Inc.:私たちはつい、人生の目的を、社会的地位の向上、キャリアの確立、財産の蓄積、競争(そして勝利)、権力の掌握と考えてしまいがちです。
そして、成功に恵まれていないとき理想に固執してしまうのは、それ以外に何も知らないからなのです。
そこでひとつ、私からの提案があります。人生の目的は、食べていくための仕事とは一切関係ないと考えてみてはいかがでしょうか。人生の本当の目的は、自分に正直に生きること。そして、自分とはいったい誰なのかを知ることなのだと。きっと多くの人が「そんなこと分かっている」と言うことでしょう。そして「でも、できないんだ」と。でも、「できない」本当の理由を知れば、理想に近づけるはずです。
1.内から外を見るのではなく、外から内を見ながら生きている
私たちは小さいころから、他人を参考にして生きることを教えられて育ちます。子供時代には、社会的規範に従うことが大事。つまり、他者との関係の中で自らの行動を決めるという癖を、子どものころから叩き込まれているのです。
しかし、人生の目的のような個人的な事柄にそのプロセスを流用しようとすると、問題にぶつかります。
あなたの周りには、皆からの信頼が高く、あなたの人生の目的を理解してくれる人もいるでしょう。でも、その他の多くの人たちは(悪気はないにせよ)、自分の理解しやすい枠にあなたを当てはめようとします。そうしたときに相手に認めてもらうには、その枠を快く受け入れることが一番。そして認められ続けるために、慢性的に自分を否定し続けることになってしまうのです。
2.内なる声に耳を傾けずにキャリアを探している
社会でいう「成功」とは、チェックボックスにチェックを入れていく作業のこと、なのかもしれません。チェック項目にあるのは、「学校を卒業する」「結婚する」「子どもを持つ」「安定した仕事に落ち着く」「定年まで勤め上げる」...。
こうしたありきたりな道のりのせいで、誰もが同じ方向へと突き進みます。
私たちは、「自分は十分スマートではない/クリエイティブではない/かわいくない」という、自己誘導型の恐怖を避けるのに精いっぱいで、立ち止まって自分の幸せを確認する機会がありません。「幸せでないなら、何を変えていけばいいのか」なんてことを考える余裕など、どこにもないのです。
目的を見つけることとは、自分の内なる声に耳を傾けること。教育者のパーカー・パーマー(Parker Palmer)氏は、著書『Let Your Life Speak』において、人生に向かって語りかけるのではなく、逆に人生に語りかけてもらうことの重要性を説いています。
内なる声は、情熱的かつ衝動的なもの。そして内なる声を追求するのは、決して楽な作業ではありません。葛藤や愚かさ、リスク、そして未知のことを恐れるあまり、ほとんどの人が最初の一歩を踏み出せずにいるのです。
こうして私たちは、チェックボックスにチェックを入れていくような人生を歩むことになります。
3.何もしないことを恐れる
私たちの暮らす社会は、「静寂」を良しとしません。それよりも、行動が重んじられます。
しかし、静寂のない人生は危険です。立ち止まって振り返ることをしなければ、自分のエゴとそのエゴが求めるものを、人生の目的と勘違いしかねません。そのような脚本を演じ続けても、ハッピーエンドは望めないのです。
エゴに乗っ取られた人生では、いずれ燃え尽きてしまいます。そしていつしか、こんな疑問を抱くようになるでしょう。「こんなに素晴らしい人生なのに、満たされないのはなぜ?」
静寂はノイズをかき消し、本質が現れる場所を生み出してくれます。静寂の中では、自分の人生や仕事が果たしてうまく進んでいるのか、答えが出るまでゆっくりと自問自答することができます。さらに、人生に蓄積されたデータをかき集めて、いくつかの教訓としてまとめることができるでしょう。
でも、多くの場合、その教訓を十分理解する前に、別のことに気を取られてしまうのです。
4.自分の悪いところを知りたくない
分析心理学の父・ユングが「シャドウ」(影)と名付けたもの。それは、人が他人に見られたくないと思っている、言わば人格における「恥部」です。
自分に足りないことや失態、利己的な衝動を人に見られるくらいだったら、逃げ出したくなってしまうこともあるでしょう。
でも、これだけは忘れないでください。自分の中の最悪の部分こそ、人生の目的について多くを教えてくれる存在なのです。人生の目的を見つけることが、すなわち自己発見であるのなら、あなたの悪い部分が、あなたがもっと成長しなければならない部分を教えてくれるのです。
さらに、あなたの悪い部分は、あなたが誰から学ぶべきかも教えてくれます。最も学ぶべき相手は、あなたがあまり好きでない人物であることが多いはずです。
しかし、多くの人が自分の悪いところに目を向けようとしません。むしろ、自らの古臭いイメージを助長するような、居心地の良い関係を求めてしまうのです。
5.潜在意識を軽視している
デイヴィット・ブルックスは著書『The Social Animal』において、私たちの文化に存在する「意識がわれわれ人類の伝記を作る」というバイアスを取り上げています。
私もブルックス氏と同意見で、私たちの文化は、感情、直観、衝動、感受性をはじめとする潜在意識を軽視していると考えています。
人生の目的を見つけるには、非論理的な感情と付き合っていく必要があります。そして、答えがないことに慣れなければなりません。曖昧さに耐え、葛藤をよしとしなければならないのです。あとはただ、感じること。深く感じるのです。いくら考えたところで、人生の目的は見出せないのですから。
しかし、これは多くの人にとって難しい注文です。むしろ、否定し、嘲笑し、愚弄し、露骨に無視するだけの人が多いでしょう。
5 Reasons Why Most People Never Discover Their Purpose | Inc.
Shelley Prevost(訳:堀込泰三)
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