身につける服でも仕事のプレゼンテーションでも、何かの見た目を良くしたいのなら、色は大切な要素です。ですが、オレンジと青が完璧な組み合わせだなんて、誰もが直感的に知っているわけではありません。自分の直感を信じられないなら、色彩理論の基本を理解して、それをもとに正しい色を選んでみてはどうでしょうか。
色相環を知る
上の図は基本的な色相環で、色を選ぶ際の指針になるものです。学校で見たことがあるかもしれませんが、忘れている方のために、簡単におさらいしておきましょう。
赤、青、黄色の3色が原色です。赤と黄色を混ぜると橙になります。青と黄色を混ぜると緑になります。赤と青を混ぜると紫になります。そのため、橙、緑、紫は二次色と呼ばれています。赤紫や青紫などの三次色は、原色と二次色を混ぜたものです。
すべての色には明色(明度の高い色)と暗色(明度の低い色)があります。明色は元の色に白を混ぜてできる色、暗色は黒を混ぜてできる色です。けれども一般に、基本的な配色では明色や暗色を気にする必要がないようです。その点について、「Color Wheel Pro」はこんな風に説明しています。
色彩理論によれば、色相環上で向かい合う2色か、色相環上で等間隔に三角形を形成する3色か、長方形を形成する4色(実際には、色相環上で向かい合う色を2対)を使えば、調和のとれた色の組み合わせになります。調和のとれた色の組み合わせは、カラースキーム(配色)と呼ばれます。「色彩調和」という用語が使われることもあります。色相環のどこをとっても、カラースキームでは調和が保たれます。
色相環には、カラースキームをもっと良く理解するために覚えておくべきもうひとつの分類があります。それが暖色と寒色です。どちらにも、それぞれ違う感情を伝える効果があります。暖色はエネルギーや喜び(個人的なメッセージに最適)を表し、寒色は冷静さや秩序(オフィスでの使用に最適)を表します。下に示す「Kissmetrics」の図のように色相環を分割すれば、どの色が暖色でどの色が寒色なのかが簡単にわかります。
基本のカラースキームをマスターする
色相環をもとにした色の組み合わせには、いくつかの基本的なルールがあります。どれもとてもシンプルなルールです。
補色色相配色は、色相環上で向かい合う2色の組み合わせです。例えば、青と橙、赤と緑などがあります。この配色では、はっきりとしたコントラストが生まれます。ですから、何かを目立たせたい場合に使うと良いでしょう。一方の色を背景として、もう一方の色をアクセントとして使うのが理想です。または、ここで明色と暗色を活用することもできます。明度の高い青と明度の低い橙の対比は、その一例です。
分裂補色配色は、3つの色を使うカラースキームで、1つの色と、その補色と隣り合う2つの色が使われます。例えば、青、黄みの橙、赤みの橙の組み合わせは分裂補色配色です。このカラースキームは失敗しにくいため、初心者にぴったりです。「Tiger Color」によれば、失敗しにくい理由は、コントラストの強い色を使うものの、補色色相配色ほど正反対の色ではないからだとか。
類似色相配色では、色相環上で隣り合う3色を使います。例えば、橙、黄みの橙、黄色といった組み合わせです。類似色相配色の場合、複数の色相を使うとうるさくなるので、それは避けるほうが良いでしょう。そのかわりに、類似色の明度の違いを重視しましょう。また、Color Wheel Proのアドバイスによれば、このカラースキームでは、暖色と寒色の組み合わせは避けるほうが良いそうです。
3色配色は、色相環上で等間隔の位置にある3色を使うカラースキーム。例えば、赤、黄色、青の組み合わせが該当します。3色配色もコントラストの強いカラースキームですが、補色色相配色よりもバランスがとれています。「Decor Love」によれば、うまく組み合わせるコツは、1つの色をメインに使って、残りの2色でアクセントをつけることだとか。
4色配色または二重補色色相配色では、補色色相配色にあたる2色の組み合わせを2対で4つの色を使います。例えば、青と橙に黄色と紫を組み合わせます。これはバランスをとるのがもっとも難しいカラースキームです。「TheArtClasses」では次のように説明しています。
ほかのどのカラースキームよりも色のバラエティは広がりますが、4つの色すべてを均等に使うと、アンバランスに見えてしまうおそれがあります。ですから、1色を選んでメインの色として使うか、暗めの色を使うべきです。純色を均等に使うのは避けましょう。
モノトーン配色で黒と白の使い方を理解する
基本的なカラースキームを理解したら、明色と暗色を活用して、さらに上級のカラースキームを目指しましょう。すでにお話ししたように、明色は純色に白を混ぜてできる色、暗色は色相に黒を混ぜてできる色です。また、白や黒を混ぜる割合次第で、真っ白から真っ黒までさまざまな色のバリエーションが作れます。明色と暗色のほか、濁色もあります。これは純色に灰色を混ぜてできる色です。
黒や白を混ぜた色は「モノトーン配色」に使われます。モノトーン配色は、さらに有彩色のモノトーンと無彩色のモノトーンに分かれます。「Colors On The Web」が、その区別をわかりやすく説明しています。
有彩色のモノトーン有彩色のモノトーン配色とは、1つの純色と、その色を元にした明色と暗色、濁色のバリエーションだけで構成されるカラースキームです。ある色の純色と明色、暗色のバリエーションを使う組み合わせは、必ずうまくいきます。ただし、多くの場合、全体を1色のモノトーン配色でまとめるのはおすすめできません。単調になってしまうおそれがあるからです。ですが、それを純粋な白や黒と組み合わせるのは効果的です。
無彩色のモノトーン無彩色のモノトーン配色とは、黒から白までの色味のない色だけで構成される特殊なカラースキームです。こういう配色は効果的ですが、味気ない印象を与えやすいという欠点もあります。無彩色のモノトーン配色に、1色だけ鮮やかな色でアクセントを加えれば、とても大きな効果が得られます。
