英語には、ほとんどと言っていいほど敬語の表現がありません。Can you____? がCould you___, please?になったり、最後にsir/ma'amがついたりする程度です。大学でも一部のをのぞいて、教授と学生とはファーストネームで呼び合う関係だし、70歳のおじいちゃんに対しても、お友達になれば"Hey, Moe!"と呼んでもいいのです。

では、どういうときに丁寧な表現を使うのか、とMoeに聞いてみたところ、「(イギリスの)クイーンと会う時ぐらい。でも会うことはないから全然使わない」と返ってきました。レバノンからの移民で永住権を取って久しいAndrewも、「基本的に英語はrudeだ」と言います。私もアメリカに来てすぐの頃は、"Pretty cool, huh?"と陽気に言われても「ハァ?」って何よ、と憤慨していました。今はもうこれが付加疑問を簡潔に作っているだけだとわかるので嫌な気分はしないのですが、まだなかなかうまくは使えません。

話が少し逸れましたが、私はここで英語に品がないと非難しているわけではないんですよ。英語は気楽な言語だということをここでは言いたいのです。アメリカでは、テレビの中の人たちも、町の人たちも、教授も、社長も、みんな同じような言葉遣いなのです。だから、テレビから拝借した粋な表現を普通に外で使えるし、さっきテレビでしゃべっていた人と、今目の前にいる人の英語に差がないので、すんなり会話に入っていけるのです。

もっと気楽に英語をしゃべれるコツの続きは以下にて。また、普通の人の語彙も実はあまり多くありません。元言語学の教授のGus氏は嘆いていますが、最近の英語ではhaveがあまり使われなくなり、getで代用されることが多くなっているそうです。getは本当に便利な動詞です。こういう時の動詞はなんだろうと迷う時、だいたいgetで切り抜けられるんですよ。それがたとえスマートな表現でなくても、相手にちゃんと通じるし、文法的にも(最近は)正しいとされています。さらに、重要な単語を度忘れして出てこなくなったときも、関係詞を使えばOK。大事なことを先に言い、後から説明をいくらでも付け加えられる英語の構造のなせる技です。

こんなラフな英語と比べると、日本語はややこしいですよね。テレビの登場人物は、不自然すぎるほどのハイテンションだったり、同じようなことをだらだらしゃべったり、逆に略語などで簡潔すぎたりしているので、そこからは学びにくいです。それに、日本語では状況に合った敬語を話すことが要求されます。文法上の例外もたくさんあるので、日本語を学ぶ外国人は、覚えることが多すぎると言っています。私はそれでも、こういうふうに手のかかる日本語に愛着があり、アメリカ暮らしの中でも私の中から失いたくないと常々思っているのですが、これとは別に、難しいことを考えず、思ったままを口にできる英語環境に楽して浸かってしまっているのも確かです。

日本から来たばかりの人が、「I make it a rule to get up at 7 o'clock.」 とバリバリの受験構文でしゃべっているのを聞くと、 「I usually get up at 7.」 でいいのよ、力抜いてね、とリラックスさせてあげたくなります。本当はいつかクイーンと話すときのために(!?)コチコチの英語も話せないといけないのかもしれないけれど、
普段使う英語なんて、もっと気楽に構えていて大丈夫ですよ。まず、肩の力を抜きましょう。 

(山内純子)

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