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破綻国家アイルランドからEUへのローン申請書って?
EUによる支援が決まったアイルランドの「ローン申請」と再生手続きは一般の個人や会社とどう違うのか
茨の道 自分のクビも危うくなったアイルランドのカウエン首相(11月21日) Cathal McNaughton-Reuters
オバマ政権は11月22日、EU(欧州連合)に巨額の資金支援を申請するというアイルランドの決断に支持を表明した。ではアイルランドは、ローンの申請書を記入することになるのだろうか。
答えはノー。EUは公式のローン申請書など用意していない。今回のような事態はそもそもあってはならず、想定の範囲外だからだ。仮に申請書があったとしても、定型の書式では間に合わない。商業銀行が定型の書式を使えるのは、借り手の資産や収入、信用度を過去の借り手の返済記録と比較することで、その信用力を測れるからだ。銀行はそのデータに基づいて、融資の可否や利率を判断する。
しかしアイルランドの場合、借金返済能力はとうにない。少なくとも民間銀行なら要求したであろう高い金利など支払いきれないことは周知の事実。アイルランドがEUを頼るのは、申請書など書いたらそれこそ誰もお金を貸せない状態だからこそ。第一、普通の個人が住宅ローンを申し込む場合と違って、EUがアイルランドのローン申し込みを却下する可能性はまずない。
重要なのは申請書より覚書
またアイルランドの財政状況はすべて公開されているから、EUは悲惨な財政事情を審査するための申請書など必要ない。現在、ヨーロッパで進んでいる交渉は、アイルアンド経済の現状ではなく将来を見据えている。
民間の金融業に例えるなら、アイルランドの行動は融資の申し込みというより企業の再生手続きに近い。倒産した企業と同じように、アイルランドも過去には失敗したものの、今後数年で赤字から抜け出すための周到な計画があると、EUを説得しなければならない。再建計画には、国際的に見て極めて低い水準にあった法人税の引き上げや金融業界の再編が含まれるだろう。
アイルランドに対する金融支援の際に最も重要な書類は覚書だ。アイルランド政府の代表、おそらくはブライアン・レニハン財務相と、オリ・レーン欧州委員(経済・通貨問題担当)が覚書にサインし、アイルランドと欧州中央銀行、IMF(国際通貨基金)、欧州委員会が写しを保管する。
覚書には、EUから金融支援を受け続けるために必要な条件が記されるだろう。もしアイルランドが約束を履行できなければ、EU諸国はアイルランドへの融資を停止できる。EUがギリシャに金融支援パッケージを提供した際にも、似たような覚書が交わされており、契約の履行状況をEUの担当者が定期的に確認している。アイルランドも同じ道をたどることになる。