家計簿ソフトやアナログな家計簿、エクセルで作成したもの、などなど、家計簿を付けるためのツールは世の中にたくさん存在します。
ツールを手に入れたのはいいものの、三日でやめてしまい、「三日坊主とはよく言ったものだ」などと感嘆の言葉を述べ、次の人生の目的に向かって、気を引き締めて歩き始めたまではよかったものの、やはり、お金と生活とは切っても切れないものであり、お金を貯めるためには現在の自分の経済状況を把握しておくのは大事である。従って自分は家計簿を付けるところから始めるべきである、しかし三日坊主とは言い得て妙だ、しかしお金と生活とは切っても切っても金太郎飴、というエンドレスループにはまり込む、という物語は非常に一般的、かつ庶民的であり、古くは江戸時代の前半から世代を超えて言い伝えられて来た心温まる小さなストーリーかどうかは知りませんが...。
単刀直入に言うと、自分がアラブの石油王だったとしてもお金とは際限のあるものであり、資本主義に基づく現在の社会において、自分を中心にお金がどんな風に回っているのか、もしくは流れているのか、というのは特にアラブの石油王ではない我々が知っておいて損することではありません、よ。
個人的な話であれなんですが、僕は普段はどうしようもないぐうたらな人間であるにも関わらず、東京で一人暮らしを始めてから今までの9年間、ずっと家計簿をつけ続けている、という類い稀な才能をなぜか持ち合わせているのです。その才能のおかげで、道路に落ちている50円玉を見逃さなくなったとか、猫にもてるようになったとか、近所の弁当屋の女の子が顔を覚えてくれて、何も言わなくてもご飯が大盛りになった、など、何か良いことがあったかというと全くもってないのですが、この一つの行為を継続させていくにあたって意識的に実行していることなんかのお話を今回はしてみようかな、と思います。
昔はエクセルでテンプレートを作ってやっていましたが、時は流れ、家計簿を付けるレベルの作業ではエクセルの高度な機能ははっきり言って不要です。今は Gmailアカウントとネット環境さえあれば使えるGoogle Docsのスプレッドシートを使ってます。実生活におけるお金の管理は基本、足し算と引き算だけなので、Google Docsのスプレッドシートにある機能だけで十分です。
Google Docsを使う最大の利点はなんといっても場所を選ばず、どのパソコンからでも入力できること。ランチを食べた後、今日のランチがいくらだったのかをさくっと記録しておく、なんてことが可能です。これはエクセルの時代には出来なかった偉業です。
とは言え、毎日毎日スプレッドシートを開く余裕もないかも知れません。大抵の三日坊主は三日前にどこで何をしていくら使ったのかがさっぱり分からず、しかもこの手の個人情報は他人に聞いても絶対に分からない、ということに由来します。
では、どうすればいくら使ったのかの金額をさかのぼって入力していくことが出来るでしょうか? 家計簿を継続的に習慣的に付けていくことが出来るでしょうか?
そんなポイントを下記にまとめてみました!
UPDATE:筆者のまいるす・ゑびすさんが、Excelファイルの家計簿テンプレートを作ってくれました! こちらからダウンロードできます。
1.必ずレシートをもらうこと
レシートとは言うまでもなく、お店で何かを買った時におつりと一緒にもらえる白い一片の紙切れのことですが、これはどんなに酔っぱらっていても自分がいくら使ったのかをもれなく明確に記録してくれるという非常に価値のある文化財です。
コンビニやスーパー、レストラン、タクシー、電子マネーのチャージなどでお金を使った場合で、可能な場合には必ずレシートをもらい、サイフの中などに入れておくと、まことにもって驚くべきことにこのレシートというものには多くの場合、金額以外にも店の名前や場所、はたまた日付などのお役立ち情報が盛り込まれているので家計簿管理を続けていく上では不可欠な存在です。
今まで粗末に扱ってしまってごめんよ、などとつぶやきながら日本海沿岸辺りの崖に立ち涙ながらに過去の自分を責める義務感にかられる必要は一ミリもないですが、家計簿管理の第一歩はレシートをもらう習慣を付けること、です。
コンビニでジュースを買った時についついエグザクトアマウント、つまり、請求されている金額と偶然にもぴったりと一致する額を支払ってしまい、レシートがもらえない場合もありますが、そんな場合はスマートなクレームの入れ方の記事を参考にして、店員さんに「すみません、レシート頂けませんか?」とちょっぴりの勇気を振り絞ってお願いしてみて下さい。願い事のほとんどは実現しないのではないか、と思えるこんな世知辛くもややこしいご時世ですが、このお願いだけはほぼ100%の確率で叶えてもらえます。
