作用素環論入門

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作用素環論入門
著者 戸松 玲治 著
分野 数学  > 関数解析  > ヒルベルト空間論
数学  > 代数学  > 表現論
発売日 2024/09/12
ISBN 9784320115668
体裁 A5・432頁
定価 6,380円 (本体5,800円 + 税10%)
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C環論とvon Neumann環論の基礎を並行して解説し、一冊で作用素環論の基礎事項を修得できるようにまとめた本格的入門書

作用素環論は1929年にvon Neumannにより創始された。作用素環とは、完備な位相をもつℂ代数のことであり、C環とvon Neumann環の2種類に大別される。
1960年以降、作用素環の研究はとくに大きく進展し、エルゴード理論、結び目理論、量子群、テンソル圏、非可換幾何学、数理物理、自由確率論、ランダム行列、量子情報など多くの分野と密接に関わりながら現在に至っている。
本書は、初学者が作用素環論の重要事項を効率的かつ自己充足的に学べるように、基礎的な事項を収集・整理し、丁寧に組み上げ直したものである。

 

[本書の特長]
  • 作用素環論の基礎を一冊で網羅
  • C環論とvon Neumann環論の基礎を並行して解説
  • C環、von Neumann環の具体例を多数紹介
  • 参考文献を見つけにくいと思われる諸結果(有向点列、3線定理、Ryll-Nardzewskiの不動点定理、等)を付録に掲載

[要旨]
Banach環論でGelfandのスペクトル理論を解説し、本論のC環論へ入る。C環論では、Gelfand–Naimarkの定理、閉イデアル、正値線型汎関数などを導入する。その後、Hilbert空間論の基礎を復習してからvon Neumann環を導入し、C環の表現との関係を学ぶ。次にCP写像の基礎を学ぶ。以後は具体例、von Neumann環の基礎(冨田 –竹崎理論も含む)の解説、そして核型C環の理論でvon Neumann環とC環が互いに切っても切れない関係であることを学んで本書を結ぶ。付録では、よく知られてはいるが、参考文献を探すのに困るかもしれない結果をまとめた。

 

第1章 準備
1.1 用語と記号
1.2 環
 1.2.1 環,準同型
 1.2.2 線型汎関数
 1.2.3 イデアル
 1.2.4 行列環
 1.2.5 テンソル積環
1.3 Banach空間,局所凸位相ベクトル空間
 1.3.1 有界線型作用素
 1.3.2 局所凸位相,弱位相,汎弱位相
 1.3.3 凸集合
 1.3.4 Banach空間の前双対
 1.3.5 各点収束位相

第2章 Banach環のスペクトル理論
2.1 Banach環
2.2 Banach環の閉イデアルと商Banach環
2.3 スペクトル理論
2.4 単位的可換Banach環のGelfandスペクトラム
2.5 元のスペクトラムとGelfandスペクトラムの関係
2.6 Gelfandスペクトラムの位相とGelfand変換

第3章 C
3.1 C環の定義と具体例
3.2 C環の単位化
3.3 可換C環のGelfand変換
3.4 Gelfand–Naimarkの定理の応用
3.5 C環の正元
 3.5.1 正元,正錐
 3.5.2 正錐から定まる順序
 3.5.3 C環の近似単位元
 3.5.4 射影,Murray–von Neumann同値
3.6 閉イデアル,遺伝的C部分環
 3.6.1 閉イデアル,商C
 3.6.2 遺伝的C部分環
3.7 環の正値線型汎関数
3.8 C環の共役空間の正錐

第4章 C環とHilbert空間
4.1 Hilbert空間の基礎事項
 4.1.1 Hilbert空間
 4.1.2 B(ℋ)
 4.1.3 中線定理,凸集合,射影
 4.1.4 完全正規直交系
 4.1.5 等長作用素,ユニタリ作用素
 4.1.6 共役Hilbert空間
 4.1.7 テンソル積 Hilbert空間
 4.1.8 弱作用素位相,強作用素位相
4.2 コンパクト作用素
 4.2.1 Schatten形式
 4.2.2 コンパクト作用素
 4.2.3 標準トレース荷重
 4.2.4 トレースクラス作用素,Hilbert–Schmidt作用素
 4.2.5 B(ℋ)の前双対
4.3 B(ℋ)の局所凸位相とvon Neumann環
 4.3.1 B(ℋ)の局所凸位相
 4.3.2 von Neumann環と二重可換子定理
 4.3.3 Kaplanskyの稠密性定理
4.4 C環の表現
 4.4.1 巡回表現,表現圏
 4.4.2 GNS表現
 4.4.3 普遍表現
 4.4.4 C環の既約表現とKadisonの推移性定理
 4.4.5 既約表現の分類
 4.4.6 純粋状態

