楕円曲線の数論
―基礎概念からアルゴリズムまで― 〔原著第2版〕
著者 | Joseph H. Silverman 著・ 鈴木 治郎 訳 |
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分野 |
数学
> 整数論 > 数論 |
発売日 | 2023/12/25 |
ISBN | 9784320115521 |
体裁 | A5・614頁 |
定価 | 7,260円 (本体6,600円 + 税10%) |
シルヴァーマンの楕円曲線の名著、待望の邦訳!
ジョセフ・H・シルヴァーマン(Joseph H. Silverman)は、楕円曲線に関連して、初級レベル相当のRational Points on Elliptic Curves(ジョン・テイト(John Tate)との共著)、中級レベル相当のThe Arithmetic of Elliptic Curves、上級レベル相当のAdvanced Topics in the Arithmetic of Elliptic Curves という3冊の書籍を執筆した。このうち、1冊目と3冊目は『楕円曲線論入門』および『楕円曲線論概説』としてすでに和訳されており、現在は丸善出版より刊行されている。ところが2冊目のThe Arithmetic of Elliptic Curves は、1986年の初版以降、2008年に第2版が出版されてもなお和訳されずにいた。本書はその第2版の待望の邦訳であり、楕円曲線の数論的性質に関する標準的なテキストである。
まず、代数幾何学の基本事項を与えた後で、代数閉体上の楕円曲線の幾何学を調べる。次に、楕円曲線の性質を有限体上、局所体上、大域体(数体)上の順に調べていく。この過程で、楕円曲線の数論における基本的な定理「モーデル‐ヴェイユの定理」や「ジーゲルの定理」の証明がなされる。最後は、楕円曲線の理論の計算的側面として、暗号技術の領域で重要視されている問題を探求する。また、特筆すべき点として、ワイルズによる「フェルマーの最終定理」の証明、「佐藤‐テイト予想」の解決、「スピロ予想」と「ABC 予想」など、近年の研究内容も随所で取り上げられている。
初学者はもちろん、楕円曲線の数論に触れたことがある人の学びなおしにも適している。さらに、基本的な事実や近年の研究内容を確認する文献としても活用できるなど、読者の幅広い目的に対応可能な、大変重宝する書籍となっている。
[原著:The Arithmetic of Elliptic Curves, 2nd edition, Springer, 2009]
第1章 代数多様体
1.1 アフィン多様体
1.2 射影多様体
1.3 多様体間の写像
第2章 代数曲線
2.1 曲線
2.2 曲線間の写像
2.3 因子
2.4 微分
2.5 リーマン‐ロッホの定理
第3章 楕円曲線の幾何
3.1 ワイエルシュトラス形式
3.2 群の演算法則
3.3 楕円曲線
3.4 同種写像
3.5 不変微分
3.6 双対同種写像
3.7 テイト加群
3.8 ヴェイユペアリング
3.9 自己準同型環
3.10 自己同型群
第4章 楕円曲線上の形式群
4.1 原点 O の周りの回転
4.2 形式群
4.3 形式群に対応する群
4.4 不変微分
4.5 形式対数
4.6 離散付値環上の形式群
4.7 標数 p の形式群
第5章 有限体上の楕円曲線
5.1 有理点の個数
5.2 ヴェイユ予想
5.3 自己準同型環
5.4 ハッセ不変量の計算
第6章 複素数体C上の楕円曲線
6.1 楕円積分
6.2 楕円関数
6.3 楕円関数の構成
6.4 写像の解析性と代数性
6.5 一意化
6.6 レフシェッツの原理
第7章 局所体上の楕円曲線
7.1 極小ワイエルシュトラス形式
7.2 πを法とした還元
7.3 有限位数の点
7.4 惰性群の作用
7.5 良い還元と悪い還元
7.6 群E/E0
7.7 ネロン‐オッグ‐シャファレビッチの判定条件
第8章 大域体上の楕円曲線
8.1 弱いモーデル‐ヴェイユの定理
8.2 コホモロジーによるクンマーペアリング
8.3 降下法の手続き
8.4 Q上のモーデル‐ヴェイユの定理
8.5 射影空間上の高さ
8.6 楕円曲線の高さ
8.7 ねじれ点
8.8 最小判別式
8.9 標準的高さ
8.10 楕円曲線のランク
8.11 スピロ予想とABC 予想
第9章 楕円曲線上の整数点
9.1 ディオファントス近似
9.2 距離関数
9.3 ジーゲルの定理
9.4 S 単数方程式
9.5 実効的な方法
9.6 シャファレビッチの定理
9.7 曲線 Y 2 = X 3 + D
9.8 ロスの定理―概要
第10章 モーデル‐ヴェイユ群の計算
10.1 例
10.2 ツイスト―一般論
10.3 等質空間
10.4 ゼルマー群とシャファレビッチ‐テイト群
10.5 ツイスト――楕円曲線
10.6 曲線 Y 2 = X 3 + DX
第11章 楕円曲線のアルゴリズム的性質
11.1 2倍と加法アルゴリズム
11.2 レンストラの楕円曲線因数分解法
11.3 E(Fq)にある点の個数を数える
11.4 楕円曲線暗号
11.5 楕円曲線離散対数問題を解く:一般の場合
11.6 特別な場合に楕円曲線離散対数問題を解く
11.7 ペアリングにもとづく暗号
11.8 ヴェイユペアリングの計算
11.9 テイト‐リヒテンバウムペアリング
付録A 標数2と3の楕円曲線
付録B 群のコホモロジー(H 0とH 1)
B.1 有限群のコホモロジー
B.2 ガロアコホモロジー
B.3 非可換コホモロジー
付録C その他の話題:概要
C.11 虚数乗法
C.12 モジュラー関数
C.13 モジュラー曲線
C.14 テイト曲線
C.15 ネロンモデルとテイトアルゴリズム
C.16 L 級数
C.17 双対性定理
C.18 局所高さ関数
C.19 ガロア表現の像
C.20 関数体と特殊化定理
C.21 各種のapと佐藤‐テイト予想
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