いつか上司に昇給の相談をしたい...と内心で期待している人は少なくないでしょう。

米国労働省労働統計局の発表によると、アメリカでは2012年から13年にかけて、平均報酬が1.9パーセント上昇しました。エグゼクティブ人材紹介企業「Salveson Stetson Group」は、転職したシニアエグゼクティブは、平均して17パーセント報酬が上昇したという結果を発表しています。

今こそ、昇給の相談を会社にしてみたいという方。自信をもって、上司に昇給の相談を切り出す方法をご紹介しましょう。どれくらいの昇給を、どのタイミングで相談すべきかといった点を説明します。

昇給はどれくらいの頻度で期待していいもの?

昇給は通常、年に一度の頻度で認められています。ですが、それも景気の状態や、その業界における人材需給のバランスによります。たとえば、金融やテック業界といった人材獲得の競争の激しい業界では、昇給にも寛大です。

ブログ「Ask a Manager blog」の筆者であるアリソン・グリーン氏は「従来は、年に一度の自動昇給が一般的でしたが、景気が急激に落ち込んだあとは、それも当たり前ではなくなりました。現在は、従業員自身が自ら昇給の相談をしなければならなくなったのです」と語ります。

一般的に、通常よりも多い頻度の昇給が可能なケースは3つあります。まず、突出した業績を出しており、なぜ昇給に値するのかを説明できる確固とした実績がある場合。次に、テック業界のように、優秀なスタッフを確保するニーズが非常に高い業界にいる場合。最後に、小売業やレストランの接客業で働いている場合です。こうした業界は、半年ごとに昇給があるケースが多いです。昇給の程度は微々たるものですが。

昇給を切り出すタイミングはいつがベスト?

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よく言われることですが、タイミングがすべてです。昇給を得られるかどうかも、タイミング次第です。

まず、今働いている会社で昇給が可能なタイミングは通常いつなのかを確認しましょう。年末でしょうか? それとも、勤務開始日を起点として一年ごとでしょうか?

もしくは、厳格なルールが存在しないかもしれません。「タイミングがわからなければ、周囲の社員に聞いてみたり、社員向けハンドブックを見てみたりしましょう。一般的に、昇給は業績評価に結びついているものです」とグリーン氏は言います。「マネージャーに直接はっきり尋ねてみるのも、悪いことではありません。働いて、ある程度の期間が過ぎたら、上司に聞いてみましょう。『自分の給料について相談がしたいときには、いつどのようにすればいいのでしょうか?』と」

年間の業績評価の際になって初めて、昇給について切り出す人も多いですが、それは多くの場合、タイミングが遅すぎます。「EvilHRLady.org」の筆者であり、元人材業界のプロフェッショナルであるスザンヌ・ルーカス氏は「業績評価の3~4カ月前に、上司に昇給の件を相談してみてください」 とアドバイスします。「なぜなら、ちょうど予算を決定するタイミングだからです」

通常、企業は昇給のために使える予算というのものをもっています。それを管理職は、各社員ごとに割り当てるのです。なので、決断がなされる前に、できるだけパイの取り分を多く得られるように、自分の功績をアピールしておくべきです。

どのように自分の希望を伝えるべき?

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昇給の適切な切り出し方は、話をする上司の性格にもよります。あなたの上司が好みであろうアプローチ方法というのは、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。

あなたの上司が回りくどい議論を好まないタイプであれば、明確な目的を伝えたうえでアポイントをとった方が良いでしょう。ミーティングを提案し、「個別に話す機会をいただきたいのですが。自分の今後の給料について検討してもらいたいので、お話がしたいのです」というような内容のメールを送ってみましょう。

もっと、婉曲なアプローチを好む上司もいるでしょう。毎週の進捗確認ミーティングのような場所で、別の話題について話しているときに、給料に関する質問を切り出してみるというように。

いざ昇給の相談をするときには、自分の望みをはっきりと伝え、なぜその昇給に自分が値すると考えるのかを詳細に説明しましょう。「事前にしっかりと説明を練っておくことです」とグリーン氏は言います。「本質的には、昇給というのは、自分が以前の自分よりも価値のある存在になっていることを示します。スキルが上がり、より多くの成果をもたらしたということです」

昇給を実現した人はどのように伝えたのか?

