他の人に「No」を言うのは、「Yes」と答えるよりも何倍も難易度が高いもの。罪悪感や不安、プレッシャーなどから「つい頼まれると断れない」、「おかしいと感じても、つい周りの空気に流されてしまう」なんてことありませんか? こちらでは、賢くポジティブに「No」を言うためのコツについて、採り上げてみたいと思います。
ウェブマスターやウェブサイトデザイナーのためのブログ「A List Apart」では、何かに反対することありきの「No」ではなく、本来注力すべきこと・やるべきことに目を向けるための「No」は、ときに必要なものだと説いています。たとえば、最終成果をよりよいものにするため、自身の能力やスキルなどをもとに、あえて相手の要求に「No」を言い、代替案を示すことも「プロ」の仕事のひとつなのです。
とはいえ、ヒトは自分の主張に「No」を言われると、大なり小なり気分を害するもの。「No」を言うとき、どのようなことを実践すればよいのでしょうか? この記事では、身の回りで起きた事例やWilliam Ury氏著『The Power of a Positive No(邦題:最強 ハーバード流交渉術―仕事が100倍うまくいくNoの言い方)』を参考に、以下の12点のポイントを挙げています。
1: 成功事例を引用する相手の要求をそのまま実行するよりも、別の方法やアプローチのほうがベターであることを、実際に後者を採用して成功した事例を挙げて、説明しましょう。相手が考えていなかった視点や情報を与えることで、よりよい選択ができるように促すことができます。
2: データで根拠を示す「No」という自分の主張を、裏付けるデータを示しましょう。客観的な事実を示せば、相手も折れやすくなります。
3: 相手の主張どおりにやるとどうなるのか?をシミュレーションする時間も費用も有限。予め想定された予算内で、成果を最大化させることが重要です。相手が「あれも、これも」と欲張りがちになっていたり、予算を大幅に超えるオーダーをしてきたら、「オーダーをそのまま実行すると、どれくらいのコストがかかりそうなのか?」を具体的な数値でシミュレーションして、相手と共有しましょう。相手の主張を「可視化」するのです。
4: 「誰のために何をするのか?」を明らかにする最終的に目指している成果は「誰が何をするためのものなのか?」を改めて明らかにし、両者の認識を擦り合わせましょう。たとえば、ソーシャルメディアサービスの構築プロジェクトであれば、どんなユーザに何をさせたいのか? どう使わせ、どのような利便性を提供したいのか? を明確にした上で、やるべきか? やらないべきか? を判断するよう、導くのです。
5: すぐに「No」と言わない相手の主張にすぐ反応してしまうのはNG。自分の意図と異なることを言ってしまうおそれもあります。私たちが思うほど、緊急性を要することはそうそうありません。まずは冷静になって、その問題についてじっくり考えましょう。こうすれば、自分の主張がクリアになってきますし、相手も聞く耳を持ちやすくなるでしょう。
6: 自分の主張を特定する自分は何に対して「No」と言っているのかを、はっきりさせるとベター。「Yesか、Noか」という立場を明らかにするのではなく、自分は何を心配しているのか? 何を守ろうとしているのか? を相手にわからせるようにしましょう。
7: 最終手段を持っておく最終手段としての「腹案」を持っておきましょう。事前に十分準備しておけば、自分のスタンスに自信を持って臨むことができます。
8: 相手に媚びないヤケになっても、何も得るものはありません。確信と事実に基づき、自分の意思を主張しましょう。相手に媚びると、むしろ自信なげで依存的と見られ、足元を見られることにも...。
9: 事実を示し、別の結論を促す相手が、自分と同じ情報や事実に基づいて判断しているとは限りません。単に自分の意思を主張するのではなく、相手が判断する上で、ベースとなる必要情報を提供しましょう。
10: 主張はできるだけ簡潔にダラダラと長い主張は、じっくり考えつくされたものとは見えません。ポイントをまとめて、できるだけ簡潔に述べましょう。
11: 代替案を示す「No」を主張するだけでなく、代替案を示しましょう。アイデアを共有することで、相手との信頼関係や尊重し合う気持ちも生まれます。
12: あくまでも礼儀正しく荒らげた声のトーンや乱暴な言葉遣い、相手を傷つけるような言動はNG。せっかくの意見も、相手から聞く耳をもってもらえません。くれぐれも、冷静に、丁寧に、相手に敬意を払うこと。
安易に馴れ合いになってしまうよりも、ときにはポジティブに「No」を言い合うことで、よりよい成果につなげることができます。「建設的に言うべきことは言い、実行力を持ってやるべきことはやる」を実践し続ければ、プロフェッショナルとしてのあなたの信頼度や評価も上がることでしょう。
もちろん、自分の主張を押し付けるだけでなく、相手の主張に耳を傾けるの大切なこと。Ury氏によると、「No」を言う前にまず「Yes」を発するのも、ひとつのテクニックだとか。相手の言い分に「なるほど」と相槌を打ったり、同意できる部分を引用して「~については、私もそう思います」と述べるなど、相手を受け入れる姿勢を、きちんと伝えることも必要です。
これらのコツを参考に、上手に「No」を言えるプロフェッショナルになってみましょう!
No One Nos: Learning to Say No to Bad Ideas
[A List Apart]Jason Fitzpatrick(原文/訳:松岡由希子)