採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』(伊賀泰代著、ダイヤモンド社)は、優秀な人材が集まることで知られるマッキンゼーの採用マネジャーを務めてきた著者が、12年にわたる経験から得た方法論を説いた書籍です。特筆すべきは、「マッキンゼーが求める人材も、日本が必要としている人材も、実質的には同じである」(3ページ)と断定している点。そんな観点に基づき、地頭のよさよりも大切なものの価値が説かれているわけです。

そして興味深いのは、リーダーシップのあり方に重点を置いて話が進められていることです。つまりはそれが、マッキンゼーのみならず、日本に求められる要素の本質なのかもしれません。今回はそのなかから、第4章「リーダーがなすべき四つのタスク」に焦点を当ててみましょう。1.目標を掲げる(116ページより)

まずリーダーに求められるのは、チームの成果目標を定義すること。そして目標すなわちゴール(到達点)をわかりやすい言葉で説明し、メンバー全員に見せる(共有する)ことだと著者はいいます。ただし、そのためには必ずしもカリスマ性が必要なわけではないとも。組織のメンバーを奮い立たせる目標を設定することがリーダーの重要な仕事だとわかっている人は、努力と工夫によって壁を乗り越えようとするものだからだそうです。目標は誰かから与えられるものではなく、自分で掲げるものなのですね。

2.先頭を走る(121ページより)

「最初の一人になる」、「先頭に立つ」のは負担が大きいだけに、その立場に身を置こうと決心するのはなかなか難しいもの。しかし、それを厭わないのがリーダーなのだそうです。他のメンバーよりも圧倒的に大きな負担を背負い込みながら、それでも成果を出すために最初の一人になろうとする人こそリーダーだということ。先頭を走る人が、一番前で最初に方向性を決めてこそ、メンバーは安心して追随できるわけです。

3.決める(124ページより)

たとえ充分な情報が揃っていなくても、検討する時間が足りなくても、決めるべきときに決められるのがリーダーの役割。ベストな判断ではなかったとしても、決断することによって問題点を浮かび上がらせることができるそうです。そして問題が山積していても、決断して前に進むべきタイミングだと考えて「決める」ことが大切。

4.伝える(130ページより)

コミュニケーションもリーダーの大切な仕事。組織を率いる場合や、多様な価値観を持つ人が混在している場合、あるいは成果を出すのがきわめて困難な状況下では、言葉によって人を動かすことは必須だそうです。現実的に、自分の考えを正確に伝えることはとても難しいですが、だからこそ何度も繰り返し粘り強く同じことを語り続ける必要があるのだとか。厳しい環境下では組織内に不満や怪しい言説が広がるものですが、心をひとつにして前へ進めるために、リーダーの言葉以上に強力な武器は存在しないと著者はいいます。

先に触れたように、本書はリーダーを目指す人のための強力なメソッドであるといえます。だからこそ、いつか訪れるリーダーとしてのポジションを真っ当にこなすためにも、読んでおいて損はないと思います。

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(印南敦史)