これらのレシートは自分の家計簿に金額を入力し終わるまで絶対に捨てないで下さい。逆に入力し終わってからは未入力のものと入力済みのものとが混在するとややこしくなるので、すみやかに捨てることをおすすめします。
またレシートが溜まってくるということはしばらく家計簿への入力をしていない、というサインにもなり、レシートを捨てたいがために入力を行う、という一連の流れ作業的なかろやかなグルーブ感を生み出してくれます。レシートをもらうところからすでに戦いは始まっているのです! レシート集めに成功したなら、この勝負、半分はもう決着がついたようなものです。
家計簿とはあまり関連がないですが、このレシートを必ずもらうという習慣のおかげで、タクシーに置き忘れた携帯がすぐに見つかったり、と思わぬところで副産物があったりもしますよ。
2. 可能な限り電子マネーを活用すること
一円単位のやり取りが増えると、管理する手間も増えてしまいます。この手間は、電子マネーを出来る限り活用することによって減らすことが出来ます。
家計簿のテンプレートに電子マネーの欄を設け、チャージした金額をここに入力していきます。例えば、5000円なら5000円チャージした際にそれを記録しておけば、その後の電子マネーによる支払いは記録しなくても問題ありません。むしろこの場合はレシートをもらう必要もありません。ですが、チャージした場合には上記の1.のルールに従って、必ずレシートをもらうようにします。
3. テンプレートの項目を出来る限り減らすこと
テンプレートを自作する際の利点は項目が自分で設定出来ることです。が、しかし哀しいかな、これが逆効果となり、項目を細かく設定しすぎているがために三日坊主が君臨してきてしまうケースも多々見受けられます。これを打破するには一番良い方法はテンプレートの項目を減らすことです。
- ランチ
- 食費
- 電子マネー
- 交通費
- 交際費
- 音楽関連
- 衣服代
- 毎月の支払
- その他
僕の場合はこんな感じで設定しています。
タバコを吸う人はタバコ代、カメラが趣味な人はカメラ関連、などくくっていくと、恐ろしいことに自分がそれにいくら使っているのかを知ることが出来ます。家賃、光熱費、水道代、携帯電話代、インターネット回線代、年金や国民保険、その他毎月発生するものはまとめて毎月の支払、という項目にぶち込んでいます。
散髪に行った場合などは、一番関係ありそうな衣服代に含めてます。あまりどれにも関連なさそうなものは、その他に面倒みてもらいます。
後日何を買ったのか忘れてしまいそうなものは、セルを右クリックしてコメントを追加しておくと後の混乱が避けられます。余力があればどこでランチを食べたとかコメントなどで書いておくと、自分が月に何回どこどこのレストランに行っている、などが分かってちょっと得した気もしますが、最初からこういうことをやると、めんどくさくなってやらなくなるので、おすすめはしません。
4. ネットバンキングを活用すること
ご存知の方も、活用している方も多いかと思いますが、ネットバンキングで自分の口座の最近の入出金は簡単に確認することが出来ます。通帳記入でも同じなのですが、通帳記入してから遡って記録しようとすると、精神的にも肉体的にもかなり面倒くさい作業となり、またそのデータを手入力をする、という悪夢のような事務作業が発生します。
この手の事務作業はめんどくさい指数を大幅に引き上げ、めんどくさい指数の引き上げは継続性指数に壊滅的なダメージを与えてしまうケースがあり、システムがダウンしてしまう、ネグレクトされてしまう、イライラによる体温の上昇が北極の氷を溶かし、マッコウクジラの赤ちゃんが行き場を失う、はてには家計簿を付けるのをあきらめてしまい、三日坊主と言う言葉を考えたヤツは天才に違いない、しかし坊主、と付けるからにはお寺の住職さんあたりであったかも知れない、うーむ、ずいぶん人格のある人だったことだろう、とエンドレスループが再び再生されてしまう傾向にあります。
ネットで確認する場合、入出金状況の確認からビロッとコピペし、いついくら引き出し、いついくら引き落とされ、いついくら入金され、今月はこのくらい収入があって、これに対して今月はこれだけ出費があった、というのを複数の銀行を使っている場合でも一つのシートにまとめておけるので、自分の経済状況が簡単にいつでも確認出来てかなり重宝します。
ネットバンキングだけに限らず、簡単に言うと、めんどくさいことはやらないことです。だって残高確認のために通帳を持ってわざわざ銀行に歩いていくより、ネットで見る方が楽じゃないですか?
