、福島県を水源とする阿武隈川、阿賀野川という二つの一級河川の上流から下流まで400か所以上で専門家とともに独自の調査を行った。
福島県中通り地方を縦断し宮城県沖に流れ出る阿武隈川。文部科学省の報告書によると阿武隈川には一日当たり1700億ベクレルの放射性物質が阿武隈川を移動している。私たちの調査では水そのものからはほとんど汚染は検出されなかった。しかし、川底の土からは場所によっては6万ベクレルを超える高濃度の汚染が検出された。
一方、福島県から新潟県へ流れ日本海に注ぐ阿賀野川の河口付近でも川底の土から汚染が見つかった。ここでもやはり川底の粘土鉱物が放射性セシウムと強く結合し、汚染の原因となっていた。阿賀野川の上流にあたる会津地方は、事故直後に原発周辺の住民が避難するほど汚染が低い場所だったはずだ。調査の結果、阿賀野川の支流の放射性物質の量が、雪解けを挟んで大きく跳ね上がっていた。これが粘土鉱物と結合し、はるか遠くの日本海側まで移動する実態が浮かび上がってきた。
番組では、去年の11月から半年間の独自調査を元に「水」によって集められ、「川」という道で予想外に遠くまで移動し、溜まり、汚染を拡大させる放射性物質の実態と、その動きに翻弄される流域住民の苦悩を伝える。