私たちは、人間関係がうまくいかなかったり物事が思い通りにならかったりすると、つい悪い方悪い方に考えてしまいがちです。そしてその思考は、自分の首を絞めることになったり、場合によってはうつ病へとつながったりすることもあります。

これを防ぐには、自分の思考パターンを認識することが大切です。そこで今回は、アメリカで認知療法(cognitive therapy)を構築した精神科医Aaron Beck氏がまとめた、私たちが陥りがちな自動思考(automatic thoughts)12種類を紹介します。

■目次

  1. All-or-nothing thinking (白か黒か両極端で考えてしまう)
  2. Catastrophizing(悲観的)
  3. Disqualifying or discounting the positive(ポジティブなことに目をつぶる)
  4. Emotional reasoning(証拠を見ないで感覚に頼る)
  5. Labeling(レッテルを貼る)
  6. Magnification/minimization(過大/過小評価する)
  7. Mental filter(自分の認識にフィルターをかける)
  8. Mind reading(他人の考えを邪推する)
  9. Overgeneralization(過剰一般化する)
  10. Personalization(個人的な問題として受け止めてしまう)
  11. 「should」and「must」statements(「しなければならない」と思いがち)
  12. Tunnel vision(悪いところしか見ない)

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1. All-or-nothing thinking (白か黒か両極端で考えてしまう)

自分の置かれた状況は「良い」と「悪い」の2種類しかないと考えてしまう状態です。選択肢がほかにあることに気づいていません。

例:「すべてにおいて完璧でなければ、私はダメな人間だ。」


2. Catastrophizing(悲観的)

将来について悲観的な見方しかできません。絶対に悪いことが起きると考えています。

例:「私はきっと緊張してしまって、絶対にうまく成し遂げることができないだろう。」


3. Disqualifying or discounting the positive(ポジティブなことに目をつぶる)

自分の過去の数々の成功体験を否定してしまいます

例:「あれはたまたまうまくいっただけで、私には能力があるとは思えない。ラッキーだっただけだ。」


4. Emotional reasoning(証拠を見ないで感覚に頼る)

うまくいったという証拠があるのに、なんだかダメなような気がして、ついには「ダメなんだ」と思い込んでしまいます

例:「私はそこそこ良い仕事をするけれど、それでもやっぱり、自分はダメだという気がする。きっと自分はダメなんだ。」


5. Labeling(レッテルを貼る)

自分や他人に確証もないレッテルを貼り、「そういう人なんだ」という思いで凝り固まってしまいます。

例:「私はダメな人間だ。」、「彼は遊び人だ。」


6. Magnification/minimization(過大/過小評価する)

自分や他人を評価するときに、ネガティブな点を過大評価し、ポジティブな部分を過小評価してしまいます

例:「あまり良くない評価をもらったということは、私はやっぱりダメなんだ。良い評価をもらったとしても、それは必ずしも私に能力があるということにはつながらない。」


7. Mental filter(自分の認識にフィルターをかける)

全体を見ないで、小さなミスにばかり注目してしまいます

例:「この1カ所だけポイントが低いから、私はやっぱり良い仕事ができていないんだ。」


8. Mind reading(他人の考えを邪推する)

周りの人が考えていることを、自分の思い込みだけで信じてしまいます

例:「ボスはきっと、私にこのプロジェクトを任せるのは早いと思っているに違いない。」


9. Overgeneralization(過剰一般化する)

自分で作ったネガティブなルールに縛られてしまいます。

例:「彼に会うのがこんなに億劫だということは、私は彼のことが好きではないんだ。」


10. Personalization(個人的な問題として受け止めてしまう)

相手の行動がネガティブなのは自分のせいだと思ってしまいます。

例:「彼がいつもデートに遅刻してくるのは、きっと私のことが好きではないからだ。」


11. 「should」and「must」statements(「しなければならない」と思いがち)

自分や相手の行動や意見に対して、「こうであるべき」とか「こうしなければならない」という強い観念を持っています。

例:「男なんだからしっかりしなければいけない」、「母親は強くなければいけない」


12. Tunnel vision(悪いところしか見ない)

自分は暗いトンネルの中にいて、なかなか光が見えないと思ってしまいます。

例:「もう新人ではないのに、雑用しかさせてもらえない。こんな会社にいても意味

がない。」


中には重複するところもありますが、自分が参っているときの思考パターンが見えてきたでしょうか。嫌なことがあったときに悪い方に考えてしまうのは、人の常。しかし大事なことは、そんな自分に気づいて「またいつもの思考パターンに陥ってるぞ、〇〇(自分の名前)」と呼びかけることです。そして、それに気づいて正常な思考を取り戻したら、「お帰り、〇〇(自分の名前)」と温かく迎えてあげてください。これを繰り返すことによって、少しずつネガティブループから抜け出すことができるようになります。

(山内純子)