仕事など、日々の生活で何かとたまるストレス。解消方法に悩んでいるのなら、習慣的に運動するのをおすすめします。
最新の研究によると、運動によって脳のストレスを対処する部位に構造的な変化が起きるそうです。米国の神経学に関する学術誌「The Journal of Neuroscience」に掲載された研究では、日常的に走り回っているマウスと、運動をさせていないマウスを用意。両者ともに不安を誘発する環境下に置き、脳の状態を調べました。
どちらのマウスも脳のストレス反応に関わる部位が活性化するものの、そこには明らかな違いも見られました。日常的に走り回っていたマウスが短時間で状況に順応し不安を「対処」したのに対し、運動していないマウスは不安とストレスの反応を長時間にわたって見せていました。
Princeton大学Gould Lab研究所のディレクター、Elizabeth Gould博士は、アメリカ国立衛生研究所のTimothy Schoenfeld氏らとの共著の中で次のように語っています。
「走り回っていたマウスの海馬と、運動していないマウスの海馬には大きな違いがあります。走り回っていたマウスの海馬では、興奮性ニューロンや興奮性シナプスが増加していたのに加え、抑制性ニューロンもより活性化していました。このニューロンは、ストレス反応により活発化した興奮性ニューロンを抑える働きがあると考えられます」
この発見は、学術誌「The Journal of Neuroscience」に掲載されました。
Gould博士によると、注目すべき重要な点は運動の長期的な効果を実証したことだそうです。
マウスを冷水につける(つまりストレスを与える)24時間前に、ランニング用の回し車がロックされました。つまり、運動の即効的な鎮静効果は実験結果に影響していないということです。
もちろんマウスと人間は同じではありません。
しかし、Gould博士は「運動が人間の不安を軽減するのを示す研究結果は他にいくつもある」と指摘しています。
「大発見とは言えませんが、(中略)活動的な人の海馬は、運動をしない人の海馬に比べて、ストレスからの悪い影響を受けにくいと考えられます」
ストレスは誰にも同じ影響を及ぼします。しかし日常的な運動により、脳に根本的な変化を起こし、耐性を高めることはできるのです。
How Exercise Can Calm Anxiety | The New York Times
Alan Henry(原文/訳:伊藤貴之)
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