人気の高いカラーパレットやアプリを使う
色の組み合わせの基礎がわかったからといって、それをうまく使いこなせるとは限りません。とはいえ、何事でもそうですが、実は簡単な抜け道があるのです。
話術のエキスパートZach Holman氏のアドバイスによれば、「ColourLovers」のようなサイトで、デザイナーがすすめるカラーパレットを参考にすると良いそうです。ColourLoversでは人気の高い色の組み合わせが提案されているので、自分のニーズに合ったものを手軽に採り入れることができます。
ゼロから始める時にはこの方法が役に立ちますが、使う予定の色がすでにあるけれど、それを使った補色色相配色や3色配色がわからない場合にはどうすれば良いのでしょうか? そんな時には、Android用アプリ『SwatchMatic』を使いましょう。あなたがカメラを向けた(写真を撮る必要はありません)色を認識し、色相環の基本理論をもとに、その色に合う色を提案してくれます。
iPhoneでは同様のアプリが見つかりませんでしたが、『ColorSnap』は役に立ちます。この場合は写真を撮る必要がありますが、いったん写真を撮ってしまえば、その中にあるさまざまな色をアプリが認識してくれます。任意の色をタップすれば、アプリを製作した塗料メーカーSherwin Williamsが提供している色の中から、選択した色にマッチする色のパレットが表示されます。この手順を無視して、パレットだけを参考として使うこともできます。
最後に、「Color Matters」のアドバイスを紹介しましょう。それによれば、常に色相環を使わなければいけないわけではなく、自然や身の回りの物から着想を得ても良いのだとか。
色の調和を考える際に、申し分のない出発点となるのが「自然」です。(自然の草花になぞらえてデザインすれば)赤、黄色、緑の組み合わせは、それが色彩調和の公式に則っているかどうかに関係なく、調和のとれたデザインを生みます。
毎日の生活に色彩理論を応用する
さて、色彩理論の基本的な考え方はおわかりいただけたと思いますが、毎日の生活のなかで、それがどんな意味を持つのでしょうか? 基本的には、色彩理論のコンセプトを理解していれば、何かの見た目を良くしたい時に、どうすれば良いかがわかります。
よくある応用例が、あなたが身につける服です。世の中には、どんな時でもうまい着こなしができる人もいれば、調和せずに互いにケンカする服を組み合わせてしまう人もいます。色相環をプリントアウトして、洋服ダンスの扉に貼りつけておきましょう。次に服を決める時には、まず服を1つ選んで、色相環を参考にしながら、クローゼットにあるどの色を組み合わせれば一番引き立つかを考えましょう。また、暖色と寒色の理論を活用して、自分の伝えたい感情を表現してみるのも良いでしょう。もちろん、色はうまい着こなしをするための一要素にすぎません。ファッション系ブログ「Kinowear」は、色を利用した着こなしについて、いくつかのアドバイスをしています。
一般的な経験則からいえば、4色以上を使ったコーディネートはやめたほうが良いでしょう。自分の肌の色や明るさに合った色を選ぶこと。さまざまな色を肌にあててみて、自分に一番似合う色合いを把握すると良いでしょう。それから、人の意見に耳を傾けてください。クリスマス間近でもない限り、赤と緑のホリデーカラーは絶対に使わないこと。黄色のような鮮やかな色にグレー系統の色を合わせるのも避けましょう。
ファッションだけでなく、色彩理論はオフィスでも役立ちます。例えば、就職活動の際に履歴書を華やかにもできるし、人目を引くプレゼンテーションやスライドをつくることもできます。この場合も、基本原則は、使う色を3色以下にとどめること。また、このカラー心理チャートをチェックして、自分の選んだ色がどんなムードを醸し出すかを知っておきましょう。それから、忘れてはいけないのは、デジタルプロジェクターで表示されるということ。ですから、それに適した色を選ぶ必要があります。Holman氏はこんな風に指摘しています。
私はたいてい、プロジェクターできれいに表示される鮮やかな配色を選びます。つまり、コントラストの強い色の組み合わせです。例えば、暗い色を1つ、明るい色を1つ、アクセントになる色を1つ、といった具合です。そうすれば、暗い色と明るい色が重なっても、講演会場の後方から読めます。
そしてもちろん、家や家具を塗り替えたい場合にも、色彩理論がおおいに役立ちます。正しい色の選択を手伝ってくれるウェブサイトはたくさんありますし、その道のプロも数多くいますが、「Apartment Therapy」が教える3つのポイントは、どんな場合でも覚えておく価値があるでしょう。
覚えておくべき3つのルール:
- 1部屋の中に2つ以上の色があってもかまいませんが、その方向性でいく場合、最大でも3色までにしておくこと。派手な色を2色使うなら、目を休ませるために、3色目は無彩色にすること。
- 色を選ぶ際には、まず一番派手な色から選び、その色を念頭に置いてほかの色を選ぶこと。
- 怖がってはいけません! 塗装は永久不変のものではありません。いつでも変えられます。
もちろん、色彩理論の活用法は、ここで紹介したものに限りません。色とその組み合わせは、生活のさまざまな場面で頻繁に登場します。色の基本を知っておけば、あなたの目にもほかの人の目にも魅力的に映る組み合わせを作れるはずです。
Mihir Patkar(原文/訳:梅田智世、吉武稔夫/ガリレオ)
Photo by Nemo, Pong Suwan (Shutterstock), Kissmetrics, Operation Write Home, Tiger Color, Emily Hildebrand.