Popular Science:総合格闘技(MMA)は危険で暴力的だという風潮が定着しており、選手が顔から血を流しながらリングを去る場面もしばしば見られます。昨年、セレブでありチャンピオンでもあるRonda Rousey選手はラジオ出演の際、司会者に対して「見た目のきれいな女子選手には要注意」と話しています。彼女たちは実際には攻撃をくらってはいないからだそうです。しかし、カナダ・アルバータ大学の研究者グループが『Clinical Journal of Sport Medicine』誌に載せた最近の論文によれば、それよりも過酷なスポーツがボクシングだと言います。試合後に行われるメディカルチェックでそれぞれにもっとも多く見られるけがのタイプがその理由です。

論文で示されたデータは、2003年から2013年の間にカナダのエドモントンで試合をしたMMA選手1181人とボクサー550人のメディカルチェックの内容を集計したものです。試合後にけがをしていた割合はMMA選手が60%、ボクサーが50%でしたが、身体へのダメージがより大きかったのはボクサーの方で、それは負ったけがの種類によるものだと研究者グループは気付きました。

結果、ボクサーのけがの方が重傷でした。骨折、深刻な眼球の損傷、そして試合中に脳震とうを起こしたり、失神したりするなど頭部のけがが多かったのです。MMA選手でも頭にけがをしたり失神したりすることはありますが、ほとんどの場合は切り傷や打撲です。「総合格闘技で目にする血は鼻血や顔の切り傷で、それほど深刻でない場合が多いのですが、実際よりずっと重傷に見えます」とスポーツ医学の専門家で論文の筆者でもあるShelby Karpman氏はプレスリリースで述べています。

研究者グループはけがの種類が異なる理由についての見解は示していませんが、選手が着けているグローブの種類(ボクシングのグローブは厚手で詰め物が入っており、MMAのものは薄く、指までは覆っていない)が影響しているのではないかと専門家らは指摘しています。

けがが重傷になることから、前の試合でのけがが原因で出場停止となるのはボクサーの方が多いです。しかし、興味深いのは、MMA選手は非常に暴力的なアスリートであると認識されているため、医学的な配慮を十分に受けていないということです。つまり、MMAでは負傷しても報告されていない場合がある、または重傷度がきちんと把握されていないということになります。論文ではMMA選手の負傷件数はボクサーの2倍であるにもかかわらず、です。

現代において頭部の損傷を語る場合は、変性脳症の1種である慢性進行性外傷性脳症(CTE)の議論につながります。研究者の間では、プロのフットボール選手が繰り返し頭部に外傷を受けることとの関連性がわかっています。ボクサーのCTEの発生頻度に関して長期にわたるデータは乏しく、MMA選手に関する研究はそれよりわずかに進んでいるのが現状です。そして頭部の外傷はボクシングとMMAの両者で多く発生しています。このような研究論文は、コンタクトスポーツ(人と接触するスポーツ)におけるけがが身体にどのような影響を及ぼすのか、ということにさらなる課題を与え、また長期にわたる研究の必要性も浮き彫りにしています。

BOXING IS MORE BRUTAL THAN MIXED MARTIAL ARTS | Popular Science

Alexandra Ossola(訳:コニャック

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