アリさんマークの引越社が組合員の買収・分断図る 労組脱退を条件に担当者が30万円提示――弁償金返還求める元社員への示談書で発覚
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Aさんが印鑑を押した示談書。カネを支払って労組から脱退させるような内容であり、労働組合法7条3号で禁じられた「支配介入」にあたる可能性が高い。 |
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- 組合脱退届と訴訟取り下げ通知が続々
- 30万円出して組合から脱退させた
- 井ノ口副社長が都労委で証言
- 示談書の文面は違法との認識はある
- 金太郎アメ的で不自然な脱退届
組合脱退届と訴訟取り下げ通知が続々
弁償金の給与からの天引きされるのはおかしい――そう気付いた引越社の従業員や元従業員は、個人でも入れるプレカリアートユニオン(東京都渋谷区、以下ユニオン)に続々と加入し、会社を訴える裁判の原告となっていった。
また、訴訟には参加しなくても、ユニオンを通して団体交渉を進めている人もいる。
会社に従っていた人たちが声を上げて訴訟を起こしたことは、テレビや新聞にもとりあげられ、社会から注目を浴びた。ところが、意気軒昂だった従業員と元従業員らが、ある時期から、ユニオンからの脱退や訴訟取り下げの通知書などを送りはじめた。
それも、ある時期に集中していた。第一弾は昨(2015)年3月29日付から一週間足らずの間で、13人が脱退届を送付。会社と団体交渉をしており、集団提訴前の人たちである。
しばらくは収まっていたが、各地で集団訴訟が始まった時期と前後して、再び同様の文書が届き始めた。具体的には、今年7月4日付から10月8日付までの脱退届や訴訟取り下げ文書などが14人からユニオン本部に届いたのである。
文面や形式の類似から、外部からの一定の働きかけがあることを伺わせたが、今回、明らかになった証拠文書=「示談書」(画像参照)と、それを取り交わした元従業員のAさんの証言から、引越社担当者が組合脱退を働きかけていることが、事実と判明した。
つまり、労使交渉をしているユニオンにも弁護団にも何の相談もなく、一方的に直接組合員と交渉し、金銭解決を図ろうとしている、ということだ。Aさんは訴訟には参加はしていないが、ユニオンを通して団体交渉をしている。
文書を送ってきた中には、裁判の原告もいるのだから、裁判中にもかかわらず、裁判所を通さないで直接和解交渉をしていることになる。一連の示談書等が会社の意思決定によってなされているのなら、明らかに労働組合法7条3号違反の「支配介入」に該当する。
30万円出して組合から脱退させた
今回、事情を話してくれたAさんは、約2年半、引越社関東の久留米支店(福岡県)で働いていた。はじめは、九州本部の人が連絡してきたという。
「最初、家まで来そうな感じがあり、自宅を知られたくなかったので、少し離れたファストフード店で九州本部のカスタマー担当のIさんと会いました」
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交わした示談書の内容が違法になると知り、Aさんは示談書を撤回する意思をユニオンに告げた。![]() |
カスタマーとは、交通事故や荷物事故が起きたときに対応する部署のことだ。同社の社員によると、なにか問題が生じれば、まずドライバーが対応し、次に支店長が処理する。それでもクレームがあるようならば、本部のカスタマー担当者に相談する。直接示談金などを交わす担当者と位置付けるのがわかりやすい、という。
――どんなことを本部の人は言ったのですか。
「組合に入っていれば、組合費も支払われなければならない。支払ってもすぐに解決するわけではないから、会社に対する請求金額が15万円とか25万円程度なら、このままだと組合費のほうが多くなってしまうかもしれない、というようなことを言いました」
――30万円という金額は、会社の方から提示されたのですか。
「一度話を聞いた後、もう一度、九州本部のカスタマーと副支店長と会いました。会社の人の話だと、私が給料から天引きされたのは約33万円、ということでした。しかし、こういう弁償金の場合、本人が3割くらい払わなければならない場合もある、とも聞きました。
そういう数字を聞いたり、請求している額の2倍くらい言ってみようかと、30万円という金額を出しました」
――示談書の文面は九州本部の人があらかじめ書いて提示したものですか。
「相手に言われたとおりに、私が書きました。形としては私が書いたけれど、
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引越社関東を相手取って訴訟を起こしている現役社員の西村幸三さん(仮名)の父親に宛てられた怪文書。西村さんの母親がなくなり、その葬儀が行われた2015年10月14日に届けられた。
西村さんの妻の実家に当てられた怪文書。これも彼の母親の葬儀の日に届いた。西村さんの実家と妻の実家の住所や家族関係は「会社に提出した書類から把握できます。その情報は会社役員しか知りえないはずで、川崎ブロックの元同僚が知るはずもありません」と語っている。
「物流タイムス」という業界紙が、ユニオンのマイナス面をあげつらっている。11月18日の都労委にける尋問で引越社の井ノ口晃平副社長は、引越社と物流タイムスは全く関係がないと答えた。しかし掲載したものとは違う号について質問されていたとき、記者からの取材を受ける担当は自分だ、とも答えている。
引越社事件をドキュメンタリー監督の土屋トカチ氏が映画化する予定がある。そのためのカンパを要請している。問い合わせ先「blog白浜台映像事務所」
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