イタリアのベネチア国際映画祭では北野武監督の「アウトレイジ ビヨンド」が金獅子賞候補になり(惜しくも受賞は逃しましたが)、カナダのモントリオール世界映画祭では高倉健さん主演作品「あなたへ」が特別賞を受賞するなど、世界の映画祭が話題になっています。

今度の連休には、日本国内でも話題の国際映画祭が開催されます

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奈良県で開催される「なら国際映画祭 2012」は、史上最年少でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞した映画作家、河瀬直美氏が中心になって行われている国際映画祭。彼女が生まれ育った大切な故郷である奈良を舞台に、今年で3回目を迎える本映画祭は、地域一体となった独自の開催スタイルが魅力になっています。

しかもただ作品を上映するだけでなく、奈良を映画を作る場と捉えているところがユニーク。たとえば、映画制作プロジェクトの「Narative(ナラティブ)では、世界でこれから活躍が期待される監督や、子どもたちのための映画作りのワークショップを開催。そこでの受賞作品も今年の上映作品に加わっています。中でも、2010年の映画祭で最高賞を受賞したペドロ・ゴンザレス・ルビオ監督による「祈-inori」という作品は、明治時代に大水害あった奈良県十津川村を舞台にしたドキュメンタリー。しかも、同地域は映画完成後の昨年9月に再び大きな水害にあっており、地域災害についてあらためて考えさせられる作品として注目されています。

会場にも地域性が出ていて、間もなく創立から140年を迎える小学校やお寺を上映会場にしたり、スタッフによる自転車発電で上映したり。映画祭のWebサイトのコンテンツの一つ、「映画祭がゆく」では、ブログ形式で会場最寄りのカフェや工房などが紹介されていて、とてもあたたかい雰囲気の中で映画祭が行われているのがよくわかります。

そして、何といっても圧巻なのが、奈良を代表する観光スポット猿沢池にある有名な五十二段という石段をそのままレッドカーペットにしていること。燈籠などでライトアップする以外でこうした独自の演出が見られるのは、なら国際映画祭だけのはず。もちろん近くにある、興福寺・五重塔の姿も見ることができます。

映画祭は、浄教寺での前夜祭上映会の翌日14日(金)のレッドカーペットから正式スタートし、連休最終日の17日(月)まで4日間開催されます。

河瀬氏自身は、なら国際映画祭の開催にかける想い、そして映画と故郷を愛する気持ちについて、今年6月30日に開催された「TEDxTokyo 2012」で熱く語っています。まるで1本の短編映画のようだ、と評価された素晴らしいトークもぜひご覧ください。

なら国際映画祭2012

なら国際映画祭 公式Twitter

(野々下裕子)

Photo by Kasadera.
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