我が家に坐す三毛猫記者(左)とシマシマ記者。陽差しも春めき、明るい窓辺で日なたぼっこする時間も日増しに増えている様子です。私も猫と暮らす者として御多分に漏れず、膝上でまどろめば寝顔を狙ってパチリ、外のカラスが怖いと威嚇すれば「カカカカ」と鳴く顔をパチリ、すったもんだの猫挌闘が始まればリングサイドカメラマン風情でパチリ、遊び相手をせよと呼ばれれば猫じゃらしを片手にパチリと、カメラを片手に猫と戯れている者の一人であります。
しかしながら、普段使っている一眼レフカメラを片手で扱うのは至難の業。せっかくシャッターチャンスに遭遇したのに、何度撮り損ねたことやら。そんな、一眼レフではなかなか撮れない、一瞬でしかも気まぐれな猫の仕草や表情を撮影するのに、このたびカシオから発売されたエクシリム「ZR20」が最適! と担当者の方(猫好き)からお墨付きの言葉をいただき、その言葉をきちんと確かめるべく、実機をレビュー致しました。
結論から言えば、猫撮影用と言っても過言ではない逸品でしたので、その実力は以下にて。全国の猫好きのご期待にお応えし、猫写真満載の記事でお届けします。
ZR20の仕様や、諸機能の紹介は公式サイトに譲るとして、猫を撮る上でかなり便利な機能を絞ってご紹介しましょう。その機能とはこちらの3つ。
■一眼レフ並みにボケ味を効かせられる「背景ぼかし」
マニュアル設定のないコンデジでF値を調整するには、ズームを効かせて調節するしかありません。狭い室内で画角を保つため広角側にすると、どうしても被写界深度の深い、のっぺりとした写真になりがちです。
その弱点を補ってくれるのが、最大30枚/秒のハイスピード連写。連写と背景ぼかしとどう関係するのか? というと、瞬時に複数枚を撮影すると、写真をカメラが解析し「背景」と「被写体」とを見分けて、「背景」と認識したほうだけシャープネスを変えてぼかしてくれるのです。論より証拠、作例を見てみましょう。
どちらも広角側(35mmフィルム換算で約26mm)で、手前のシマシマ記者にピントを合わせた写真です。背景左側の緑のカーテンや、右側のキャットタワーを比較すると、ボケ味が違うのが分かります。「背景ぼかし」モードで撮影すると、「シャシャシャシャ」と高速連写&背景ぼかし処理が1度に行われ、SDカードにはキレイに背景のぼけた写真が1枚記録されるわけです。一眼レフでの撮影のように、本体を取り出して、単焦点レンズを付けて...などという手間もなく、超簡単。心なしか被写体もご満悦です。
■咄嗟の瞬間をさかのぼって撮影する「パスト連写」
猫と暮らしている方であれば「シャッターを 切ったときには 遅すぎる」という瞬間に遭遇したことは間々あるかと思います。まあ、猫と暮らさずともそういうシーンはあるわけですが、「何度も遭遇するのに毎回撮れない」というジレンマは、猫撮影にはつきものなのです。その不完全燃焼を見事に解消するのが、ZR20の「パスト連写」機能です。
カメラのメニュー画面では「パスト連写」と表示されないため、最初は分かりにくいですが「BSボタン」を押す→「高速連写(一覧画面2頁目の中段左端にあるHSマーク)」を選択して「SET」を押す→コントロールボタン(「SET」ボタン周囲のリング状のボタン)の下を押す→画面右端に表示される「高速連写fps(上から2番目)」と「1秒あたりの撮影コマ数(上から3番目)」「パスト連写枚数(上から4番目)」を設定する、という手順で撮り逃した過去を撮れるようになります。
現在は1秒(1.00sec)。
上の写真のように設定したら、あとは普通に撮影するだけ。半押しした瞬間からカメラのメモリに保存が始まり、シャッターを切った瞬間から設定した秒数だけさかのぼって連続撮影されます。これを分かりやすくお伝えすべく、GIF動画作成用フリーソフト『Giam』をGIF動画にしてみました。
