散在型有限単純群
26個の散在型有限単純群のうち、マシュー型とコンウェイ型について基礎から解説した希少な成書
有限群は単純群の積み重ねであり、単純群の構造が有限群を強く統制する。有限単純群を分類しようという壮大な試みが完成したのは2004年ごろであり、分類定理が得られた。
本書では、26個の散在型有限単純群のうちマシュー型とコンウェイ型を中心に、その周辺の事項について基礎から解説する。19世紀に5重可移群として得られたマシュー群は、20世紀になって組合せ構造(デザイン)の自己同型群として研究が進み、情報理論・符号理論における特別な実例であるゴーレイ符号との関連も明らかになった。さらに、ゴーレイ符号から構成されるリーチ格子は、その自己同型群(コンウェイ群)が散在型単純群の実例の宝庫となっている。
ゴーレイ符号やリーチ格子に関する知識は、モンスターと呼ばれる巨大な散在型単純群を構成する際にも欠かせない。ゴーレイ符号とリーチ格子は数学的に自然で美しい存在であり、将来的にも重要な研究対象であり続けるだろう。
本書で取り上げる内容の多くは1970年代にコンウェイを中心に発見・整備されたが、入門的成書は僅かである。本書は、散在型単純群について自己完結的に書かれた、貴重な本格的入門書である。
1.1 本書の内容
1.2 散在型単純群概観
1.3 さらなる理解に向けて
第2章 準備
2.1 群論に関する準備
2.2 符号理論に関する準備
2.3 シュタイナー系に関する準備
第3章 S(5,8,24)系と二元ゴーレイ符号
3.1 S(5,8,24)系の基本性質
3.2 S(5,8,24)系と二元ゴーレイ符号の関係
3.3 ヘキサ符号
3.4 標準二元ゴーレイ符号
3.5 S(5,8,24)系の一意性
第4章 24次マシュー群とその局所部分群
4.1 24次マシュー群の基本性質
4.2 セクステットの固定部分群
4.3 オクタッドの固定部分群
4.4 Alt8とGL4(2)の間の具体的な同型写像
4.5 トリオの固定部分群
4.6 位数2の元と位数3の元
第5章 三元ゴーレイ符号,S(5,6,12)系とM12
5.1 標準三元ゴーレイ符号と標準S(5,6,12)系
5.2 三元ゴーレイ符号の同値性
5.3 S(5,6,12)系の基本性質
5.4 S(5,6,12)系の一意性
5.5 三元ゴーレイ符号とS(5,6,12)系の自己同型群
第6章 平方剰余符号と24次マシュー群の非局所部分群
6.1 平方剰余符号
6.2 三元体上の平方剰余符号の自己同型群とM12
6.3 24次マシュー群の非局所部分群
第7章 実リーチ格子の構成と特徴づけ,その自己同型群
7.1 格子に関する準備
7.2 実リーチ格子の構成
7.3 実リーチ格子の特徴づけ
7.4 実リーチ格子の自己同型群の基本的性質
7.5 実リーチ格子の点と三角形への作用
7.6 その他の三角形の固定部分群と局所部分群
第8章 複素・四元数リーチ格子とその自己同型群
8.1 概観―実リーチ格子における係数環の拡張
8.2 複素リーチ格子と散在型鈴木単純群
8.3 イコサ環上のリーチ格子とホール-ジャンコー群
付録A 基本性質と極大部分群
付録B 各散在型単純群に対する補足的注意
B.1 M
B.2 BM
B.3 Th
B.4 HN
B.5 He
B.6 Fi'24
B.7 Fi23
B.8 Fi22
B.9 Co1
B.10 Co2
B.11 Co3
B.12 McL
B.13 HS
B.14 Suz
B.15 J2
B.16 M24
B.17 M23
B.18 M22
B.19 M12
B.20 M11
B.21 6個のパリア単純群