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 本書は、分析化学を志す学生や、分析化学が専門でない研究者を対象として、文化財の分析を行う際の基本的な考え方、分析機器の特徴、そして実際の分析例を紹介しながら、分析結果の意味するところをわかりやすく解説したものである。
 これまで考古学、歴史学、美術史学など人文科学的な学問が先導してきた文化財という対象に対して、近年さまざまな分析機器を用いた調査・研究が行われるようになってきた。これらの調査は、考古学や歴史学の定説を塗り替えるほどの結果をもたらすこともあり、得られた結果を解釈するには、分析化学の手法や機器の特徴を十分に理解していることが重要である。
 本書では、両著者が所属する東京文化財研究所・奈良文化財研究所というわが国における文化財研究の中心的機関から近年発表された分析調査のうち、本書の読者にふさわしいと思うものを選択して紹介している。
Chapter 1 文化財の保護と保存科学
1.1 文化財とは
1.2 文化財保護の歴史
1.3 「法隆寺金堂壁画」の保存と分析化学
1.4 「永仁の壺」事件と分析化学
1.5 文化財研究所の設立と保存科学

Chapter 2 文化財と分析化学
2.1 非破壊・非接触分析の必要性
2.2 文化財分析の考え方
2.3 文化財分析の目的
2.4 文化財分析のタイミング
2.5 分析値の代表性

Chapter 3 文化財の分析方法
3.1 材料調査手法
3.2 考古学的・歴史学的調査手法
3.3 展示・収蔵環境調査手法

Chapter 4 絵画の分析
4.1 国宝「源氏物語絵巻」
4.2 伊藤若冲「動植綵絵」

Chapter 5 古墳壁画の分析
5.1 国宝「高松塚古墳壁画」の彩色材料
5.2 国宝「高松塚古墳壁画」の下地漆喰の状態

Chapter 6 絵図・地図の分析
6.1 国絵図
6.2 伊能図

Chapter 7 金属資料の分析
7.1 国宝「稲荷山鉄剣」
7.2 国宝「鵲尾形柄香炉」
7.3 国宝 平等院「鳳凰像」
7.4 江戸時代の銀貨

Chapter 8 古代ガラスの分析
8.1 古代ガラスの分類方法
8.2 飛鳥寺 塔心礎出土 ガラス玉
8.3 追土横穴墓群出土 斑点紋トンボ玉

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