ご覧のように、シャッターを押し切ったのは首元に飛びかかった瞬間。パスト連写機能を使い、半押しをしておくと、飛びかかる直前の威嚇しているところから写真が記録されます。尻尾を振りまくるあの緊張感も逃さず撮影できるわけです。ぶれた取っ組み合い写真しか残せなかった人も、これでもう歯がゆくありませんよ。いやー、すっきり。
■「猫の目フラッシュ」を防ぐ「HSナイトショット」
「猫の目 フラッシュ」とググルと出てくる、猫の目にストロボからの光が反射してしまった写真たち。猫と暮らす人ならば、必ず1枚は持っていると言っても過言ではありません。暗いところでストロボを焚いて、カメラ目線を要求するとどうしても発生する現象です。これを解決するのが「HSナイトショット」。HSと冠が付いていることからも分かるように、これも高速シャッターの賜物です。
原理は、暗い被写体を連写して、置合わせやノイズ処理、画像合成などをEXILIMエンジンHSが瞬時に行い、ISO12800レベルの高感度画像を作成します。明るさゼロの場面ではこの機能を持ってしても明るくはできませんが、「肉眼では見えるのに露光不足で真っ暗な写真になる」といった状況で威力を発揮します。論より証拠より猫画像をはやく見せろ、というリクエストにお応えし、作例をご覧いただきましょう。
ご覧のように、1枚目は露光不足で言わずもがな、2枚目はストロボ発光時にありがちな「前面の被写体だけ光があたる」状態。三毛猫記者もまぶしそうです。3枚目も、1、2枚目と同じく手持ちで撮影したものですが、猫だけではなく背景まで明るく撮れています。
■おまかせモード「プレミアムオートPRO」だけでも、安定して綺麗な撮影がメニュー選択さえ惜しい! というときには、高機能なおまかせモード「プレミアムオートPRO」が使えます。いわゆる「これ一つで大丈夫!」モードではありますが、BSモードでの猫撮影にも引けを取らない撮影ができます。こちらもやはり作例を見ないことには、判断できませんよね。先ほど「HSナイトショット」での作例と同じ状況で、「プレミアムオートPRO」で撮影するとどうなるかというと...。
「HSナイトショット」での撮影と「フラッシュなし」での撮影と、ちょうど中間といった塩梅です。オートでもここまで撮れるんですね。明暗差の大きいシーンでもハイスピード撮影&合成機能を行ってくれる「HDR(ハイダイナミックレンジ)」機能でキレイにしてくれます。
また逆光時でも威力を発揮してくれ、こんな写真も「プレミアムオートPRO」で。
窓の外に見える空と三毛猫記者。ストロボなしだと逆光で猫が黒く、ストロボを焚くと空の色が出ない...といったシチュエーションも、この通りです。
以上、猫を撮影するという用途から、カシオの新製品「ZR20」の性能を紹介してきましたが、このほかにも、GIZMODOでは起動もレスポンスも速い、快適な操作性と「ハイスピード動画撮影(スロー動画)」の機能が紹介されていますので、コンデジ選びのご参考にどうぞ。ちなみに妻にも撮影協力を願ったところ、私よりも撮影モードを駆使していろんな写真を撮ってくれました。撮影メニューの構成と操作ボタンの少ないシンプルさが、女性でも使いやすいようです。高速連写で一杯になった猫写真フォルダから、厳選猫写真を以下の写真ギャラリーにて。
特にご覧いただきたいのは、6枚目の写真。ZRシリーズならではの機能「HDRアート」は、他のカメラでは作ることのできない世界観を簡単に表現できる驚きの機能。猫を撮れば、毛並みに鮮やかなアート効果を与えられます。背景にカラフルものがあれば、より一層素敵な作品を撮ることができるはずです。
猫好きの方は、サクサク撮れて気持ちいいZR20を使って、ぜひ「撮りたかったのに撮れなかった瞬間」を手中に収める楽しみを体感していただければ幸いです。また、ZRシリーズのスペシャルサイトではペットの撮影テクニックも掲載されていますので、こちらもご覧あれ!
(常山剛)