夏といえば、暑い、アウトドアが楽しめる、友だちや家族と過ごせる、などがイメージとして浮かぶでしょう。しかし夏は、少し立ち止まってゆっくりと過ごすのにもいい季節です。時間があると、サマースクールやキャンプに参加したり、別の仕事をしてみたり、秋以降の準備をしたりと、生産性や仕事のことを考えてしまう人も多いです。そんなことは止めて、のんびりとした夏休みを過ごしてみてはいかがでしょうか。夏休みの間に本当に"休む"のは大事なことです。

休暇を取ることの重要性は誰でも知っています。たとえいい時間が過ごせなくても、大事なことには間違いありません。学生の場合、学校から離れてキャンプに行ったり、アルバイトをしたり、次の学期や受験に向けて勉強をするなど、夏は貴重な時間になっていると思います。どれもすばらしいことですが、ただのんびりするのも同じくらい大事なことです。夏休みは、昔から旅行に行ったり創造的に過ごすものなのです。

なぜのんびりするのが大事なのか?

人生や日々の生活には、何もしないのんびりする時間も必要です。のんびりする時間は、やらなければならない仕事をするのではなく、自分が本当に興味のあるものを探求するいい機会です。何もしない時間に、これまで学んだことや経験したことを頭の中で整理できます。これは創造性にとって欠かせないことです。毎日予定が詰まっていると、立ち止まって問題の解決法を考えたり、新しいアイデアを思いつくような余裕はありません。

何もしない時間があると行き先を見失ったように感じますが、同時にもっと意味のある活動を見つけようという気になることが、アイルランドのリムリック大学の研究でわかりました。「The Journal of Neuroscience(神経科学ジャーナル)」に載っていた研究によると、ぼんやりしたり物思いにふけったりすることも、長期的に見て精神的な健康を維持したり、能力を向上させたりするのに、とても重要な役割を果たすことがわかっています。

のんびりする時間といえば、大抵は仕事の合間の休憩時間や仕事終わりの一服、もしくは週末や数日間の休みについて語られることが多いです。それも大事なことですが、可能であればもっと長期間の休暇を取りましょう。

夏は創造性を豊かにする季節

大学生の頃、年配の教授から「夏休みの間に、学校やカリキュラムから離れる時間を取りなさい」とよく言われていました。私が勉強で頭ひとつ抜け出したいのだと言うと、その教授は「夏は頭の中を整理するのにピッタリの季節だから」と返されました。

加えて、勉強してもいいけれど、何もしない時間はつくった方がいいと言われました。アルフレッド・テニスン、ジョン・キーツ、ブロンテ姉妹、エミリー・ディキンソン、ウィリアム・シェイクスピアなど夏のイキイキとした美しさを綴っている、創造的な精神を有する作品はどれも世代を超えて愛されていること、夏がいかに創造性を豊かにする特別な季節であるかということを説明してくれました。

子どもの頃、夏が来るとどんな気持ちだったかを思い出してみてください。やりたいことをする時間はいくらでもあって、何でもできるような気がしていませんでしたか? 子どもがいる人は、かつての自分が「仲間より頭ひとつ抜け出すために使いたい」と思っていたとしても、そんなワクワクするような気持ちを子どもにも味あわせてあげてください。子どもの頃、若い頃に、そんな風に夏を過ごせなかった人は、夏の目標を立てたり、この夏のやりたいことリストをつくったり、夏休みらしい気分を味わうために日常生活から一歩踏み出したりして、自分の夏を取り戻しましょう。

リストにあげる目標は、「もっとリラックスする」みたいな漠然としたものでも、「暑い日に縁側でミントジュレップ(ミント風味のシロップとバーボンを注いだカクテル)を飲む」みたいな具体的なものでも、何でもいいです。できるだけ具体的で実行できそうなもので、後で思い返すと楽しそうなものにすれば、すべてうまくいきます。

また、自分のペースでゆっくりと時間をかけ、楽しくて気持ちが豊かになるようなことをしましょう。読みたかった本を呼んだり、見てみたかったバンドのライブに行ったり、今まで行ったことのない場所に旅行したり、美術館に行くのもいいでしょう。懐かしい友だちに会いたいと思うかもしれません。

大事なことはただひとつ、目標には仕事を入れないこと。仕事をある程度楽しくできるとしても、生産性に関わるようなことは入れないでください。計画を立てなければならないことであっても、自分の視野を広げ、頭を空っぽにするようなことに時間を使いましょう。

実は、想像以上に難しい

ここまでを読んで、簡単にできそうだと思っているかもしれません。ゆっくりする時間や、夏に時間をかけて何かをやり遂げることが必要な人はたくさんいます。ゆっくりする時間を確保するために、子どもをサマーキャンプに送り出さなければならなくなる人もいるかもしれません。または、やりくりするためにアルバイトをしなければならなかったり、学費の支払いが遅れる人もいるかもしれません。

この手のアドバイスは、数週間の夏季休暇が保証されている会社員のためのものだと思うかもしれませんが、そうではありません。数週間の休みを太陽が降り注ぐビーチで過ごすことが大事なのではなく(そうしたい人がそうできれば最高ですが)、目的もなくただのんびりとリラックスして、頭を空っぽにする時間を捻出することが大事なのです。

目的は、仕事がもっとはかどるようにするために休憩したり、頭の中を"デフラグ"するために瞑想したりするのと同じです。大きな違いは、リラックスだけなど、ひとつのことに集中するのではなく、夏の自由時間を夏の持つあらゆるすばらしいものを利用する有意義な機会にすることです。これまでやろうとしなかったことの面白さや新しい興味を発見したり、他の季節にはできないことをする機会にもなります。

結局、ほとんどの職場で、夏になると誰もが長期休暇をとりますが、どこに住んでいても、どんなコミュニティに所属していても、アウトドアで遊んだりイベントに行ったり、みんなで何かをする計画を立ててばかりいます。特に計画を立てていなくても、何となく周りに流されたり、周りの友だちと遊んでいたりするのではないでしょうか。

仕事から抜け出せなかったり、キャンプに行かなければならなかったり、研究を続けなければならなかったりしても、自分だけの何もしない時間や、自分の興味を追求する時間をつくりましょう。学校や仕事に戻った時に、リフレッシュして、より集中できるようになります。誰もが自分だけの夏の思い出ができて、今よりもっと幸せになれるはずです。

Alan Henry(原文/訳:的野裕子)

Photo by elenabsi (Shutterstock).
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