どんなサクセスストーリーにも「予期せぬ幸運」が付きものです。ベストセラーになっている伝記を何冊かザッと見るだけでも、「ブレイクした」「チャンスが訪れた」「思いがけないことに遭遇した」ことで、成功を掴んだ人がいかに多いものです。
求められていない、意図的でない、思いもよらない、幸運な偶発的に起こった出来事や経験。
それが「セレンディピティ」です。
単なる「幸運」と思われがちですが、心の準備をしておくことでセレンディピティが起こりやすくなります。今回は、セレンディピティを起こりやすくするちょっとした心がけを紹介していきましょう。
セレンディピティは単なる幸運ではない
「セレンディピティ」という言葉は、『セレンディップの3人の王子(The Three Princes of Serendip)』というペルシャの童話を読んだ18世紀のイギリスの作家Thomas Walpoleによりはじめて使われました。
登場人物の3人の王子が偶然と洞察力を元に、旅の途中で探し求めているものを発見することを呼んだのです。
その後、19世紀半ばにWalpoleの書いたものが出版され、今私たちが使っているような意味の言葉として使われ始めました。
セレンディピティという言葉が広まる中で意味から抜け落ちてしまっているけれど、真実をとらえているなと思うのが「洞察力(Sagacity)」という言葉です。
洞察力は、観察力や賢さや感覚の鋭さで探し当てる能力ということ。チャンスは準備している人の元に訪れるというのが、セレンディピティの持つ意味合いに含まれるのではないかと私は思います。単なる幸運ではないのです。
セレンディピティを起こりやすくする方法
私はここ数年、以下の行動を自分の基本原則とし、セレンディピティが起こりやすくなるか試してきました。
1.とにかく顔を出す
私は人に招かれたとき、「今はそんなところに行ってる場合じゃないから、断らなきゃ」とか、「これに参加しても意味がないかもしれないから、パスしようかな」と思っていました。
数年前、私は「将来重要な人物になりそうな注目の若者」に贈られる、とある賞を受賞しました。当時の私は無一文でした。銀行口座は空っぽで、手元にほんの少しの現金が残っているだけでした。
私は、なけなしのお金でその会場に行くための電車のチケットを買いました。バカみたいな話ですが、あり金全部をはたいて、その注目の若者たちが集まるパーティー会場に行ったのです。そこに何があるかなんて分かっていませんでしたが、私はそこにはチャンスが詰まっていると思っていたのです。実際にそうでした。長くなるので端折りますが、結局そこで出会った人と一緒に会社を立ち上げたのです。
もし私がそのパーティーに行っていなかったら、何も起こらなかったでしょう。とにかく顔を出すだけでいいというのが私の基本原則になりました。どんなイベントでも招待でも、招待されていないものでも、気になるものにはどんどん参加しましょう。
2.適切な場所に身を置く
自分の求めるものに関係ある人と出会いたいのであれば、その場所の真ん中に身を置きましょう。私たちは、ロンドンのスタートアップシーンの真ん中に居たかったので、新しい会社はイーストロンドンのTech CityのSilicon Roundaboutのできるだけ近くにしました。
リサーチパークにオフィスを構えても、コワーキングスペースにデスクを借りても、自分の求めるものや、業界人間が集まっている場所に引越してもいいです。何でもいいので、セレンディピティが起こって欲しい要因に近付きましょう。
3.ゼンブラニティを避ける
仕事をしている間、だれだって休憩をとります。そんなときは、机やオフィスを離れたり、外に出たり、人と話したり、どこかに顔を出したりしましょう。
「ゼンブラニティ(Zemblanity)」というのは、1980年代にイギリスの作家 William Boydが著書『Armadillo』の中で用いた造語で、セレンディピティの真逆の言葉です。冷たく不毛な、セレンディピティが起こりそうもない島の名前がゼンブラでした。
スパイスがあって、温かく、緑が生い茂り、鳥がさえずり、キレイな海と、焼ける太陽がある、セレンディップ(スリランカ)の反対は何でしょう? はるか北にある、氷に覆われた、冷たく、不毛な氷河期のような世界を思い描いてみてください。これがゼンブラです。つまり、セレンディピティの反対語は、ゼンブラニティ。不幸や不運に遭い、決まりきったことしかできない能力のことです。
4.「だけど...」ではなく「それで...」と言う
これを実践するのはとても簡単です。誰かがあなたに何かを提案した時は、反対意見や皮肉や批判を思いついても、グッとこらえます。「だけど...」という言葉で話し始めると、間違いなくチャンスを逃します。
相手のアイデアや言っていることについて耳を傾け、何かそれに追加できないか考えてみましょう。そして「それで...」という言葉で話し始めるのです。
5.チャンスを目ざとく見つける
自分の身の回りのことに意識を向け、何か大変そうなことを探しましょう。大変ではないことから影響力のあるものを作った人がいるでしょうか?
6.「セレンディピティエンジン」を使う
Twitter、ブログ、あらゆるソーシャルメディアのことを、「セレンディピティエンジン」と呼ぶことがあります。これらを使うことで何かに「出会う」確率ははるかに上がります。
7.自分のアイデアを隠し過ぎない
隠し事や秘密を抱えていることで、自分や周りの人にゼンブラニティ的な影響が起こるのを見てきました。
8.他の人にもセレンディピティが起こるようにする
私は、誰かとコーヒーを飲むことで1日の時間が分断されてしまうという問題を抱えていました。そこで代わりに夕食に誘うようにしてみました。
面白い人とまとめて会えるようになり、参加者にとっても私にとっても、楽しくて有益でした。しかも食事の後でカクテルも楽しめます。これをするようになってから、私にも参加者にも面白いつながりができそうなセレンディピティが起こるようになりました。
仲間内で定期的に会う機会を設けるようにしてみると、もっと多くのセレンディピティが起こるかもしれません。
9.合いそうな人同士を紹介する
「他の人にもセレンディピティが起こるようにする」ようにしていた頃、私は紹介することでも良いことが起こるようにがんばっていました。毎週合いそうな2人を紹介するようにしています。その手順は次のようにとても簡単なものです。
紹介:アンさんとボブさん
お二人ともこんにちは。
私は(こういう理由)で、二人にお互いを紹介したいと思いました。
アンさん、ボブは(アンさんに関連がありそうな理由)な人で、(僕と彼はこのようにして出会いました/彼のこんなところがすごいです)。
ボブさん、アンは(ボブさんに関連がありそうな理由)な人で、(僕と彼女はこのようにして出会いました/彼女のこんなところがすごいです)。
二人が出会ったら何か面白いことになるんじゃないかと思ってます。
Accelerating Serendipity | Medium
Stef Lewandowski(原文/訳:的野裕子)
Image remixed from Lukiyanova Natalia / frenta (Shutterstock).あわせて読みたい