CFD最前線
「格子ボルツマン法」は比較的最近注目を浴びるようになった手法で、オートセルマトン系統の数値解析手法です.まだまだ問題点を残してはいますが、特に混相流の数値解析などに対して今後大きな発展が期待される手法です.この項の執筆は、国内での格子ボルツマン法研究で先導的な役割を果たしておられる蔦原道久・神戸大学教授と、この分野で活発なご研究をされている宇宙航空研究開発機構の渡利實先生にお願いしました.本解説は、蔦原先生らによる『格子気体法・格子ボルツマン法』(コロナ社)のその後を補完するもので、格子ボルツマン法の概要と現状を手っ取り早く知りたいという方に好適の内容となっています.
「GSMAC有限要素法」は1980年代に提案された手法ですが、離散ナブラ演算子の導入など、最近になって新しい展開や発展がありました.一般的な有限要素法に対して、比較的計算負荷が少ない計算手法です.GSMAC有限要素法についての解説は、開発者でもある棚橋隆彦・慶應義塾大学名誉教授に執筆を依頼しました.本書の解説によって、GSMAC有限要素法を実際に使用する際に必要な基礎的な考え方や定式化を学ぶことができます.
「CIP法(Cubic-Interpolated Pseudo-Particle Scheme)」は、流体のみならず、固体、液体、気体を同時に解析するシミュレーション技法で、機械工学のさまざまな分野、電気工学や宇宙物理学など幅広い分野で使用されている解析法です.CIP法については矢部孝・東京工業大学教授に執筆をお願いしました.基本的な概念から出発して具体的な計算例の紹介まで述べられており、CIP法の概要をつかむのに最適な解説となっています.
本書が、学生や技術者の方々にとって非常に参考になるものと確信しております.本書で取り上げた手法以外にも最前線のテーマとしてふさわしい手法が数多くありますが、今後CFD最前線の続巻の企画があれば取り上げたいと考えております.
(井門康司「まえがき」より)
1 はじめに
2 格子ボルツマン法と格子気体法
2.1 格子気体法
2.2 格子気体法の特徴
3 格子ボルツマン法
3.1 まえがき
3.2 格子BGK方程式
3.3 格子ボルツマン法で用いられる格子
3.4 マクロな変数と衝突の際の保存量
3.5 局所平衡分布関数
3.6 内部自由度をもつモデル
3.7 外力(体積力の導入)
3.8 初期条件と境界条件の設定
3.9 多緩和時間モデル(multiple relaxation time method)
4 混相流のモデル
4.1 2粒子モデル
4.2 自由エネルギーモデル
4.3 密度比の大きな2相流のモデル
5 差分格子ボルツマン法
5.1 新しい差分格子ボルツマンモデル
5.2 差分格子ボルツマン法における数値粘性
5.3 差分格子ボルツマン法の特徴
5.4 計算例
5.5 ALE法の応用
6 熱流体モデル
6.1 熱流体モデルとは
6.2 熱流体モデルの導出
6.3 2次元モデル
6.4 3次元モデル
6.5 数値シミュレーション例
付録1 テンソルとその等方性
付録2 チャップマン-エンスコグ展開とナヴィエ-ストークス方程式
第2編 GSMAC有限要素法(棚橋隆彦)
1 はじめに
2 運動方程式
2.1 ラグランジュ微分の定義
2.2 物質要素のラグランジュ微分
2.3 積分形と微分形の運動方程式
2.4 オイラーの方程式とナヴィエ-ストークスの方程式
2.5 ナヴィエ-ストークスの方程式から誘導される方程式
2.6 いろいろな強度の時間発展方程式
2.7 その他の時間発展方程式
3 GSMAC法
3.1 はじめに
3.2 基礎方程式
3.3 GSMAC有限要素法のアルゴリズム
3.4 ポアソン方程式の解法
3.5 離散ナブラ演算子
3.6 有限要素法による定式化
4 hybrid GSMAC法
4.1 hybrid GSMAC法
4.2 上流化形状関数の性質
4.3 hybrid GSMAC法の検証
5 まとめ
第3編 CIP法による流体解析(矢部 孝)
1 CIP法と移流問題
1.1 移流方程式の数値解法
1.2 CIP補間とスプライン補間
1.3 界面捕獲
1.4 セミラグランジュ手法
1.5 多次元への拡張
2 固体・液体・気体を同時に解くCIP法
2.1 圧力ベース解法
2.2 固体と液体の統一解法
3 CIP法の将来
3.1 完全保存保証型CIP
3.2 ソロバン格子CIP法
3.3 ソロバン格子の多次元化
3.4 カルマン渦列
3.5 1次補間とCIP補間
3.6 3次元計算
4 おわりに