敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ第49回。モレスキンの共同創設者であるマリア・セブレゴンディ(Maria Sebregondi)氏に続く今回は、投資家にしてヘッジファンドのマネジャー、20以上の会社を創設した起業家でもあるジェームズ・アルタッカー氏(James Altucher)にインタビュー。

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彼は著述家でもあり、ビジネスや家庭、健康、創造性に関する記事を、英紙「Financial Times」から「Thought Catalog」まで、あらゆる媒体に寄せています。本も11冊も書いていて、最新刊が出たばかり。1日9時間も眠りながらどうやってこれだけのことを成し遂げているのでしょうか?

  • 氏名:ジェームズ・アルタッカー(James Altucher)
  • 居住地:ニューヨークシティから70マイルのハドソン川沿いに住んでいます。川のすぐ向こうにウェストポイント(陸軍士官学校)があります。
  • 現在のモバイル端末:Samsung Galaxy Note II。まさに電話ができるコンピューターです。
  • 現在のコンピューター:Samsung Galaxy Note II。それからMacbook Airも。
  • 仕事スタイルを一言でいうと:規律正しく。
  • 職業:20のビジネスをスタートして、そのうち17は失敗しました。いわば、「へこたれない」が私の職業です。本も書いていて、最近だと『Choose Yourself』という本を出版しました。

ジェームズ:手がけた最新刊の基本的なアイデアは、成功や幸福のためには自らを選択するべきだということです。自分の代わりになる人は他に誰もいません。そして、現在手がけている仕事が「魔法」になります(私はいま、投資、アドバイザー、執筆、大企業の取締会のメンバー、講演、そのほか、以前では思いもよらなかったことで収入を得ています。将来はスタンドアップコメディーもやってみたいですね)。

私はいま45歳です。25歳から数えて転職を10回しました。

自動車王ヘンリー・フォードが自動車工場を始めたのが60歳だったという事実に勇気づけられます。レイモンド・チャンドラーが初めて長編小説を書いたのが52歳。カーネル・サンダースがフランチャイズを始めたのが65歳です。誰もがみな、人生の「目的」を知りたがっています。しかし、それは人間が作り出した神話です。私たちに目的など必要ないのは、一歩離れて見てみれば明らかです(霧深い夜の灯台が、自分の照らす船が何を運んでいるのか知らないままその船を助けるように!)。

「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは何ですか?

ジェームズ:ウェブブラウザとKindleです。

仕事場はどんな感じですか?

ジェームズ:小さな机にノートPCを置いています。インスピレーションを与えてくれる、たくさんの漫画や絵画、アクションフィギュアに囲まれています。

1957年のアジアのゲーム『囲碁』のチャンピオン
上の写真はジェームズ氏のお気に入り写真のひとつ。氏曰く、「1957年に撮られた『囲碁』のチャンピオンです。彼の"歯"が好きなんです。この集中力を見てください。顔も凄まじい殺気です。私も彼のような集中力を持ちたいと願って、仕事場には必ずこの写真を飾っています」

お気に入りの時間節約術は何ですか?

ジェームズ:テレビを見ないこと。食事は(3回でなく)2回にする。ニュースを読まない。ウェブサーフィンをしない。ゴシップに関わらない。これだけで1日に5時間は節約できます。

愛用中のToDoリストマネージャーは何ですか?

ジェームズ:レストラン用品のウェブサイトで注文伝票を1000枚買いました。1枚あたり10セントです。毎日最低でも10個のアイデアを書き出します。このアイデアリストは、ミーティングのとき会話のきっかけにもなります。

携帯電話とコンピュータ以外で「これは必須」のガジェットはありますか?

ジェームズ:電気カミソリです。普通のひげそりだとよく顔を切ってしまいます。あるとき、資金集めのために億万長者と会う機会がありました。ところが、面談の直前にひげそりで顔を切ってしまったのです。面談の間中、私のあごからは血がにじみ続け、ウェイターがナプキンをくれたのですが、ナプキンを何度も交換するはめになりました。もっとも、億万長者は無事に出資してくれたのでよかったですが。

日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?

ジェームズ:苦手なことを知るのが得意です。誰かと会うたびに、自分より相手のほうがうまくできることは何かと考えます。たとえば、私は交渉が苦手です。自分より交渉上手な人に会うと感動して、その人から学ぼうとします。

それから、眠るのが得意ですね。かつては苦手でしたが、今は得意です。1日9〜10時間は眠ります。

睡眠習慣はどのようなものですか?

ジェームズ:夕方6時にはすべてのスクリーンをシャットダウンします。コンピュータ、携帯、テレビなど全部です。食事もとりません。読書したり川沿いを散歩してリラックスします。8時か8時半にはベッドに入って本を読みますが、すぐに寝てしまいます。朝は5時半に起きて、7時まで読書や執筆をします。

仕事中、どんな音楽を聴いていますか?

ジェームズ:音楽は大好きですが、仕事中は静けさが必要です。仕事中に音楽を聴くのはマルチタスキングに似ていて、私はマルチタスキングが苦手なのです。

テレビ番組『Underdog』で使ったスケッチ
上の写真もジェームズ氏のお気に入り。「これは1963年に、アーティストのJoe Harris氏がテレビ番組『Underdog』で使ったスケッチです。この絵を買ってから、いつもそばに置いています。私の人生はいつもUnderdog(勝ち目のない犬)の状態から始まるからです。Underdogは私のスーパーヒーローです」

あなたはどちらかというと内向的ですか、それとも外向的ですか?

ジェームズ:「外向的な人のフリが得意な内向的な人間」です。個人的に人と会うのは怖いのですが、大勢の人に向けて書いたり話したりするのは楽しいです。

これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください。

ジェームズ:あなたが自分でルールを決めないのなら、他の誰かが決めるだろう。そしてあなたはその結果に満足しないだろう。

ほかに、ファンや読者に伝えたいことがあれば、どうぞ。

ジェームズ:自分自身のことをよくケアしていれば、他のことはすべてついてきます。

身体的に健康なら、よく食べ、よく眠り、よく運動できます。感情的に健康なら、私を好きでいてくれるし私も大好きな、ポジティブな人たちと一緒にいられます。

精神的に健康なら、1日に10個のアイデアを思いつきます。本もたくさん読めるでしょう。心が健康なら、人生を豊かにしてくれるすべてのものに感謝できます。たとえば、このインタビューもそのひとつですね。

Tessa Miller(原文/訳:伊藤貴之)