このように実際に自分の身の回りで起きていることを振り返って見ると、ひとつの疑問がわきあがります。そもそもマルチタスク志向は生産性向上のために絶対的なものなのでしょうか? 米ブログメディア「WebWorkerDaily」では、そんな疑問に一石を投じる記事を紹介しています。
「WebWorkerDaily」では、行き過ぎたマルチタスク志向はかえって生産性を損なうと指摘し、シングルタスク志向への回帰こそが生産性向上につながると述べています。シングルタスクとは、ひとつのタスクをひたすら続けて行うプロセスを意味し、ひとつのタスクが終わるまで次のタスクには移らないのが鉄則です。従って、事前の優先順位付けをいかに的確に行うかが、仕事の成否のポイントでもあるわけですね。
シングルタスク志向は一見単純なアプローチですが、マルチタスクに慣れてしまった現代のビジネスパーソンにとって、実際やってみると意外に難しいものだとか。シングルタスク志向に切り替えるためのコツとして3つのものが紹介されています。
マルチタスク志向のタスクマネジメントツールやGTDアプリを使わない「Remember the Milk」やMac用タスクマネジメントアプリ『Things』など、従来のマルチタスク志向のタスクマネジメントツールやGTDアプリは複数のタスクが一覧化されているので、ひとつのタスクに集中しづらい。シングルタスク志向のタスクマネジメントツール「NowDoThis」に切り替えてみよう。このツールは複数のタスクが入力できるのだが、表示されるのはひとつのタスクのみ。他のタスクのことを気にせず、今表示されているタスクに集中すればよい仕組みとなっている。
タブの使用はひとつだけにする『Firefox 3.5 RC 1』では「New Tab」機能が追加されたが、他のウェブブラウザでも、複数のタブを開き、複数のツールやページを使うことに慣れたユーザは多いだろう。しかし、シングルタスクを志向するならば、この習慣も絶つことが必要だ。「タブの使用はひとつだけ」と心に決めて実践しよう。もしくは、物理的に複数のタブを開けなくするという強制力を発動するのも有効だ。新しいタブを開けなくするMozillaの拡張機能「Tab Killer」などを活用しよう。
ディスプレイの使用はひとつだけにする複数のモニターを使って仕事をしている人は、この環境を捨てがたいかもしれない。しかし、使用するディスプレイを1つにしたほうが、仕事に集中しやすい。思い切って2台目のディスプレイの電源は落としてみよう。
たしかに過度なマルチタスク志向はかえって気が散漫になり仕事の生産性を下げる原因にもなりますが、かといって、上の3つのコツをフル活用し、ひとつの仕事に没頭している間に、急を要する大事な仕事が発生している恐れもありますね。仕事をより効率よく行うには、集中力と柔軟性のバランスを巧く保つこと、つまり、シングルタスク志向とマルチタスク志向のメリハリをつける、ということがひとつのポイントかもしれません。マルチタスク一辺倒ではなく、ときにはシングルタスク志向もうまく取り入れて、真の生産性向上を目指しましょうね。
Singletasking: The Next Trend in Web Working? [WebWorkerDaily]
Azadeh Ensha(原文/松岡由希子)