1986年以来、26年にわたってマンチェスター・ユナイテッド(通称マンU)で監督を務めるアレックス・ファーガソン。彼はなぜ、70歳の現在までプロサッカー界の最前線に立ち続けることができるのか? そして、いかにしてチームをまとめているのか? それらの謎に焦点を当てたのが『ファーガソンの薫陶 勝利をもぎ取るための名将の心がまえ』(田邊雅之著、幻冬舎)です。
15年近く欧州サッカーに関わってきた著者は、30回近くマンチェスターに足を運び<アレックス・ファーガソンだけが勝ち続けられる理由>を追究してきた人物。本書においては、ファーガソンならではのマネジメント術を解き明かしています。マンチェスター・ユナイテッドについての基礎知識はもちろんのこと、「ファーガソンが香川真司に惚れ込んだ理由」などのコラムまでが読みごたえ抜群。そんな中から、ビジネスマンにも応用できそうな「ファーガソン流若手育成術」を紹介します。1.服装の乱れは心の乱れ(64ページより)
ファーガソンは、選手たちが様々な誘惑に打ち勝ち、サッカーに集中できるように厳しい生活指導を行なうことでも有名。選手たちがみんな小綺麗なのも、「服装の乱れは心の乱れ、靴の曇りは心の曇り。そして生活の乱れは命取り」という考え方が徹底しているからだそうです。服装やプライベートは関係ないという考え方もあるかもしれませんが、「ディシプリン(規律)の有無は、ひいては職場(試合)のパフォーマンスにも影響してくる」のだといいます。
2.かわいい子には旅をさせよ(68ページ)
選手の保有権はそのままにしたまま、選手を期限付きで他のチームに貸し出す「レンタル移籍」。ファーガソンがこの制度を積極的に活用したのは、「かわいい子には旅をさせよ」という思いがあるからなのだとか。選手層の厚いマンチェスター・ユナイテッドでは、なかなか若手に出場の機会を与えられないという状況があるため、修行に出して育てようというわけです。ちなみにベッカムも、この制度によって育てられました。
3.レギュラーを確約しない(70ページ)
「私のチームで、レギュラーの座が確約されている選手は1人もいない」というのがファーガソンの口癖。これは、力が拮抗した同世代の選手を競い合わせ、あるいは若い世代の選手とベテランを意図的にぶつけることで、若い選手には試練を、ベテラン選手には刺激を与えるためだそうです。厳しい競争が組織を強くし、さらに上を目指したいという意欲を刺激するというわけです。
4.ルーニーの妻を讃えよう(73ページ)
「自分のチームの選手には全員結婚して、2、3人子供をもうけて欲しい。しっかりした家庭があると、選手の振る舞いも安定してくるんだ」とファーガソンは語っています。ぬかるんだピッチではいいプレイができない。仕事に集中するためにも、まずは身を固めろというわけですね。ちなみにファーガソンが「地に足がついていて優秀だ」と高く評価しているのは、ウェイン・ルーニーの妻コリーンだそうです。
服装の徹底、選手に苦労を強い、ときに戦わせる、そして結婚させて責任感を養う。ファーガソンのこれらの「若手育成術」は、そのまま企業内にもあてはまるのではないでしょうか?
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(印南敦史)