「薬」と聞くと、どのような色や形のものを想像するでしょうか? 一口に薬といっても錠剤やカプセル、粉末など形状はさまざまです。しかし、果たしてそれほど形や色を変える必要があるのでしょうか。今回は、薬の形状が違う理由を見ていきます。
■タブレット、カプセル、錠剤薬は胃で溶けるようになっています。もし、溶けにくいように何らかの処理がしてあったとしても、そこまでしっかりとコーティングする必要はありません。では、なぜわざわざコーティングするのか? 薬の味が驚くほどマズいことが多いからです。胃に入る薬は、舌のことをまったく考えていないのです。
イモジウム(下痢止め薬)のような薬や、胃が荒れないための保護が必要な抗生物質の多くは、魚雷のような形のケースで守られています。なぜ、固いバリアーのごとく2つのカプセルで覆っているのかというと、薬が溶ける時間をコントロールするためです。
粉っぽい錠剤や固いタブレット、小さな魚雷みたいなカプセルなど、さまざまな形状の薬があるのはこういった理由からです。
白くて粉っぽい錠剤の中には、柔らかいカプセルに取って代わった「カプレット」というものもあります。錠剤ではなくカプレットにする理由は、より飲みやすくなるようにするためです。製造コストが多少かかったり、価格も多少高くなったりしますが、どの錠剤も確実に胃の中で溶け、必要な成分がきちんと血液に吸収されます。■赤、青、黄色...カラフルな錠剤の正体
薬には本当にさまざまな形状がありますが、色もまた数えきれないほどあります(日本の錠剤はそうでもないですが、欧米の錠剤はもっとカラフルです)。製薬会社が着色顔料の技術を使い始めた1960年頃から、ありとあらゆる色の薬が出始めました。この世にあるほとんどすべての色が、薬に使われているのではないかと思えるほどですが、正確には8万色あるのだとか。しかし、なぜそのように多様な色の薬があるのでしょうか?
わかりやすい理由としては、見た目がキレイだからです。つまらない白い錠剤よりも、色がキレイなものの方が飲み忘れることがないというのが主な理由。少なくとも、最初はそれが本当の理由だったと言われています。どこにでもあるような白い錠剤よりも、明るいピンクの錠剤の方がはるかに見分けがつきやすくなりました。
錠剤は、薬の中でも輸送に便利な選択肢となるにつれ、市販薬と処方薬を見分けるために、色を分けるようになり始めました。これが、今日カラフルな薬が氾濫している一般的な理由です。最近では薬のブランドカラーを使ったり、カプセルの横に製薬会社のロゴがプリントされていたりします。
これらが、薬にさまざまな形や色がある理由です。形状は主に体内での吸収に関係があり、色は見分けやすさや覚えやすさに関係があるということです。このことを知って、あらためて薬を見てみると面白そうです。病院や薬局で豆知識としても披露できそうですね。
Sam Gibbs(原文/訳:的野裕子)
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