視覚のしくみ
本書では、視覚について、化学的な観点から興味をひく現象や解析方法を中心に解説する。視覚研究の全貌に触れてもらうことを狙いとする。
我々は身の回りの環境情報を五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)により受容し、日常生活で利用している。視覚分野は、発色団の量子化学から神経ネットワークを含む広範な分野であり、さまざまな自然科学の分野と同様、物理学や化学の基本的な原理を利用した解析が進められている。一方、物理学や化学とは異なり、視覚を含む生物学の研究には、生物が歴史性を持つ(進化の産物である)ことも忘れてはならない。そこで本書ではまず、「視覚の成り立ち」を進化的な観点から概説する。続いて、分子レベルでの記述が可能な視覚現象として、視細胞の光応答メカニズムや、視物質の構造と光反応メカニズム、色覚のメカニズムなどを詳述する。さらには、網膜や脳での視覚情報処理についても解説する。
- <書評掲載案内>
- 2024年1月11日 公益社団法人日本動物学会『視覚のしくみ 書評』(評者:左倉和喜)
第2章 眼と網膜
第3章 視細胞の光応答メカニズム
第4章 視物質
第5章 色覚のメカニズム
第6章 網膜での視覚情報処理
第7章 網膜から脳へ:視覚の情報処理
コラム目次
1.Gタンパク質共役型受容体
2.トリの中心窩
3.遺伝子改変動物を用いた錐体の光応答制御・調節の研究
4.TRP/TRPLチャネル開口のメカニズム
5.ロドプシン発色団のシス-トランス光異性化メカニズム
6.方位選択性を示す神経細胞の受容野
7.ipRGC内の光シグナル伝達経路
8.概日時計の光位相制御とipRGCの発見
9.ヒトの中心窩の神経節細胞