持ち物の大半がガラクタという人は多いのではないでしょうか。私もそうだったのですが、ここ数年で州をまたぐ引っ越しを2回経験して、持ち物を減らすことの価値を知りました。そこで得た教訓をシェアします。
教訓1:持ち物のほとんどが役に立たない物だった
5年も同じ家に住んでいると、ガラクタが増えます。ひとつの目的にしか使えない調理器具、読み返すことのない本、聞きもしないレコード、今住んでいる場所の気候には合わない服、もう持っていない自転車用の部品、それらのガラクタが"必要になったとき"のためにしまっておくための、家具やケースの数々...
そんな中、今から2年前にデンバーからシアトルに引っ越したとき、たくさんの物を売るかあげるかして手放しました。古くなっていたので、新天地に行ってから新品を買うつもりだったのです。ところが、シアトルに来てみて気がつきました。手放した物のほとんどが、実はいらない物なのではないかと。
その後、シアトル市内で2回の引っ越しを経たのち、再び州を越えてロサンゼルスにやってきました。持ち物のすべてが定期的に使う物だけになっていたため、今回の引っ越しでは、荷造りに2時間、トラック積み込みに1時間しかかかりませんでした。
私のケースでは引っ越しがきっかけで物を減らしたわけですが、毎年の衣替えをきっかけに物を減らしてもいいのではないかと思います。私の場合、使わなそうなものは物置に1か月しまいます。1か月たってもそこに残っているものは、中身を見ずに中古屋さんに持っていきます。あとで「あれがない!」と困ったことは、ほとんどありません。
教訓2:使う予定があるものしか買わない
買い物をするとき、「今」に縛られてしまうことがよくあります。お店で何かを手に取った瞬間、今すぐ使い道が思い浮かぶものを、ほしいと思ってしまうのです。そんな衝動買いを抑えるため、ここ数年で考え方を変え、買い物をするときにはこう考えることにしました。
「これ、明日どうやって使おう?」
答えが思いつかないなら、それは不要だということです。それに、1回しか使わないものもたくさんあります。そんな時は、購入よりもレンタルを考えた方がいいでしょう。
最近ではインターネットでの買い物も増えました。ネットショッピングのメリットは、届くまでに時間がかかること。Amazonは当日配送を始めましたが、それでも今この瞬間に手に入るわけではありません。そこで、上記と同様、「2日たってもこれがほしいか?」と自問するのが効果的です。答えがYesなら買えばいいですし、Noならやめましょう。
この考え方、あたりまえのようでいて、できている人はあまり多くありません。私はかつて、ブレンダーとフードプロセッサーを持っていたことがありました。どっちもほとんど使わずに、ただ収納スペースを占拠している状態でした。そこで思い切ってブレンダ―を捨てたところ、フードプロセッサーだけで十分だったのです。両方が必要な人もいるかもしれませんが、ここで言いたいのは、実際に使うものだけを残し、あとは手放した方がいいということです。
私の使うものは、あなたの使うものとは違います。だから、誰にでも共通のツールセットなどというものは存在しません。私の場合、「実際に必要かどうか」ではなく、「必要なはず」という考えで持っていたものがたくさんありました。そこに気がついてから、手放す物と残す物の判断がしやすくなりました。
教訓3:耐久性は大事だけど、そうでない場合もある
IKEAの家具は長持ちしません。だからといって、不便なわけでもありません。引っ越しが多いライフステージにおいては、高価な家具を持つべきではないのです。そこに気がついた私は、何が今の自分に大切かを考えてから、物を選ぶことにしています。
そのため、今の私が大切にしている家具は数えるほどしかありません。お気に入りの小さなカウチとコーヒーテーブル。自作のデスクは、壊れるまで手放すつもりはありません。オフィスチェアは、一生持つようないい物を買いました。このように、大切な物の耐久性には喜んでお金を払いますが、それ以外の物は、すぐにでも交換可能な物ばかり。本棚は、IKEAの適当なものを選んでいます。テレビスタンドは、安くて大きさが合えば何でも構いません。
