職場でアイデアを共有すると、誰かに盗まれたり、手柄を持っていかれたりするのではないかと気が気でない人もいるかもしれません。けれども、マネジメント関連の学術誌「Academy of Management Journal」にこのほど掲載された研究結果によると、アイデアの盗用や手柄の横取りは、私たちが思うほど頻繁には起こっていないようです。そして、アイデアや情報を自分の胸にしまいこんでおくのは災いの元になりかねないそうです。研究に携わった専門家たちは、重要なポイントを2つ発見しました。1つめは、アイデアの盗用は確かに起こってはいるものの、私たちが考えているよりはるかに少ない点です。多くの場合、思いついたアイデアは、そのままでは盗むほどの価値がありません。問題なのは、利己的な同僚が、そのアイデアに磨きをかけ、仕上がった仕事の手柄を横取りしてしまう場合がある点です。

2つめは、情報や知識を同僚に知らせずにいると、たいていはそれが裏目に出る点です。物事を隠す人間が、同僚から疑いのまなざしを向けられるのは、ほぼ間違いありません。「なくてはならない人材」や「問題を解決できる唯一の人間」になろうとすることは、自分の持つ情報を守るために必要以上に意図的な隠し立てをすることとは別なのです。

「もっとはっきり言えば、情報を意図的に隠そうとする社員は、その見返りとして、同僚から非常に利己的な反応を示される運命にあるようです。そして、最終的にはそれがあだとなり、創造性が失われる結果となってしまいます」と研究者は述べています。

執筆者の1人で、スロベニアにあるリュブリャナ大学のMatej Cerne氏によると、こうした行動を助長させる職場もあるようです。特に、社員が互いに競い合えばパフォーマンスが向上するという思い込みがあり、積極的に競争させようとする職場の場合、社員が情報を隠したくなるのは当然だと同氏は言います。

「しかし、こうした環境では、得られるものは何もないでしょう。そういった職場では、やられたらやり返すという雰囲気が生まれ、同僚もまた同じような姿勢を見せるからです。そしておそらくは、発端となった人間に対する上司の評価が大きく下がることになるでしょう」とCerne氏は言います。

続けて論文著者たちは、環境によっては、情報を隠ぺいしても、上述したような冷遇を受けないケースもあると述べています。とはいえ、そういう場合でも、良い結果を得られるわけではありません。情報をため込んでいる人間は、職場全体の情報共有に貢献しないため、何の利益も生み出しませんから、最終的に得られるものはないのです。

つまり、最も良いのは、自分の持つアイデアの行く末を、良好な関係にあって信頼できる同僚や上司と一緒に考えることだと言えるでしょう。思いついたアイデアが大したものではなかったとしても、創造的破壊は成長におけるひとつの過程であることを忘れないでください。何よりも、すべてをひた隠しにするような人間は誰の信頼も得られませんし、一緒に働くのも困難です。

研究論文の詳細は下記のリンクに載っています(英文)。

Academy of Management Hide Knowledge from Co-Workers? It Just Doesn't Pay, Study Finds|Academy of Management Journal via Business News Daily

Alan Henry(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ)

Photo by David Orban.