または、上司にこのように伝えてみましょう。「給料の件でお話したいのですが。この1年で、多くの新しい任務を得ました。たとえば、***や***のような。そうした新しい任務にふさわしいレベルの給料に上げてもらえないか、相談したいのです」

グリーン氏は、過去1年間に成し遂げたことを書き留めたメモをつくっておくように提案します。周囲から高く評価をされた点、大きな成功を収めたプロジェクト、新しく担当した任務など。そうした情報のすべてを管理できるように。

元ESLインストラクターのヴァネッサ・ウェイド氏は、この方法で昇給を実現しました。何年も昇給したスタッフは見たことがないと同僚から聞いていた状況においても、彼女は「自分自身は熱心に働いてきた、だからこそ自分はその分の昇給に値する」と感じていました。なので、上司に昇給の相談をするべく準備をしました。「上司に相談する前に、自分が会社を代表して達成したことと業績のリスト、そしてそのために費やした時間を書き出しました」

彼女は、自分の教えた学生は3カ月で英語をかなり身につけたこと、就職できたり、昇進できた生徒もおり、身につけた英語スキルを書いたウェブサイトやESL業界の新聞に詩を掲載した生徒もいることなどを上司に伝えました。「私は上司に言いました。全力を注いだ結果、生徒のレベルは大きく向上しました。その結果に見合う昇給をいただきたいのです」。彼女のプレゼンは成功しました。数週間後、17パーセントもの昇給を得たのです。

このアプローチが有効な役職とは?

こうしたアプローチは特に、新しい任務を担当することになった、非常に高い業績を達成した社員にとって効果を発揮します。管理職というのは、業績の低い社員の仕事状況については詳しく把握しているものです。なぜなら、彼らがしっかり仕事をしているか、確認しなければならないからです。ですが、生産性の高い社員は、一般的に自分の任務を自律的に管理できてしまうため、上司は彼らの仕事状況に疎くなってしまうことがあるのです。

「上司が考えている以上の仕事をこなしている可能性があります」とルーカス氏は指摘します。「自ら声を上げて、期待を越えた仕事をしていることをアピールすべきなのです」

ルーカス氏は、以前の職場でまさに同様の状況を経験しました。彼女の上司が産休をとっていたとき、上司の仕事の半分を引き継いだのです。半年経っても、上司は職場に戻ってきませんでした。ルーカス氏は、当初の職務を大きく越えた仕事をしている状況でした。そして、その分の対価を得ていないことに憤りを感じていました。

そこで、彼女は部長と話をする機会をもち、当初期待されていた任務を越えた仕事をこなしていると説明しました。そして、その努力に見合う昇給に自分が値すると考えていることも。「部長は、完全に私に同意してくれました。その件を相談したあとすぐに、昇給と昇進を実現してくれました。彼女はすばらしい上司でした。ですが、あまりに忙しかったため、私の仕事状況を把握しきれていなかったのです」

どれだけの昇給を期待すべき?

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どれだけの昇給を相談すべきか決めるときには、事前準備をしましょう。「毎年、社員に昇給を与える会社であれば、どれだけの昇給額が妥当かどうか検討がつくでしょう。その額に沿って、相談するべきです」とルーカス氏は言います。「一般的に、多くの企業は年間5パーセントかそれ以下の昇給を与えるべく、予算を組んでいます」

たとえば、あなたの勤める会社の昨年の平均昇給額が2パーセントだったとします。その状況で、10パーセントの昇給を相談するのは、あまりに差が大きく、不適切でしょう。他の社員よりも良い業績を残したのであれば、3パーセントの昇給を相談するの妥当かもしれません。

1年ごとの昇給ルールが存在しないとしたら? さらに事前準備が必要です。「ほとんどの人は、直感で正しいと感じた額の昇給を提案し、その額が適当であることを示す裏付けをもっていません」グリーン氏は言います。「自分のスキルレベルや住んでいる場所をベースに、業界における標準を考慮すべきです」

たとえば、同じ業界で仕事をしている人に直接聞いてみる、リクルーターに確認してみる(リクルーターを活用することが多い業界である、または既に知っているリクルーターがいれば)、求人リストから探ってみる(給料の目安が書かれている求人情報もあります)などして、市場における自分の価値を探ってみましょう。

「昇給を求める」以外に使える手はないか?