基本は、過去記事で紹介した「コンフォート原則」と同じです。つまり、「毎日長時間使うもの」にお金をかけること。そこにもう一つ、「引っ越しても持っていきたいか?」という質問を加えてみてください。答えが「No」なら、そんなにお金をかける必要はないでしょう。このシンプルな質問のおかげで、無駄遣いがずいぶん減りました。
教訓4:ほぼすべてのものが修理可能である
今年の初めごろ、私は新しい自転車を買おうとしていました。持っていた自転車が古くなり、新しいおもちゃがほしくなったのです(こんな気持ち、きっと誰にでもあるはずです)。でも、数千ドルの買い物をする前に思い直し、古い自転車を修理することにしました。修理代は400ドル程度で済み、とても満足のいく結果になりました。
このように、新品を買うよりも修理した方がいいことは多いものです。私が2009年に買ったiMacは、ハードドライブとビデオカードを交換して、今でも現役です。Rolandのキーボードも、ボロボロになるまで使いましたが、修理して使っています。これは節約のためでもありますが、それ以外にも理由があります。というのも、最近では何かを買い替えるとき、以下の質問を自問することにしているのです。
- 今使っている物に対する不満は何か?
- その不満を自分でどうにかできないか?
- 修理にはどれだけの時間とお金がかかるのか?
- 新品を買う方が安くて簡単か?
これらの質問をしてみると、いま持っている物で十分なことが多く、自力で修理できることも多々あります。
教訓5:持ち物が少ないほど、好きな物を使う時間が長くなる
時間の使い道はたくさんあります。私はオタクなので、マンガ、ゲーム、自転車、テクノロジー、小説、音楽、作曲、執筆、映画などなど、たくさんの分野の専門家であることを夢想しています。おそらく、家の中にいても何年かは退屈せずに生きられるでしょう。でも、手を広げすぎて薄っぺらな自分に、ときどき嫌気がさします。あまりにも多くのことに入れ込みすぎて、どれひとつとして集中できていないのです。そして、それらの物が、アパートを占拠している。
そこで、思い切って手放すことにしました。たとえば、大好きなグラフィック小説も、1冊読み終えるまでは次を買わないというルールを決めました。ほかにも、本、映画、ゲームなど、すべてにそのルールを適用しています。これは、保存場所や引っ越しのためだけではありません。これらの物がデジタルで入手できるようになった昨今、状況はさらに悪化しています。目に見えないので、注意していないと、持っていることすら忘れてしまうのです。つまり、1回も使わない物にお金を払っていることになってしまいます。
エンターテイメント系の買い物を減らした結果、好きなことに費やす時間の大切さを学びました。ひとつのゲームをやりきるまでは、次を買いません。次を読まなきゃと急ぐ必要がないので、1冊の本を読みこむことができます。おかげで、選択肢に追われることなく、それでいて退屈しない状態を保てています。プレイするゲームの数や読むマンガの数は減りましたが、ひとつひとつに費やす時間が増えた分、得られる経験が豊かになったと思います。
教訓6:ガラクタがないと片付けが楽ちん
シアトルのアパートに人が来ると、必ず、「今日のために掃除をしたの?」と聞かれたものです。でも、実際は掃除などしていません。
持ち物を必要な物だけに限定してからというもの、すべての物の定位置が決まり、アパートがいつでも片付いている状態になりました。しかも、持ち物のすべてを定期的に使用するため、埃がたまることもなくなりました。
ここで得られる教訓は、いたってシンプル。収納する場所がなければ、それはいらないということ。おかげで、いつでも家の中が片付いています。きれいなアパートは本当に落ち着きますし、急にお客さんが来ることになっても、慌てて片づける必要がありません。
一連の引っ越しで得た最大の教訓は、とても単純なことでした。今ある物に感謝して、使う物だけを買う。それを意識するだけで、ガラクタはほぼなくなり、財布にはバケーションのためのお金が余るようになるのです。
Thorin Klosowski(原文/訳:堀込泰三)
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