『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(河野英太郎著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、以前に紹介した前著『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』によって40万部突破の実積を打ち立てた著者が、「リーダーになるためのテクニック」を紹介した書籍。
ここで著者は、リーダーにはカリスマ性も成績も才能も必要なく、日常のさまざまな問題を解決するために必要なのは「コツ」であると言い切っています。はたしてそのコツとはどんなものであるのか、CHAPTER 7「人を育てるコツ」からいくつかの要点を引き出してみます。
1.リーダーはなぜ人を育てるのか?
なぜ人を育てることがリーダーの仕事なのか? このことについて著者は、シンプルにリーダー自身のためと考えるようにしているのだそうです。(152ページより)
チームの存在意義はメンバーとともに目標を達成することにあり、そのためにはメンバーの成長が不可欠。そしてメンバーの成長は、目標達成のための必須条件。だからこそ、リーダーはメンバーを育てることが必要だというわけです。
また、成長するメンバーと仕事を続けると、どんどん仕事を肩代わりしてくれるようになり、負担が減って「楽」になるというメリットもあるとか。すると、そういう人と仕事することは「楽しい」という気持ちも生まれるといいます。
2.「文句」と「意見」を区別する
リーダーに持ち込まれる相談をシンプルに分類すると、「文句」と「意見」に分かれるそうです。しかし、「文句」と「意見」は似て非なるもの。過去に由来する前者は次につながるものがなにもありませんが、後者は新しい価値を生み出すことができます。(154ページより)
そこで、「意見」を言ってきたメンバーの相談にのるときには、どうすればそれが叶えられるか、何が足りないのかを一緒に考えることが大切。それが、メンバーの成長を促すからです。
一方、「文句」を言ってきたメンバーには、視点を未来に移すためのガイドをするべき。彼らの多くは「今、自分はこんなに苦しんでいる」「出された数字を実現できない」などの悩みを抱えているもの。そんなときは、期待をかけているメンバーにはあえて少し突き放し気味に対応し、まだキャリアの浅いメンバーには「あなたに期待するのは、文句を言うことではなく、意見をすること」と丁寧にガイドするのがいいそうです。
3.自分の価値観で考えない
キャリアの積み方は、時代によって異なるもの。大切なのは、リーダーになった自分の成功体験が、必ずしもメンバーにとって有効であるとは限らないということです。自分と同じ道をたどらせることはメンバー育成ではなく、価値観の押し売り。(158ページより)
転職を何度か経験した著者は、「一つの価値観・成功体験に過剰に固執してチームを引っ張ろうとするリーダーは、どうしても人をつぶす傾向が強いように思います」と言います。しかしキャリアは人生の一部。それを決められるのは、最終的に本人だけであるということを忘れないことが大切だとか。
4.1日1%でも成長する
人は毎日少しずつでも、新しい工夫や視点の変更をすることによって、継続的に能力をあげることがあるもの。そこで、極端に高いプレッシャーを与えて焦らせたりつぶしたりするのではなく、発想を変えることが重要。(26ページより)
昨日より今日、今日より明日と、毎日1%でも成長させるような経験を与えると、あるときメンバーが驚くような成長を遂げていることがあるといいます。そしてその方法こそが、メンバーを育てる最短距離なのだそうです。5.自分も学び続ける
人を育てることがリーダーの仕事というからには、自分自身が成長することも大事。メンバーと同じように、できればそれ以上のスピードで学び、伸び続けるべきだといいます。リーダーが率先することで、成長への説得力が増すというわけです。(164ページより)
自分が学び続けることの大切さを認識し、実践し、成長し続けようとするリーダーは、メンバーの学習や成長への影響力も強くなり、おのずと説得力をもつのです。
文体も柔らかく読みやすいので、すぐに読了できるはず。リーダーはどうあるべきかを模索している方は、ぜひ手にとってみてください。
(印南敦史)