著者によれば『アドバイスしてはいけない 部下も組織も劇的にうまくいくコーチングの技術』(マイケル・バンゲイ・スタニエ 著、深町あおい 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の目的は、“コーチらしい行動ができる上司、リーダー、人物になる”こと。

それは、自分の「アドバイス・モンスター」を手なずけるという、単純でありながら難しい習慣を身につけることでもあるのだそうです。なにかとアドバイスしたがる自分のことを「アドバイス・モンスター」と表現するとは、なかなか悪くないセンス。

それができれば、相手に対してもう少し長く関心を持ち続け、すぐにアドバイスをするのではなく、ゆっくり時間をとろうと思うようになれるというのです。

そう、私たちはアドバイスをするのが大好きなのだ。誰かが話し出すやいなや、関心を持とうという意識は消え失せ、自分の中の「アドバイス・モンスター」が無意識のうちに顔を出して、両手をこすり合わせながらこう宣言する。「この話、私の力でぜひとも有意義にしてあげよう! さあ何を言おうか!」

これが、私が言う「アドバイスの罠」だ。アドバイスをする管理スタイルが標準と化している状態を指す。あなたもきっとこの罠にはまっているはずだ。(16ページより)

ところが、それらのアドバイスは役に立たないことのほうが多いようです。しかも全体像を把握できていない(ことに気づいていない)状態でのアドバイスは、聞く側のやる気を喪失させる可能性もあります。それは“結果を出せない職場”を生むことになり、組織全体の変革を妨げもするでしょう。

だとすれば、アドバイス・モンスターをなんとかする必要があります。そこでPART1「アドバイス・モンスターを手なずける」内のThe Advice Trap 02「アドバイス・モンスターをいかに手なずけるか」のなかから、「アドバイス・モンスター3つの顔」と、「アドバイス・モンスターを手なずけるための4ステップ」に焦点を当ててみたいと思います。

アドバイス・モンスター3つの顔 その1 教えたがり

著者によれば「教えたがり」は、アドバイス・モンスターが演じる、やかましくてわかりやすい人格。このモンスターはこちらに対し、「あなたは答えを示すために会社に雇われているのだ」と説くそう。

「答えを示せなければ、管理者として失格だ。答えを示すことでしか、あなたは付加価値を生み出せない。答えを出すことが、成功者として認められる唯一の道だ」と訴えてくるわけです。(46ページより)

観察メモ

・注目を集めるのが好き。

・権威、年功、分別、特権、「私が一番よくわかっている」という態度で着飾る。

・時間がなくて急を要するとき(実際、そのようなときが常である)に姿を表す。

・集団行動をする。会話の参加者全員が答えを出したがることもよくある。

・自分が一番よく知っている人間だと、あなたに思い込ませようとする。

(48ページより)

アドバイス・モンスター3つの顔 その2 助けたがり

アドバイス・モンスターがよく演じる2つ目の人格は「助けたがり」。「教えたがり」にくらべるとおとなしい印象がありますが、じつは広範囲に出没して悪影響を及ぼすのだといいます。

このモンスターは、「あなたがこの場をまとめなければ、すべてが失敗する」「あなたの仕事は、すべての人員、すべての状況、すべての結果に全責任を持つことだ」と訴えるそう。迷ったら(迷っていなくても)、「あなたが助けるように」と囁いてくるようです。(46ページより)

観察メモ

・平凡に見えて、「役に立っている」ふりをするのがうまい。

・特に対立が発生しそうなときに、うろつき回る。

・今にも燃え尽きそうな殉教者じみた空気を醸し出す。

・「被害者」の役割にいる人を見つけたときに最も奮い立つ。

・この組織で自分が一番責任感のある人間だと、あなたに思い込ませようとする。

(50ページより)

アドバイス・モンスター3つの顔 その3 コントロールしたがり

「コントロールしたがり」は、3つのうちでもっとも巧妙に動く人格。影の指揮者として、重みのあるやさしい口調で、「どんなときもその場を仕切ることが唯一の成功への道だ」とささやくわけです。

また、「他人を信じるな」「権力を誰かと分かつな」「指揮権を与えるな」「仕切りが少しでも甘くなれば、組織全体に災難が降りかかる」と吹き込むことも。(46ページより)

観察メモ

・常に存在するが、裏方にいて目立たず、巧みに操る。

・誇大妄想がある。

・権力に対して顕著な執着心があり、それを手放せなくなるときもある。

・人の力を引き出すエンパワーメントに対し、警戒心がある。

・混乱を防いでいるのは自分だけだと、あなたに思い込ませようとする。

(51ページより)

アドバイス・モンスターを手なずけるための4ステップ

ステップ1 きっかけはなにか

アドバイス・モンスターを手なずけるには、なにをきっかけにモンスターが始動し、暴れるのかを把握することが大切。自分の習性を変えるには、引き金を知る必要があるのです。

ステップ2 問題を認める

引き金になる人と状況がわかったら、自分のアドバイス・モンスターの行動を明らかにすることが可能に。このステップでは自分の問題行動を自ら認めなければならないので、少し居心地が悪くなるかも。しかし、非常に効果があるそうです。

ステップ3 ほうびと罰

ステップ2で明らかにした問題行動がもたらす利益(ほうび)とコスト(罰)を明確化させること。

問題とみなすものの利点を挙げるのは変だと感じるかもしれませんが、これらについて考えてみれば、もろくて短絡的で自己中心的で、「いまだけの成功」をもたらす利点が見つかるようです。

これらは「現在の自分」にとってこれまで何かしら役に立ったが、「将来の自分」にとっては障害になっている。だから、「罰」つまり「将来の自分」が支払う対価をはっきりさせ、一時的なほうびをはねのけるべきなのだ。(48ページより)

ステップ4 「将来の自分」最高!

「将来の自分」が得る利益を思い描けなければ、行動を変えるのは困難。そこで、思い描く「将来の自分」に向け、本当の意味でコミットするべきだということ。(56ページより)


アドバイスの罠から逃れ、アドバイス・モンスターを手なずけるのは、そう簡単なことではないでしょう。しかし本書を活用すれば、リーダーシップのあり方を永遠に変えることができると著者は述べています。リーダーシップの本質を把握するためにも、手にとってみてはいかがでしょうか。

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン