Inc.:リオデジャネイロで開催された「TEDGlobal 2014」では、内容の善し悪しに関わらずアイデアがいかに世界に広がっていくかがフォーカスされました。

この国際的なイノベーション・カンファレンスに参加するために、南米まで飛んで行けなかった人は、オンラインのTEDトークを見て、インスピレーションをもらいましょう。

自らの富を贈ることが最高の喜び ― ビルとメリンダ・ゲイツ

ビルとメリンダのゲイツ夫妻は、1993年のアフリカ旅行で、何に本当の価値があるのかに気づいたそうです。過酷な貧困を目の当たりにした彼らは、自分たちの財産の95%を寄付することに決めました。

このスーパー慈善家のふたりが語ったところによると、世界中の何百万人の子どもたちを飢えや病気から救うために、ビルの知見と、メリンダの直感が、よい組み合わせとなっているそうです。

ゲイツ夫妻は、ほかのビジネスリーダーや裕福な起業家たちにも同じ決断をするよう説得しています。ウォーレン・バフェット氏は最近、資産の80%をゲイツ財団に寄付しました。

「彼らは自らビジネスを立ち上げ、創造力を元にすごいアイデアを実現した人たちです。彼らのアイデアと能力で慈善活動を起こせば、世界を変えられるでしょう」とメリンダ・ゲイツ氏は話しています。

「あと一歩」を大事にしよう ― サラ・ルイス

サラ・ルイス氏は、画家やアーチェリーの射手、北極探検家を例に出して、「あと一歩」の気持ち、つまり、失敗してもゴールを見失わないことの大切さを説きました。

「熟達は到達にあるのではなく、その手を伸ばすことにあります。いまの自分と、なりたい自分との差を縮めようと、求め続けることにあるのです」

ルイス氏の「あと一歩」理論は、ミケランジェロからフランツ・カフカまで、偉大な文化の担い手たちの原動力であると説明しています。成功に届かなかった体験が、リーダーや競争相手たちが再挑戦に向かう集中力と忍耐力を与えました。「あと一歩」の気持ちが、私たちをより充実した人生に導いてくれるのです。

インターネットの信頼を取り戻すために ― エドワード・スノーデン

著名な内部告発者、エドワード・スノーデン氏が「テレプレゼンス・ロボット」を使って、今年のTEDカンファレンスに登壇しました。スノーデン氏は、市民はデータのプライバシーの権利を持っているはずなのに、インターネット企業たちは、NSA(アメリカ国家安全保障局)の代わりにデータを収集させられていると率直に語りました。

「なかには抵抗する企業もいます。Yahoo!もそのひとつだと信じていますが、彼らが法廷で挑んでもすべて敗北していたはずです。なぜなら、開かれた法廷で裁判が行われないからです」

スノーデン氏は語ります。「彼らはすべて秘密法廷で裁かれました。自由でオープンなインターネットにおける米国企業の役割を、こうした場で決められたくはありません」

スノーデン氏は、いくつかのNSAの戦術とプログラムについて解説しました。その一部は議会にも明かされていないものでした。彼はまた、「何も悪いことをしていないのなら、何も心配することはない」という決まり文句に対して異を唱え、正当な権利を手放すべきではないと主張しました。

「私たちはプライバシーの権利を持っています。他者や政府機関を信頼でき、誰にも監視されず、通信の秘密が守られていると信じられること。それらは手放すことのできない魅力的すぎるものです」

スノーデン氏のトークの後、TEDの主催者は、NSAの副長官リチャード・レジェット氏に反論するチャンスを与えました。

人生を表すのは、履歴書と追悼文のどちらに? ― デイビット・ブルックス

外的成功と内的価値の間に横たわる本質的な対立に触れながら、ニュヨークタイムズのコラムニストで作家のデイビット・ブルックス氏は、履歴書よりも追悼文のほうが大切なのだろうか? と問いかけました。

「外的論理とは経済的なもので、投資は成果に、リスクは報酬に繋がります。内的側面は道徳的論理で逆説的である事がよくあります。得るためには与える必要がある」とブルック氏。

社会は履歴書に報酬を与えます。ブルック氏は、「人生の価値は利益で計ることはできない」と言います。葬式で履歴書を読み上げないのはこのためです。

Googleが向かう未来 ― ラリー・ペイジ

Googleが次に何をしようとしているのか知りたいなら、このTEDトークは必見です。Googleの共同創設者ラリー・ペイジ氏は、チャーリー・ローズ氏と一緒に、この検索の巨人が向かう次のステップについて議論しました。語られたテーマは、人工知能を備えたスマートフォン、気球によるWi-Fiネットワーク、自動運転カー、そして、セキュリティやプライバシーといった喫緊の話題についてです。

「聞いたこともない政府の活動から、私たちが皆さんを守らねばならないとしたら、民主主義など成り立ちませんよ」とペイジ氏は、エドワード・スノーデン氏に言及しながら話しました。

