Inc.:音楽業界は、新しい会社を立ち上げるのが難しい場所です。オンライン音楽のスタートアップ企業で、利益を出しているところはありませんし、多くのアーティストは自分たちの曲のストリーミングしても小銭しか稼げていません。
しかし最近、いくつかのスタートアップが登場し、かすかな希望の光が見えてきました。彼らは新しいビジネスモデルを持っているばかりか、資金も十分にあり、ベンチャー投資家のフレッド・ウィルソン氏やMTVといった有名どころの支援も受けています。
以下に、そんな注目に値する5つの音楽系スタートアップを紹介しましょう。
1.ミュージシャンのためのGitHub『Splice』
フレッド・ウィルソン氏からの融資を得たと聞いたら、それは注目に値すると思いますよね? ユニオン・スクエア・ベンチャーズ、Lerer Ventures、Turntable.fmのSeth Goldstein氏の融資を受けて、275万ドルの資金を確保したSpliceは、かなり有利な条件を得ています。
Spliceが提供するのは、曲の編集、注釈付け、作業中の曲の共有ができるプラットフォーム。特に自宅の寝室で曲作りをしているようなアーティストにとっては、とても便利なものです。ミュージシャンは、ファンに向けて曲を投稿したり、共同制作者のネットワークを通して曲を共有することができます。
このサービスは、GroupMeのSteve Marocci氏と以前LivingSocialと PlayStationに在籍していたMatt Aimonetti氏によって立ち上げられました。同社は先週、ベータ版サイト用のウェイティングリストが付いたコミュニティサイトを公開しています。
2.ローカルなバンドをプロモーションする『DeliRadio』
DeliRadioはいとも簡単に940万ドルの資金調達を実現したかのように見えます。近々にあるライブ情報の提供と、バンドの楽曲のストリーミングを始めた同社は、瞬く間に「コミュニティラジオ」へと進化。ライブ会場地のラジオを特集したり、チケットの購入ページや情報へのリンクも掲載するようになりました。
バンドにとって大きな収入源となるのはライブでの売上です。DeliRadioでは、バンドの拠点である地元を超えて、宣伝することができます。ローカルのラジオ放送局の潜在能力を活かした点も、同社が他のスタートアップと異なる点です。また、Spotifyが有名なミュージシャンをプロモーションしているのに対して、DeliRadioは無名のミュージシャンの曲も発信しています。
3.今この瞬間に好きな曲をシェアできる『This Is My Jam』
This Is My Jamは、今この瞬間に好きな曲をシェアできるサービスです。ユーザーは、自分の好みにあったユーザーだけをフォローできます。「同サービスをたまたま使っていた元同級生のフォローを勧めることはない」と同社共同設立者のMatthew Ogle氏は言います。
クリック1つで、フォローした人のお気に入りの曲すべてを再生できます。自分のお気に入りの曲を投稿するたびに、その「Jam」は1週間オンラインで再生可能になります。このサービスで、アーティストが収益を得ているのか、今後も成長可能なビジネスなのかどうかは不明ですが、MTVやTwitter Music、Foursquareといった会社の背後にいる音楽情報会社のThe Echo Nestによれば、同社は非公開の株式を保有しており、そのため長期間存続が可能であろうとのことです。
4.独自通貨を開発した『Earbits』
音楽系スタートアップのほとんどが、ストリーミングを聴くリスナーに課金をしているのに対して、Earbitsはアーティストに対して課金をします。リスナーの情報提供とプロモーションの代わりに。
バンドはファンに対して、Earbits上で自分たちの曲を聴いてほしいと伝えます。そして、消費者は1曲を聴くために10「グルーヴィー」を払わなければなりません。「グルーヴィー」はさまざまな方法で得ることができます。アカウントの開設で500「グルーヴィー」、FacebookやTwitter上で曲をシェアすれば100「グルーヴィー」を得られるというように。同社は「グルーヴィー」はストリーミング音楽における最初の「通貨」であるといいます。
「Spotifyのユーザーの70パーセントはお金を払っていません。広告に基づいたサービスは業界に十分な価値をもたらさないばかりか、ユーザーエクスペリエンスも低下させていることは、多くのデータで示されています」と同社CEOのJoey Flores氏は語っています。
5.もっとも大きな資金調達をしたSpotifyアプリ『Soundrop』
640万ドルの資金を調達したノルウェー発のスタートアップ、Soundropは順調にやっているようです。SpotifyアプリであるSoundropは、グループでの音楽共有を簡単に実現し、Spotifyの初期の投資家であるNorthzoneから340万ドルの資金を調達しています。
Soundropは一部では「ソーシャルジュークボックス」と呼ばれています。ユーザーは自身のDJルームを作成し、そこに友人を招待することができるのです。また、ユーザーは友人の部屋を訪問することができ、リストに曲を追加し、投票することでDJになることもできます。もっとも多くの得票を得た曲がもっとも多く再生されるという、民主的な仕組みで機能しています。
つい先日、「2012年のビジターは、Soundropを使ってSpotifyから5億曲をストリーミングした」と発表しました。当然ながら、Soundropの次の目標は収益です。今後は、ロビン・シックやデヴィッド・ゲッタといった有名アーティストの参加協力を得て、売上を伸ばすことを期待しているようです。
5 Music Start-Ups to Watch|Inc.
Jill Krasny(訳:佐藤ゆき)
image by Thinkstock/Getty Images.