ヴィンヤサスタイルのヨガは、ポーズとポーズの間も止まることなく動いていくので、運動量があり、かなりしっかりと汗もかきます。
Photo by lululemon athletica.ヨガの基本の一連の動き「太陽礼拝」(英語だとサンサルテーション、サンスクリット語だとスーリヤナマスカーラ)も代表的なヴィンヤサです。太陽礼拝は交感神経を活性化するので、意識が覚醒して体にエネルギーがチャージされます。よって、夕方や就寝前よりも、朝に行う方が効果的です。ヨガをする時は、できるだけお腹が空腹に近い状態が望ましいので、寝起きにそのままやってもいいです。お腹の中に何かが入っていると、ヨガの最中に気持ちが悪くなったり、効果がうまく出なかったりすることがあります。
呼吸と動きを連動させる以外にも、大切なポイントが2つあります。
1つ目は胸式呼吸といって、息を吸う時も吐く時も、お腹は凹ませ、胸だけを膨らませて呼吸をすること。口は閉じて、鼻だけで呼吸をします。
2つ目は、すべてのアーサナ(ポーズのこと)で見る視点が決まっていること。これを「ドリシティ」と言います。決まった場所を見ることで、自然と正しいアーサナの形になりますし、集中できます。
では、実際に太陽礼拝をやってみましょう。ヨガに色々な流派があるように、太陽礼拝も流派によって多少違いがあります。今回ご紹介するのは、アシュタンガヨガの太陽礼拝です。アシュタンガヨガでは、カウントをサンスクリット語で行うのが一般的なので、キャプションにも入れています。デモ動画の下に、それぞれの動きの詳しい解説を書きましたので、ご覧ください。
両足を親指からかかとまでピッタリとつけて、両手は体の脇に添えて真っ直ぐに立つ。これが、基本の姿勢サマスティティヒです(ドリシティ:鼻先)。
- 息を吸いながら(以下【吸う】)、両手を上に真っ直ぐ上げて、頭の上で手の平をつけます(ドリシティ:手の親指)。
- 息を吐きながら(以下【吐く】)、両手を降ろして床に付けます。床に手がつかない人も、できるだけ手を床につけるつもりで下げて、頭も下げます(ドリシティ:鼻先)。
- 【吸う】、手は床につけたまま、背中を少し反らして顔だけを上げます(ドリシティ:鼻先)。
- 【吐く】、両足を後ろに大きく下げ、両手が肩の上に来るようにします。肘を直角に曲げて、腕立て伏せをする時のような体勢になるまでを、一息の間にやります。両足を後ろに下げる時に、できる人はジャンプして下がりましょう(ドリシティ:鼻先)。
- 【吸う】、肘を真っ直ぐに伸ばしながら、背中を反らせて顔を上に向けます。足の甲は床に付けます(ドリシティ:眉間のあたり)。
- 【吐く】、反らした背中を元に戻しながら、お尻を上に高く突き出し、体を「く」の字のような体勢にします。両手と両足は床にしっかりと付けます。最初はかかとが床につかない人がいるかもしれません。そういう時は、足の位置を少し前にズラしてもいいです。頭を下げて、あごを引きます(ドリシティ:おへそ)。この体勢で5呼吸します。
- 【吸う】、両足を両手の間に戻します。できる人はジャンプして戻ります。顔は上げて、4. と同じ体勢になります(ドリシティ:鼻先)。
- 【吐く】、両手は床に付けたまま、頭だけを下げて、3. と同じ体勢になります(ドリシティ:鼻先)。
- 【吸う】、体を起こしながら両手を上に上げて、2. と同じように頭の上で合掌します(ドリシティ:手の親指)。
- 【吐く】、両手を降ろして、1. と同じサマスティティヒに戻ります(ドリシティ:鼻先)。
最初は呼吸と動きを連動させるのが難しかったり、次の動きや視点の位置が分からなくなって、スムーズにできないかもしれません。しかし、何度も練習していくうちに慣れますし、段々とフロー状態になっていきます。フロー状態というのは、集中しているのにリラックスしている、脳にとてもいい状態で、この時に最高のパフォーマンスが発揮できると言われています。ヨガでフロー体験をすることによって、日常生活でも集中して良いパフォーマンスを発揮しやすくなります。
一番大切なのは「呼吸をすること」です。緊張したり、ストレスが掛かり過ぎると、一時的に息が止まった状態になる人がいます。運動中でも必死になっていると、呼吸が浅くなっていることがあります。常に呼吸に意識を向けて、しっかりと呼吸をしてください。日頃運動をしていない人は、筋力が落ち過ぎてスタミナがなく、疲れやすかったり、デスクワークなど同じ体勢で長時間仕事をする人は、体がガチガチに固まっていたりします。体がそのような状態では、疲れたから休もうと思っても、うまく体を休められないことがあります。ヨガやストレッチでよく「力を抜いてください」と言われますが、体の準備ができていないと、意識的に力を抜いてリラックスするのも難しいです。
太陽礼拝を何度も練習すると筋力がついてきます。適度に筋力をつけて、リラックスしやすい体を作りましょう。深いリラックス状態にするためにも、適度な運動は非常に効果的です。
(的野裕子)