ペイジ氏は、インターネットにおけるプライバシーが重要である一方、「しかるべき人々と、しかるべき方法で」情報共有することで、どれほどの恩恵が得られるかを指摘しています。例えば、人々の医療記録が匿名で共有され、研究者たちが利用できるようになれば、「もしそうなったら、毎年10万人もの命を救えるでしょう」。

あなたの、何十億人のための巨大なウェブデザインの方法 ― マーガレット・グールド・スチュワート

Facebookの「いいね」ボタンは、一日に220億回見られており、これまでにデザインされたアイコンの中で、最も見られているもののひとつです。Facebookのプロダクトデザインのディレクターであるマーガレット・グールド・スチュワート氏は、世界人口の6分の1に見られているボタンのデザインについて語りました。

私たちは膨大なデータにもとづいて決断を下します。とはいえ、反復、研究、テスト、直感、情緒といった要素も重視します。つまり、それはアートであり科学なのです」と、自ら「人間性デザイン入門」の発案者であることを自認する彼女は話します。

「データ分析はデザイン的直感の代わりにはなりません。データは良いデザインを素晴らしいものにはできますが、悪いデザインを良くすることはできません」

彼女はまた、同社がどのように「変化への抵抗」に対処したかを語りました。小さな変更が激しい怒りを買うこともあります。

「どんなに正しいことをしようとしても、お決まりのビデオ抗議や怒りのメール、さらには、セキュリティチェックが必要な小包が大量に送られて来ます」とスチュワート氏。「しかし、忘れてはいけないのは、ユーザーがこうした変更に非常に敏感だということです。なぜなら、これらの製品、機能が彼らにとって本当に大切なものだからです」

なぜ優れたリーダーの元では安心を感じられるのか ― サイモン・シネック

リーダーシップの専門家サイモン・シネック氏は、「Start With Why」と「Leaders Eat Last」の2冊の本を書いています。どちらも成功するチームマネジメントに関する本です。このTEDトークでは、人間が根本的に持っている安心への欲求について語っています。

シネック氏は、ビジネスの世界は危険に満ちてると言います。不安定な経済状況、流動的な株式市場、貪欲なライバル企業。リーダーはサバイバルの姿勢を打ち出す必要に迫られています。

「リーダーが、組織内の人々に安全な生活を与えることを優先するよう心がけ、自分たちの安楽や目先の利益を犠牲にして、人々が安心感と集団に属している実感を得られるようにすれば、素晴らしい結果が生まれます」とシネック氏。

成功と失敗と創り続ける力について ― エリザベス・ギルバート

「食べて、祈って、恋をして」は、成功の代名詞になりました。出版されるとすぐにベストセラーになり、ジュリア・ロバーツが主演する映画にもなりました。ところがその直後、著者のエリザベス・ギルバート氏は行き詰まりを感じることになります。自分でつくりだしたプレッシャーがあまりにキツく、もう二度と本を書けないとまで思いつめます。

「創造力を維持する方法を見つけなければなりませんでした」と彼女。

「そして、ある時ひらめきがやってきました。予想外の場所から。それは、若いころに経験から学んだ、失敗しても創造力を失わない方法の中にあったのです」

ギルバート氏は、駆け出しのころ、なかなか本が出版できずに苦しんでいる時代を思い出しました。6年もの間、拒否の手紙を受け取り続けても、彼女の創作への情熱は衰えませんでした。

「書いて失敗する辛さより、書くことへの愛情が勝っていました。自分のエゴよりも書くことのほうが大切だったのです。そうやって乗り切ったのです」とこの作家は話しています。

ウェブのための大憲章 ― ティム・バーナード・リー

ワールド・ワイド・ウェブが発明されて25年、ティム・バーナード・リー氏はTEDカンファレンスでその未来について語りました。フェローTEDトーカーのラリー・ペイジ氏やエドワード・スノーデン氏と同じく、リー氏も検閲、プライバシー、セキュリティの問題について懸念を示しました。

また、リー氏はインターネットユーザーたちに、ウェブの未来のために戦うよう呼びかけ、自身のビジョンを語りました。

「細分化されていないウェブが私の理想です。最近の情報監視に対抗する基盤になるものです。また、プライバシーが確保されつつ、保健医療に活用できるもの。イノベーションの強力な基盤となるもの。何か厄介な出来事、例えば災害が起きた時に、迅速に何かを作り上げ救援活動の助けとなるものです」

インターネットの免疫システム ― ケレン・エラザリ:ハッカー

サイバーパンクから政治活動まで、社会におけるハッカーの役割は、近年、劇的に変化しました。サイバーセキュリティの専門家であるケレン・エラザリ氏は、この変化を説明するとともに、ハッカーとはデジタルワールドの免疫システムなのだと主張しました。ハッカーはシステムの弱点を暴露し、システムをより強くするために存在するのです。

「解決策を教えるために、脅威をデモしなければならないときもあります」

エラザリ氏は、ハッカーとは市民の権利や政府の説明責任、インターネットの自由のために戦う十字軍なのだと訴えています。

Top 10 TED Talks for Entrepreneurs in 2014|Inc.

Oscar Raymundo(訳:伊藤貴之)

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