5. 細かいことは気にしないこと
一円単位まで正確にやろうとすると、逆にストレスになってしまいます。家計簿を付ける目的は貯蓄のためであったり、貯金のためであったり、老後の生活資金だったり、ただ何となくだったりしますが、一番知りたいことはおそらく一つ、それは「おれはいったい毎月いくら使っておるのだ?」ということではないでしょうか?
なので、極端な話、テンプレートに項目なんてなくても良いのです。使ったお金の額を単純に計上していくだけでもこの目的を果たすためだけであれば十分です。食べたものを記録するだけのダイエットじゃないですが、あまり深く考えずにとりあえずお金の流れをレシートに基づいて記録してみるところから、全ては始まると思うのです。
それを続けてみて、「一体毎月おれは酒代いくらかかっているのだ?」という疑問が湧いたなら新たに「酒代」という項目を別途設定していけば良いわけで、テンプレートはいくらでも変えられるわけですし、おおらかな気持ちでとりあえず続けて見て下さい。
どうしてもあの日の飲み会の割り勘がいくらだったのかが思い出せない場合や自動販売機で買ったジュースが2本だったのか3本だったのか、などは大体の金額を入れておくだけでも何もデータがないより全然ましです。
6. なんらかの楽しみを見出すこと
なんだかんだ言っても楽しくないと続きません。だって人間だもの。
と、深く考えてやったわけではないですが、僕の場合はテンプレート末尾に備考欄を設けて、誰と会ったとか、どこへ行ったとか、何を買った、などのメモを一言二言で書いていってます。これもはっきり言って何の役にも立ちませんが、長く続けていると、5年前の今日、誰と会ったとか何をしたとかを辿ろうと思えば調べられてしまう、のです。
と書いたところで気になって調べてみたところ、2005年の6月9日の欄には一言curryと書いてあったので、おそらくバーモントカレーなど市販のカレールーを使ってカレーを調理した挙げ句、こともあろうかそのカレーを白いご飯にかけ、夕食としてスプーンなどの器具を用いて福神漬けと一緒に食べ、さらに次の日の朝、もしくは夜あたりにも再食したであろう可能性が高いことが読み取れます。カレーうどんなどを後日食べたのではないか、という疑惑も拭いされないところであり、三井住友銀行の当時の残高が893円であるところから推測すると当時かなりお金のやりくりに困っており、数日分の食べ物を確保するためカレーを作る、という行為に及んだ、という意図も読み取れるわけです。
こうして考えると、数字で書かれた日記的な要素も含んでいるわけで、むしろこの備考の部分が楽しくて続けている感も実際否めないところです。
またテンプレートを変え続ける、つまり自分仕様のテンプレートが成長を遂げていく、というのも鉢植えの植物をベランダで育てるくらいの喜びを生活にもたらしてくれます。
7. 頻繁にファイルを開くこと
入力作業はファイルを開かないと始められません、というのはわざわざ説明するまでもないでしょうが、目にした看板に文字が書いてあるとついつい読んでしまうように、人はきっかけがあるとそれに取り組む習性を持っています。
毎日パソコンのメールをチェックしている人であれば、そのついでにちょっと開いてみるとか、「Morning Coffee」なんかのアドオンに組み込んでおき、日常的に覗くほかのサイトと合わせて開くように設定しておくとか、ブックマークしておくとか、デスクトップにショートカットを貼っておくとか、ちょっとした工夫をすることによってめんどくさい指数を下げておくと継続性指数が上昇し、続け易くなります。
参考までにですが、僕が今使っているテンプレートを公開しておきます。コピーして項目を削る、追加する、など自分仕様に作り替えて使ってみるなり、最初から自分で作るなり、して見て下さい。
追記:Excelファイルのテンプレートはこちらからダウンロードできます。
ユダヤ人大富豪の教えじゃないですが、お金から解放されるためにはまずお金についてよく知ること、特に自分の周りを流れているお金について意識的でいることではないでしょうか?
今すぐでなくても、お金を貯めたい、と将来思った時に今までのお金の使い方のデータがあると戦略もたて易くなりますし、一日分の支出を記録するのにそんなに時間はかからないですよ。
ご意見、ご感想、Google Docsのスプレッドシートの使い方などに関する質問はコメントでお寄せ下さい!
それではお出かけの際には、レシートの入手をお忘れなく!
(まいるす・ゑびす)