電気数学
―ベクトルと複素数―
電磁気学では、ベクトルとベクトルを用いた微分積分(ベクトル解析)は電磁気現象を理解するうえで欠かせない概念である。また、電気回路では、その電磁気現象に基づいた微分方程式や信号波形の取り扱いが中心となり、複素数から導入されるオイラーの公式や複素指数関数の取り扱いが必須となる。さらに複素数と複素指数関数は信号波形の解析に強力な手法であるFourier変換、Laplace変換の理解へつながる重要な概念である。ところが、一般に「数学」の授業でベクトル・複素数を履修済みとして、電気・電子系の電磁気学、電気回路のテキストがまとめられており、その「数学」では、これらを抽象的に「公式ありき」として取り扱うため、実際の電磁気現象、電気回路とどう関わるのか、その理解には程遠いものがある。そこで本書は、電磁気現象や電気回路を例題とし、ベクトル・複素数を専門課程で役立つ数学として、実用の立場から解説することを目的とした。
第1章 ベクトルの基本事項
第2章 ベクトルの内積とその適用
第3章 ベクトルの面積分とその適用
第4章 ベクトルの線積分とその適用
第5章 体積積分
第6章 ベクトルの外積とその関連
第7章 積分形表示の電磁気現象に対する空間的な微分(微分の拡張)
第8章 直交座標系(orthogonal coordinate systems)
第9章 各座標の線素ベクトル,面素ベクトル,体積素
第10章 直角座標におけるgrad, div, rotの誘導
第11章 積分に関するガウスの定理とストークスの定理
第II部 複素数編
第1章 複素数の導入
第2章 ネイピア数と複素指数関数および複素平面座標
第3章 複素数のベクトル的取り扱い
第4章 直線上を移動する複素数の逆数の軌跡
第5章 三角関数公式のオイラーの公式による誘導
第6章 正弦波・余弦波関数の特徴
第7章 cosωt, sinωt ⇔ ejωtの対応関係
第8章 expjωtの実変数tに関する微積分とsinωt, cosωt, の微積分との関連
第9章 波形解析への複素数の導入
第10章 回路方程式の取り扱いへの複素数の導入
第11章 正弦(余弦)波振動する電磁界へのPhasor表現の適用
第12章 実空間ベクトルと複素ベクトルの類似点と相違点
第13章 複素指数関数ezを用いた複素関数の定義
付録
演習問題略解
参考文献
索引