そのほかに使える方法は、「同じ役職のままの昇進」が可能かどうかを相談してみることです。「同じ役職のまま新しい任務を担当していることを理由に、その任務に見合った昇給を求めるというアイデアです」とルーカス氏は説明します。「たとえば、上司に対して今の自分は "レベル10" だけれども、実際にやっている仕事は "レベル12" の内容であり、その差は給料でいうと10パーセントの差があると説明するのです」

これは、まさにピーター・アンダースさん(仮名)が使った技です。彼は金融業界で仕事をしています。彼の役職はマネージャーでした。ですが、実際にはバイスプレジデントレベルの仕事をしていたのです。社員は、その年の終わりまでに達成すべき目標リストが与えられています。アンダースの任務は、経験豊富な社員の任務と連動している内容でした。

彼は知り合いやリクルーターと話し、自分の市場価値について調査しました。そして、上司と話し合いの機会をもち、言いました。「私はこの組織で、多くの仕事を任されています。その点については非常に感謝していますし、与えられた目標のほぼすべてを達成しました。私は、今の自分の仕事ぶりが、今の組織図における自分の位置よりも高い役職の仕事に相当するのではないかと感じています。自分の仕事状況に相当する役職レベルの報酬を得ることは難しいでしょうか?」

彼の上司は、その要望を検討すると返事をし、その結果、現在アンダースさんの給料を上げる手続きに入っています。「直接的に昇給を要求するよりも、他の社員との関係性の中で、自分がどの程度のレベルなのかという質問を投げかけました」とアンダースさんは説明します。「それによって、上司はより現実的に検討できるようになったのです」

具体的な金額はどのように提示すればいい?

具体的な昇給額について話をしたいときには、2つの方法があります。自ら具体的な数を提案するか、上司が提案するのを待つかです。後者の利点について、グリーン氏は「上司は、あなたが期待するよりも大きな額を提案してくれるかもしれません」。もし、上司の提案が自分の期待値よりも低い場合には、上司に自分の希望額を伝えた上で、その中間の額にできないかを提案すればよいのです。

中間額で折り合いをつけることを前提に、理想よりもさらに高い額を提案すべきかどうかは、交渉相手によります。「そうしたアプローチをとるべき相手もいますが、一方で理想よりもさらに高い額を提案することで、あなたが組織の事情に精通していないと捉える上司もいるでしょう。交渉相手がどのような反応をするだろうか、検討をつけておく必要があります」

いずれにしても、希望額を決めた上で、話し合いに臨みましょう。また、希望額は提案内容にもよります。

「昇進を求めているのであれば、10パーセントの昇給は妥当な範囲です」とルーカス氏は言います。「業績が良いという理由で昇給を求めているのであれば、3〜5パーセントの昇給は現実的でしょう」

また、昇給額は、組織の業績評価基準におけるあなたの位置にもよります。「多くの会社は、各職務の評価基準をもち、平均レベルに相当する給与額を定めています。もし、あなたの業績が平均以上であるのに、給料が平均よりも低い場合には、昇給を要求できます」

カウンターオファーを出すのは賢明な判断?

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「昇給がなければ退職をする」と言うのは、危険なアプローチです。

生活コストに合わせた昇給を毎年与えている企業もあるものの、ほとんどの企業は成果型の昇給を取り入れています。あなたが他の企業からオファーをもらっているかどうかは、関係ありません。「昇給を要求する上で、強調するべき点はあなたが会社に貢献している価値です」とグリーン氏は言います。

とはいえ、退職の可能性についてもそれとなくほのめかすのはOKです。「ここでの仕事は大好きですし、長期的に働きたいと思っています。とはいえ、私の現在に市場価値は**ぐらいだと思っています」といったように。

ですが、グリーン氏もルーカス氏も、カウンターオファーをすぐさま提示することは避けるべきだと言います。「カウンターオファーが認められた人のうち、75〜90パーセントの人が結局1年以内に職場を去っています」ルーカス氏は言います。「新しい仕事を検討するというのは結局、お金の面以外の問題もあるのです」

もし、上司があなたを引き止めるために、あなたが出した条件を飲んだとしても、その後味は決していいものではありません。「上司は、あなたが他の企業にも興味をもっていて、いつでも辞めることができると知っています。組織内の内輪のグループから除外され、結果的に辞めざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります」

返事が「ノー」だったときには、どうすればいい?

拒絶の返事を受け入れるのは簡単ではありませんが、そこで折れてはいけません。グリーン氏は提案します。「今後、昇給するためには、私にはなにが必要でしょうか?"と尋ねるのです。上司がその質問に答えられないとしたら、その上司は管理職として優秀ではなく、また組織がうまく機能していない可能性があります」

質問に対して上司が説明をしてくれたら、次にあなたがやるべきことは明確です。その後も挑戦を続ければいいのです。

The Right Way to Ask for a Raise ... and Get What You Deserve I LearnVest

Molly Triffin(原文/訳:佐藤ゆき)

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