第5章 完全正値写像と作用素システム
5.1 完全正値写像
5.2 Stinespringのダイレーション定理
5.3 Kadison不等式と乗法領域
5.4 作用素空間と作用素システム
5.5 単射的作用素システム
 5.5.1 Arvesonの拡張定理
 5.5.2 Choi–Effros積
 5.5.3 単射包の存在

第6章 C環の具体例
6.1 帰納極限C
6.2 AF環
 6.2.1 有限次元C環の包含
 6.2.2 UHF環
 6.2.3 無限テンソル積状態
 6.2.4 AF環のBratteli図形
6.3 C環への群作用
6.4 無理数回転環
6.5 C(𝕋)とToeplitz環
6.6 Cuntz環
6.7 群C
 6.7.1 充足群C
 6.7.2 自由群の被約群C

第7章 von Neumann環の基礎理論
7.1 von Neumann環
 7.1.1 von Neumann環の前双対
 7.1.2 縮小環の可換子環
 7.1.3 von Neumann環のイデアル
7.2 von Neumann環の射影
 7.2.1 左右の台射影,Murray–von Neumann同値
 7.2.2 中心台射影の性質
 7.2.3 射影の比較定理
7.3 正規性
 7.3.1 正規線型汎関数
 7.3.2 正規線型写像,正規表現
 7.3.3 正規線型汎関数の台射影
 7.3.4 正規線型汎関数の極分解
 7.3.5 可分性,σ有限性
7.4 普遍包絡von Neumann環
7.5 条件付き期待値
7.6 W
 7.6.1 境の定理
 7.6.2 W環の前双対の一意性
7.7 von Neumann環のテンソル積
 7.7.1 von Neumann環のテンソル積の定義
 7.7.2 I型部分因子環

第8章 冨田–竹崎理論
8.1 冨田の定理
 8.1.1 有界ベクトルと可換子環
 8.1.2 双加群,標準双加群
 8.1.3 von Neumann環への群作用
 8.1.4 テンソル積の可換子定理
8.2 モジュラー自己同型群とKMS条件
8.3 ConnesのRadon–Nikodymコサイクル
8.4 正規な条件付き期待値の存在性と双加群
 8.4.1 竹崎の条件付き期待値定理
 8.4.2 Jones射影と基本拡大

第9章 von Neumann環の分類
9.1 可換von Neumann環,I型von Neumann環
9.2 von Neumann環の型
 9.2.1 射影の有限性と無限性
 9.2.2 von Neumann環の型による分類
 9.2.3 縮小環と可換子環の型
9.3 有限von Neumann環と正規トレース状態
 9.3.1 正規トレース状態
 9.3.2 中心値トレース
 9.3.3 半有限von Neumann環のモジュラー自己同型群
 9.3.4 正規条件付き期待値とvon Neumann環の型
9.4 AFD因子環
 9.4.1 AFD von Neumann環
 9.4.2 AFD Ⅱ1型因子環の一意性
 9.4.3 Powers因子環,荒木–Woods因子環

第10章 テンソル積C環と核型性
10.1 テンソル積*環のCノルム
 10.1.1 最大ノルムと最小ノルム
 10.1.2 CP写像と最大・最小ノルム
 10.1.3 最大ノルムと短完全列
10.2 核型C
 10.2.1 核型性
 10.2.2 CP分解可能性
 10.2.3 核型性と完全正値近似性
 10.2.4 核型C環の性質と例
 10.2.5 離散従順群
 10.2.6 Fellの吸収原理
 10.2.7 離散従順群のC群環

付録
A.1 ネット(有向点列)
A.2 共終超フィルターと普遍ネット
A.3 Ellis–沼倉の定理
A.4 有限次元ベクトル空間の局所凸位相
A.5 複素関数論の諸結果
 A.5.1 水平帯についてのCauchyの積分公式
 A.5.2 Phragmén–Lindelöfの原理
A.6 Banach空間値関数の複素微分
A.7 非特異な正自己共役作用素の定義域
A.8 Ryll-Nardzewskiの不動点定理

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