子どものときに筋トレをすると身長が伸びなくなるのは本当でしょうか? 特に思春期の男子にとって、身長の問題は重たい話題ですよね。大人の男性でも身長にコンプレックスを抱いている方を何人か知っていますし...。ということで今回は、成長期と筋トレの関係を探ってみます。
Photo by Thinkstock/Getty Images.結論から言うと、「子供の頃筋力トレーニングを行うと身長が伸びない」説には統計的な裏付けはありません。厳密なところでは専門家の意見がわかれています。ただし、中学生くらいから循環器系のトレーニング(エアロビクス)をして、筋力トレーニングはホルモンの分泌が盛んになる高校生前後からやったほうが良いとの通説があります。
子どもが筋トレをすると「筋肉が太くなるにつれて骨を抑えつける力が加わり、骨の成長を妨げるのではないか」と疑問視するウワサがあります。しかし、研究結果では筋肉が抑えつける力より骨が成長しようとする力のほうがはるかに強いとのこと。適度な運動やトレーニングは成長ホルモンを分泌させる効果があるので、筋肉はもちろん身体を構成するのに必要です。
なので、「筋肉をつけると身長が伸びない」は間違いです。子どもの頃には筋トレをしてもほとんど筋肉がつきません。高校生ぐらいになって体が大人に近づく時期に筋トレは効果を出し始めます。「筋肉の増加⇒身長の停止」ではなく、「身長の停止⇒筋肉の増量」が正解なのです。
成長期のトレーニングを考えるとき、よく引き合いに出されるのは、「スキャモンの発育曲線(PDF形式)」というグラフです。成長発育を20歳のレベルを100%として、各体組織の発育の特徴を一般型、神経系型、生殖器系型、リンパ系型の4つのパターンにわけたものです。
身長や体重・肝臓や腎臓などを示し、乳幼児期まで急速に発達し、第二次性徴が出現し始める思春期に再び急激に発達するのが特徴です。
器用さやリズム感を担います。出生直後から急激に発育し、4~5歳までには成人の80%程度にまで達します。
免疫力を向上させる、扁桃・リンパ節などのリンパ組織の発達です。生後から12~13歳までにかけて急激に発達し、大人のレベルを一旦超えて思春期ごろから大人のレベルに戻るのが特徴。
男児の陰茎・睾丸、女児の卵巣・子宮などの発育です。14歳あたりから急激に発達し、男性ホルモンや女性ホルモンの分泌も多くなります。
「スキャモンの発育曲線」を元に、わたし大山が「健康で運動ができる子」を作る案を考えました。
- 幼児期(5歳~8歳)には、多種多様な動きを含む遊びをたくさん経験させる。
- 9歳~12歳は、スポーツに必要なスキルを獲得するのに適切な時期にする。
- 13歳~16歳は、持久力トレーニングを主眼において有酸素運動を取り入れ、粘り強さをつける(この時期の筋肉トレーニングには専門家の意見が二分化しています)。
- 高校生になったら「ホルモンによる骨格筋の発育」が起こるので、パワー・瞬発力をつける筋トレや瞬発力系のトレーニングが効果的。
成長段階にある子どもに対しての筋トレや無理な負荷は、怪我やスポーツ障害のもとになります。無理やり運動させると、過度の負担やストレスで成長を害するとも考えられます。現代は子どものスポーツ離れが問題となっていますが、「毎日山や家の周りで走り回って遊ぶのは楽しい」と大人が一緒になって教えてあげれば、子どもも自主的に元気に走り回るようになるのではないでしょうか。
(大山奏)